ヤマハ XSR900
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ヤマハ XSR900 – 抜群の運動性を秘めた09シリーズの3作目

掲載日:2016年07月08日 試乗インプレ・レビュー    

レポート/中村友彦  写真/柴田直行  記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです

ヤマハの広報資料ではレトロという言葉が多用されているものの、XSR900はストリートスポーツの王道と言うべき資質を備えたモデルであり、乗り味にもレトロ感など皆無だった。

抜群の運動性を秘めた
09シリーズの3作目

XSRに試乗するにあたって、僕が最も感心を抱いていたのは、基本設計の大半を共有するMT-09と同トレーサーに対して、どんな差別化が図られているかということだった。だがしかし、このバイクに対する僕の最初の感想は…、チョー気持ちいい! のひと言。3気筒エンジンの従順かつ刺激的なフィーリングとヒラヒラしたハンドリング、身体に当たる走行風が何とも気持ちよくて、10代半ばで初めてバイクに乗った場面が頭の中に蘇った僕は、XSRの面白さにアレコレ理屈を述べるのは、どうにも野暮な気がしてしまった。

もちろん、理屈を述べないことには試乗記にならないので、以下の文章では僕なりの見解を述べるのだが、XSR900にはバイクの原点と言いたくなる資質が備わっていて、その資質は十中八九以上の確率でライダーを笑顔にしてくれるはず。だから現在の僕は、経験や趣向を問わず、ありとあらゆるライダーにXSR900を体験してほしいと思っているのだ。

ヤマハ XSR900の試乗インプレッション

さて、初っ端から私的感情がほとばしる原稿になってしまったが、誤解を恐れずに言うと、XSR900の乗り味は至ってオーソドックスである。広報資料ではレトロという言葉が多用されているし、外装にはカスタムパーツ的な趣向が盛り込まれているものの、このバイクは現代の技術を用いて、ストリートにおけるスポーツライディングの楽しさを真摯に追求している。逆にXSR900を体験すると、すでに市場で好セールスを記録している2台の兄弟車は、オーソドックスではなかった気がするのだが、だからと言って僕の中にスーパーモタードテイストが注入されたMT-09と、ツーリングでの快適性を重視して開発された同トレーサーを、否定しようという意識は微塵もない。むしろエンジンとシャシーの基本を3車で共有しながら、見事に各車各様の味付けを行ってみせた、ヤマハの懐の広さに感心しているくらいだ。

ヤマハ XSR900の試乗インプレッション

明らかに方向性が異なるトレーサーはひとまず置くとして、MT-09とXSR900を比較すると、2台の乗り味に大きな違いを生み出している主な原因は、ライポジと前後ショックの設定である。MT-09を基準に考えると、XSRのライポジは着座位置が15mm上方&50mm後方になっていて、前後ショックは傾向としてはややハード(スプリングレートは公表されていないものの、伸圧減衰力の設定は、フロントが2~2.5倍、リアは約2倍に高まっている)。

たったそれだけ?と感じる人がいるかもしれないが、ライディングポジションと前後ショックは乗り味に多大な影響を及ぼす要素。ツボにハマると抜群の爽快感が味わえるものの、ツボにハメるのが意外に難しかったMT-09とは異なり、XSRはライダーの技量や走る環境に関わらず、ヤマハが言うクロスプレーンコンセプト、リニアなトラクションが満喫できる特性になっている。

ヤマハ XSR900の試乗インプレッション

事実、過去にMT-09でツーリングに出かけた際は、場面次第では適度なストレスを感じた僕だが、約600Kmを走った今回の試乗では、行程のほぼすべてを楽しんでしまった。中でも印象的だったのは峠道で感じたワイドレンジぶりで、XSR900はコーナリングの段取りをしくじったと感じる場面に滅多に遭遇しない。もちろんその背景には、110psの最高出力はそのままに、マッピングの変更で扱いやすくなったエンジンや、新たに導入されたトラクションコントロールの出来のよさもあるけれど。

という感じで、XSRの魅力を語ろうとすると、どうしてもMT-09に対する異論が出て来る僕だが、アグレッシブでシャープなMT-09の乗り味は、あれはあれで大いにアリだと思っている。とはいえ、不特定多数のライダーを対象として考えた場合、僕が自信を持ってお勧めしたいのはXSRだ。兄弟車との比較は抜きにしても、ここまで気軽に濃厚なトラクションフィーリングが得られるバイク、スロットルの開閉が快感に直結するバイクは、世界広しと言えども、なかなかないのだから。

ヤマハ XSR900の試乗インプレッション

外観はレトロでも、走りは現代的

外観にはレトロテイストを盛り込み、ライディングポジション関連パーツの要であるシートや前後ショックを専用設計したXSRだが、エンジンと車体の基本構成はMT-09とまったく同じ。キャスター/トレール:25度/103mm、ホイールベース:1440mmという数値も両車に共通だ

XSR900の詳細写真は次のページにて

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