スズキ 隼(ハヤブサ)
スズキ 隼(ハヤブサ)

スズキ 隼(ハヤブサ) – 20世紀最後の最速マシンから15年

掲載日:2014年04月10日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  写真/山家 健一  動画/倉田 昌幸  衣装協力/HYOD

スズキ GSX1300R 隼の試乗インプレッション

スズキ Vストローム1000ABSの画像

ゆとりと優しさを備え
成熟した“究極のスポーツ”に

「世界最速マシン”隼”」と聞くだけで気持ちが高揚する。今となってはライバルも多く存在するが、その流線型の大柄な車体が放つオーラは少しも輝きを失っていない。初期型からすべての型式に乗っているが、隼を相手にするときの緊張感は、やはり一種独特のものだ。それは手に負えないモノへの恐怖心ではなく、リスペクトの思いからだ。

今回試乗したのはGSX1300R隼の日本仕様。エンジン音の図太さはまさしく隼だが、音量はやや大人しい感じもする。隼は2016年以降、世界統一基準となる新騒音規制に合わせてスズキが放った第1弾であり、国内の認証基準に適合しながら、輸出仕様とまったく同じフルパワーが与えられたことは特筆すべき点だ。もちろん、日本仕様の隼には180km/hリミッターが付くが、それ以外は輸出仕様とスペック面ではほとんど同じということだ。

スズキ Vストローム1000ABSの画像

隼に跨り走り出してあらためて感じるのが“ゆとり”だ。スロットルを開けなくてもアイドリングだけでスルスル発進するし、ギアも3速固定でどこでもこなせてしまう。高速道路では優れたエアロフォルムのおかげで、あまり前傾しなくても風圧を感じずに済むし、サスペンションも割とソフトで、動き方もしっとりと落ち着いているため長時間乗っていても快適だ。もうひとつ感じたのが“優しさ”。意外な響きかもしれないが、最新の隼は穏やかこの上ない。SDTVによるスロットル制御は実に巧みで、スロットルをわざとラフに開けてもドンツキが出ない。ジワ~っと湧き上がるようなレスポンスで路面を捉えていく感覚は安心感がある。それがS-DMS最強レベルのAモード、つまりフルパワーモードであっても変わらないのだ。

スズキ Vストローム1000ABSの画像

思えば15年前、初期型の隼がラフにスロットルを開けようものなら炸裂するパワーでホイールスピン大会になってしまっていたのとは大違い。テクノロジーの進歩を感じる。隼オーナーにはベテランだけでなく、比較的バイク歴の浅いビギナーや女性ライダーも多いと聞く。このパワー特性に加え、低いシート高(805mm)や見た目によらず前傾が緩めのライディングポジションなども、扱いやすさに関係していると思う。その意味では隼の“究極のスポーツ”というコンセプトは、まさに真を得たりなのかもしれない。もちろん、その気になれば、Aモードで巨体を楽々パワーリフトさせる力量があるし、高速道路でも2速で軽く制限速度に達してしまう速さなど、ズバ抜けた絶対性能についてはここで多くを語らずとも想像に難くないだろう。それよりもむしろ、世代を重ねるごとに懐が広く、ライダーに優しくなっていく隼に円熟した大人の魅力を感じるのは私だけだろうか。その点で昨年、2013モデルのマイナーチェンジで新たに装備されたブレンボ製モノブロックキャリパーの繊細なタッチ感とABSの安心感も、熟成に一役買っている。

スズキ Vストローム1000ABSの画像

そして今回、日本仕様の隼にはETC車載器が標準装備された。元々ハイウェイが最も似合う隼には必須のアイテムと言えるだろう。加えて、メーター内の表示で動作状況の確認ができるインジケーターが付くなど、車両に最初からシステムとして組み込まれている点も魅力だ。価格設定のメリットも含めて、どうしても輸出仕様にこだわりたいと言わない限り、日本仕様の隼はかなり魅力的な選択肢と思う。

スズキ GSX1300R 隼の詳細写真は次ページにて

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