

掲載日:2017年03月03日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
ジクサーのネーミングの由来がユニークだ。スズキのスーパースポーツ「GSX-R」シリーズが欧米のファン層から“ジクサー”のニックネームで呼ばれることからその名を着想したという。GSX-Rの弟分といったニュアンスだろうか。スズキの大型バイクのイメージが投影された、エッジの効いたデザインやスパルタンなシルエットからも開発者の想いを窺い知ることができる。
見た目は125ccクラスと250ccクラスのまさに中間サイズ。車体は軽くスリムで取り回しも楽々。マンションなどの駐輪場への出し入れも鼻歌交じりにできてしまう。見た目によらずハンドルも高めでライポジも楽だし足着きもすこぶる良い、等々とっつき易さがまずは好印象だ。
第一印象はとにかく軽い。ぱっと跨ってエンジンをかけて走り出した瞬間から、まるで羽のような、まったく質量を感じさせない軽さだ。135kgの車重もさることながら、ホイールベースも1,330mmとビッグネイキッドと比べると20cmも短い上に、リラックスできるアップハンということも理由だろう。コーナリングは素直でとても曲がりやすく、ハンドルは切れるし、低速で粘るエンジンはUターンもしやすく、狭い路地でもクルクルいける。小回りしやすさは最強レベルだ。雰囲気はスポーツモデルだが、意外にも都市コミューターとしての資質も高いと感じた。
エンジンも排気量以上に力強い。ロングストロークならではの豊かな低中速トルクが美点で、鼓動感も楽しめるが、実は美味しいのは7000~8,000rpm。その気になれば1万まで回る高回転域での伸びやかさが持ち味だ。14PSとスペックだけ見れば控えめにも思えるが、都会では十分。むしろ、スロットルを大きく開けてエンジンを使い切って走る楽しさが優る。それでいて実際的に速い。その気になれば、スタートダッシュで後続のクルマを引き離せる加速力も持っているし、軽量・コンパクトであるが故の俊敏さは大排気量車にはないメリットと言える。
サスペンションは基本的にソフトで乗り心地重視だが、一方でしっかり感もあるスポーティな設定。高速道路では轍を跨いでのレーンチェンジでも振られることはなく、車体に不安な挙動はない。開発者の話では、インドの荒地でも走破できる頑丈なシャーシが与えられているらしい。前後ディスクブレーキも必要十分な性能で、レバーを握ればしっかり利くし、タッチも分かりやすい。特に日本向けにはワンランク上の足まわりが装備されていることもあり、心情的にも安心できる。一点、ABS未装着ということで、リアブレーキを強くかけるとややロックしやすい点が少々気になったぐらいか。
ジクサーは150ccということで、国内では一般的な250ccに比べれてもさらにスリムでコンパクトというのが美点。一方でパワーは控えめだが、街乗りレベルでは必要十分だろう。デザイン的にも質感が高く、足つきも良く小回りが利いて乗りやすく、それこそ毎日でも億劫がらずに乗り回せる気軽さがある。
150ccと聞くと、これまでは原付に毛が生えたぐらいの認識しかなかったが、今回ジクサーに乗ってみて自分の認識が間違っていたことに気づかされた。最近とみに高性能化する250ccにちょっと持て余し気味な感じがしないでもない今日この頃、もしかしたら150ccが本当の意味でのジャストサイズなのかと思えてきた。普段の足として使い倒すには便利だし、気が向けば高速に乗ってどこへでも行ける自由度もある。小粒だが、なかなかどうして侮れない楽しさを持ったスポーツファンバイクである。
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