

掲載日:2015年09月17日 試乗インプレ・レビュー
レポート/和歌山 利宏 写真/徳永 茂 記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『New Model Impression』を再編集したものです
3年前にMVアグスタは、3気筒のF3 675を引っ提げ、ミドルクラスに参入。それまでの高級路線からすると、価格も求めやすく、ポピュラーな存在になっていくことを予感させた。とは言え、その3気筒シリーズがここまでバリエーションを増やしていくとは、当初は正直なところ思いも寄らなかったものだ。
元祖となるF3 675というと、今シーズンのスーパースポーツ世界選手権では表彰台の常連で、目下、メーカーズポイントもトップに位置するものだ。その一方で、ストロークアップした800をこのシリーズの主流とし、さらに、以前のMVにはなかった長脚系クロスオーバータイプのリヴァーレやストラダーレをリリース。そして、この最新型となるツーリスモ・ヴェローチェは、それらの中でも最もツアラー指向の強いモデルとして発表された。
ここで注目すべきは、リヴァーレ、ストラダーレ、ヴェローチェというクロスオーバータイプが、F3やネイキッドのブルターレをベースに、前後サスや外装品をアレンジしただけのモデルではないということ。しかもこれら3モデルは、外装だけでなく、フレームやスイングアーム、エンジン仕様、前後サスもそれぞれに専用設計されている。コンセプトに合わせて、技術的にも最適化されているわけだ。
つまり、純粋にスポーツ性を追及したストリートモタードのリヴァーレに対し、ストラダーレはツーリングにも使えるストリートスポーツ、そして、このヴェローチェは、本格的ツアラーなのである。
乗り味もシリーズの他モデルとは一線を画している。走り出すなりホッとさせられ、その快適さゆえに、もっと足を遠くに伸ばしたくなる持ち味に溢れている。
まず、エンジンがシリーズの他モデルとは異質である。ストラダーレにしても、吸排気系のアレンジによって友好的で扱いやすいことに感心させられたものだが、このヴェローチェは、吸排気タイミングの変更や低圧縮比などを受け、さらに上手を行く。6速で40km/h近くまで落としても走れる粘りがあって、スロットルを開ければスムーズにトルクが湧き出てくる。最大出力は110psと低めだが、現実的な設定だ。
サスペンションが、シリーズのクロスオーバーモデルの中でも最も長脚であることもあって、乗り心地も最高である。路面を包み込むかのようで、とにかく優しく快適だ。それでいて、普通のロードスポーツのように、ワインディングをスポーティに流すこともできる。
それだけではない。このヴェローチェのフレームは、トラス構造の縦幅が大きくされており、シリーズの他モデルよりも剛性が高められている。だから、車体にどっしりとした安定感があって、落ち着いた気分に浸ることができる。
MVアグスタのモデルはパッションが魅力でもあるが、こいつはフレームからの表情をあえて抑えていて、疲れないフィーリングなのだ。ハンドリングもツアラーらしく、マシンから旋回性をひけらかすようなことはなく、一歩引いてライダーに従ってくれる感じである。
となると、ある意味、持ち味はイタリア車的ではなく、ドイツ車的であると言えないこともない。実は、先にイタリアで乗ったときは、そうした印象もあったのだが、今回、路面状況の良い日本で試乗すると、安定性がベースにあるおかげで、より積極的にスポーツする気にさせられることにも気付くことになった。
やはりイタリアンなのである。しかも、アドベンチャーツアラーとしては軽くコンパクトであるため、持て余すことなく、スポーティに扱いやすい。ハンドル切れ角もMVの他モデルより大きく、Uターンもしやすくなっていることも嬉しい。
となると、残念なのが850mmのシート高だが、国内向けにはローダウン仕様も用意されるから、足着きに不安のある人も要注目である。
アドベンチャーツアラーとしての理想形を追求するため、ヴェローチェでは、エンジンのカムシャフトやピストンといった性能仕様や、フレームのパイプワークやディメンションなどが最適化されていて、他の3気筒シリーズのモデルとは異なる専用設計を受けている。
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