

掲載日:2011年03月03日 試乗インプレ・レビュー
写真/山下 剛 取材・文/土山 亮
走り出して数秒後に感じたのは、とにかく低速から力強いということ。先代モデルでは、車両のイメージからすると面食らうほどエンジンが軽やかに吹け上がり、その分低速トルクは希薄な印象だったが、W800 は明らかに低速から図太いトルクを発生させている。これは、排気量が大きくなったことと、出力特性を先代よりも低・中回転域にシフトしていることが大きな理由だ。一気に高回転まで回すのではなく、ジワジワと右手を捻り、豊かなトルクを生かして走ることがとにかく気持ちよい。正直言って、そこではF.I. に対するマイナスイメージは皆無。速度、回転数、右手の動き、気候…… 刻一刻と変わる状況に対して、瞬時にその全てを判断し、最適にコントロールしてくれる F.I. には、ハッキリ言って文句のつけようがない。
四輪に比べて F.I. の導入が大幅に遅れていた二輪では、F.I. に対して制御技術の未熟だった時代のイメージを引きずる人、デジタル機器に生理的拒否反応を持つ人もいる。しかし、この十数年間でメーカーが身につけた制御技術は、想像を遥かに超えている。デジタル制御の F.I. にも関わらず、まるで負圧式キャブレターのようなフィーリングを引き出すレベルにまで達しているのだ。
そんな F.I. のフィーリングに感心しながら海沿いのワインディングへ。主に適度なアップダウンを伴う低中速コーナーが連続するコースだ。フロントに19インチホイール、リアに18インチホイールという昔ながらのディメンションを持つ W だが、癖のないハンドリングで迫り来るコーナーが待ち遠しくなるほど走りが楽しい。ライダーが大げさなアクションを取ったり、前後輪への意識的な加重なども意識することなく、どんなペースでも自然に狙ったラインをトレースできる。少し攻め込むとステップ下のバンクセンサーがすぐに摺れてしまうが、それに慣れればかなりのハイペースで走る事が可能。フロントブレーキはシングルディスクだが、しっかりと216kgの車重を減速させることができるし、リアサスペンションの踏ん張りも十分なもの。おとなしい見た目とは裏腹に走りの鋭さはかなりのものといえる。
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