
掲載日:2017年09月20日 試乗インプレ・レビュー
試乗ライダー・レポート/和歌山利宏 写真/真弓悟史 記事提供/ロードライダー編集部
新しいGSX-R1000Rには、ちょうど半年前、真夏のオーストラリアで試乗。2017年5月の記事でお伝えしているが、今回、国内仕様車としてもリリースされることになり、これまた真夏の日本で試乗できることになった。まず印象的だったのは、半年前に乗った欧州仕様車と全く変わらないということ。もっとも、国内仕様車は欧州仕様車よりも5ps低い197psを公称するのだが、それは測定方法の違いによるもので、仕様的には全く変わらないのだから、当然と言えば当然だ。
でも、超高速コースのフィリップアイランドに対して、ここ袖ケ浦フォレストレースウェイはテクニカルな低中速コースである。コーナーの曲率やカント、コーナリングスピードやギア段数によって、ハンドリングやコントロール性に関して印象が一変し、リズムが噛み合わないなんてことにもなりかねないのに、それが一切ないのだ。
つまり、それだけR1000Rは特性がピンポイント的でなく、寛容でワイドレンジであるということだ。しかも、サスペンションセッティングもノーマルのままである。また、電子制御も諸条件に最適化されているわけだ。言うなれば、多くの人がワインディングも含め、あらゆる状況で楽しみやすい特性なのである。
ただ難を言えばこの国内仕様車は、180km/hで速度リミッターが効くことが残念。袖ケ浦なら、リミッターの作動をはっきりと実感するのは、第1コーナー手前のほんの2~3秒なので、大した問題ではないのだが。
そして、このR1000RもGSX-Rそのもので、「走り、曲がり、止まる」の基本性能を正攻法で向上させたマシンということも印象的だ。だから、従来からのGSX-Rの感覚でマシンを信じ、攻め込む気にさせてくれる。それでいて、さらに印象的なことに、そんな伝統的な持ち味の中に、斬新さを持ち合わせている。
ここ半年の間には、他の新型リッタースポーツに乗る機会もあっただけに、改めてR1000Rの独自性に気付かされる。それは、マシン全体、特に車体から受けるフィーリングが、「剛」ではなく「柔」であるということである。従来型GSX-Rだと、紛れもなく剛だったのだ。おかげで、スペック上は先鋭化しても、その印象はないし、限界に破綻を来たしそうな神経質さもなく、安心感があって友好的でもある。ラインの自由度も高く、刃の上をトレースしていくようなシビアさも皆無だ。こうした特性は、ワインディングへも溶け込みやすいに違いない。
フレームは見た目に華奢でも、剛性バランスは徹底追及されているはずで、しなやかさのメリットはあっても、そのネガはない。10年前なら、この柔は正攻法とはされなかったかもしれない。でも、モトGPマシンがそうであるように、そうした方向に技術は進化している。その意味で、新型は伝統形であり正常進化形でもある。
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