

掲載日:2016年09月30日 試乗インプレ・レビュー
レポート/和歌山利宏 写真/吉見雅幸 記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです
新型SV650が昨年のEICMAで発表されたときの英語版資料では、コンセプトはバック・トゥ・イッツ・オリジン。それを僕が“原点回帰”と訳し、本誌2月号のレポートでお伝えしたが、今回の発表会もスズキがその言葉でSVを紹介。ともかく、実際に乗ったSVは、まさにその通りなのだ。
1999年登場の初代SV650から数えて、この新型は4代目。初代から、その魅力は650ccとは思えないスリムさと扱いやすさにあった。使えて、遊べるバイクだったのだ。そのことは新型にも引き継がれ、さらに高水準化されている。
新型も足着き性は悪くない。とびきり良いわけでないにしろ、サイドカバー部がスリムになり、また先代から9kgも軽量化されており、ますます足着きのストレスがない。これなら少々、何があっても、どうにでもなるという感じだ。
おまけに、低速での取り回しもやりやすく、ゆっくりと発進していくときは、新技術のローRPMアシストによって、回転の落ち込みが緩和されるので、エンストの不安から開放してくれる。
このアシストは、Uターンなどでも真価を発揮してくれる。良くできたVツインでも、不等間隔爆発の長く空いたところで、エンストするのでは…という不安が過ぎることがあるが、自動的にわずかにスロットルを開いたような状態になり、ストレスがない。Uターンを終え、クラッチを握ると、わずかに回転が下がり元に戻るのだが、気にしなければ気付かないほどの自然さだ。
新型は先代グラディウスから4psも高出力化されながら、Vツインらしい鼓動をともなったトルクフルさも損なわれていない。味わいある日常性とスポーティさが両立されているのだ。スロットル開き始めの着きも素晴らしく、適度にガッツを感じさせる一方で、この雨の中でも一切のシビアさがない。
Vツインスポーツの楽しさを提唱し、1999年に誕生したSV650は、4代目へと進化。車体とエンジンの基本こそ先代のグラディウス650から受け継ぐが、140点以上のパーツを新設計、9kgもの計量化も実現している
このように、SVの魅力の原点に立ち返り、それを高水準化させている新型だが、原点回帰たるはそれだけではない。「バイクとは足代わりに使えて、気が向けばどこでも遊べるべきもの」という僕の持論そのもののキャラだし、何よりケレン味がない。ライダーを遊ぼうとそそのかすのではなく、遊ぼうとしたときにバイクが応えてくれるのだ。
エンジン特性は、低回転域から淀みなくリニアに吹き上がり、高回転域も広範囲に高トルクに覆われている。高出力化されたことを下手にアピールすることなく、楽しめて使えるわけである。
ハンドリングは、Vツインならもっとキビキビ感があっていいところだが、あえてそれは抑えられている。だからこそ、誰もが安心して乗れるのだし、日常使用でそのことが煩わしく感じられることもない。160サイズのリアタイヤも、自然な荷重コントロールで乗れることを考えると、正しい選択である。
しかも、しっかり攻めた走りにも、応えてくれる。バイクを信頼できて、しっかりスポーツすることができるわけだ。ブレーキもシャープではないが、実に扱いやすい。
ライディングポジションは、アップライトで、いかにもストリートスポーツといったところで、ストレスのない快適性が保たれている。攻めた走りには、もっとフロントに荷重できる前傾姿勢を取りたいが、それはライダーが積極的に身体を動かせばいい。
お手軽に見えても、実は奥の深さをも備えている新型SVである。
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