ヤマハ SR400
ヤマハ MT-25/MT-03

ヤマハ SR400 – 1970年代の思想を受け継ぐ偉大なるビッグシングル!

掲載日:2016年05月12日 試乗インプレ・レビュー    

レポート/中村 友彦、ロードライダー編集部  写真/徳永 茂  記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです

かつてはホンダやスズキが対抗馬を販売していたものの、ここ十数年はライバルが不在となっているSR400。とはいえ、今回の試乗で近年のベーシックミドルを仮想敵として考えてみたところ、SR400の意外な資質が見えて来たのだった。

1970年代の思想を受け継ぐ
偉大なるビッグシングル!

久々にSR400をじっくり走らせている最中、僕の頭にふと浮かんだのは、近年になって世界的な活況を呈するミドルクラスのことだった。

月刊ロードライダーの読者ならご存知だと思うものの、近年のミドルクラスでは、実用性に優れる上に、操る楽しさをしっかり盛り込んだベーシックモデルが数多く販売されている。その中で僕自身としては、ヤマハMT-07やスズキ・グラディウスが大のお気に入りなのだが、ホンダNC750XやカワサキER-6n/ニンジャ650にも侮りがたい資質を感じるし、最近はドゥカティ・スクランブラーやトライアンフ・ストリートツインといったヨーロッパ製ミドルにも親近感を抱く機会が増えている。

現代のバイクのように乱暴な操作は受け付けてくれないけれど、ライディングの基本を意識して、やるべきことをきちんとやれば、SR400は予想以上の旋回性能を発揮する。タイトな峠道なら、最新SSマシンをカモることも不可能ではない?

だがしかし、そういった車両を試乗した時に、どうして僕はSR400を思い出さなかったのだろう。このバイクには今どきのミドルと互角に戦える魅力、見方によってはそれらを上回る資質が備わっていると言うのに。もちろん、SR400の排気量とパワーはミドルと呼ぶにはちょっと足りないのだけれど、今回の試乗で僕は、SR400の偉大さを忘れていた自分に情けなさを感じ、今後どこかでミドルの話をする機会があったら、無理矢理にでもSR400の名前を出そう、と心に固く誓ったのだった。

車体が軽くてスリムな上に、トラクション性能に優れるSR400は、旅先で遭遇する未舗装路にも気軽に入って行ける。気分的には、現代のアドベンチャーツアラーよりイージーかも…

僕が考えるSR400の主な魅力は、(1)外観の仕上げが上質なこと、(2)昔ながらのディメンションと細身のタイヤならではのハンドリングが味わえること、(3)ビッグシングルの鼓動感が満喫できること、(4)アフターマーケットパーツがものすごく豊富なことの4点である。まずは(1)について説明すると、日本車がイケイケだった1970年代後半に生まれただけあって、SR400の仕上げはとにかく手間がかかっている。めっきの質は高いし、フレームの溶接はキレイだし、各部のステーもなかなか凝った造形。このあたりはコスト削減を念頭に置いて開発されている今どきのミドルとは、一線を画する要素だろう。

続いて述べたい(2)は、読んで字の如くと言えばそれまでだが、古き良き時代の車体構成を維持するSR400の乗り味は、現行車の中ではものすごく貴重だと思う。と言っても、僕は別に現行のバイクのハンドリングを否定するつもりはないのだが、キャスター/トレールが27度40分/111mmで、タイヤサイズが、フロント90/100-18、リア110/90-18のSR400に乗っていると、「足るを知る者は富む」ということわざが頭に浮かび、SR400に乗せてもらうのではなく、SR400から軽快感と安定感を引き出してやろうという気分になってくる。そしてそういった意識で走らせると、SR400は26psという公称出力が信じられないほど、意外な速さを発揮してくれるのだ。

(3)については乗り手の感性や経験によって意見が分かれる部分で、現行SR400のベースとなったXT500や初期のSR400を知る人の場合は、厳しい排気ガス規制を前提にして調教された近年のSR400に、パンチが足りない印象を持つかもしれない。とはいえ、現行モデルという枠の中で他車と比較するなら、やっぱりSR400の鼓動感は依然として濃厚なのだ。吸入→圧縮→爆発→排気という内燃機関の仕事が、ここまでダイレクトに感じられるエンジンは、世界広しと言えどもなかなかないのだから。

そんなわけで現行のSR400に感心した僕だが、このバイクが完全無欠の乗り物かと言うと、もちろんそんなことはない。STDはSTDでよく出来ているものの、僕自身はライディングポジションをもっと大らかにしたいと思ったし、人によって前述したエンジンのパンチを獲得(回復)したい、シングルの美点である軽量化を推し進めたい、前後ショックをいじり運動性を高めたい、などと考えることもあるだろう。

で、ここからは(4)の話になるのだが、SR400は心行くまでカスタムを楽しめる環境が整っているのだ。同時代のハーレーには及ばないにしても、同時代のカワサキZよりはアフターマーケットパーツが潤沢に揃っているし、SR400は現行車だから当然、純正部品の心配をする必要もない。さらに言うなら、SR400はとにかくすべての構造がシンプルだから、メカいじり初心者でも気軽にメンテナンスとカスタムを楽しめる。このあたりは現代の高性能車では望むべくもない資質で、そういった要素を改めて認識した僕は、今どきのミドルではなくSR400を買った方が充実したバイクライフが送れるのかもしれないなあ……という印象を抱いたのだった。

ちなみに、2016年型SR400の価格は55万800円。70~100万円近辺が主力になっている今どきのベーシックミドルを比較対象として考えた場合は、この価格の安さもSR400にとって大きな武器になると思う。

SR400は1978年の初期型以来 基本設計はほとんど不変

細かい仕様変更は何度も行われているけれど(前輪が19→18インチになったのは1985年で、気化器がキャブレター→燃料噴射になったのは2005年)、SR400の基本設計は1978年に登場した初代から不変だ。センタースタンドとグラブレールは標準装備。

ヤマハ SR400の詳細写真は次ページにて

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