ヤマハ SR400(F.I. model)
ヤマハ SR400(F.I. model)

ヤマハ SR400(F.I. model) – 変わらぬ外観に進化した装備

掲載日:2010年02月04日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

変わらぬ外観に進化した装備
SR新世紀の幕開けとなるか?

1978年に登場したヤマハ SR500/400 は、手頃な価格とビッグシングル・エンジン特有の鼓動感、シンプルな車体構成とスタイリング、オフロード・バイク譲りのレトロなキック始動オンリーなど、多くのユーザーがその楽しさをカンタンに享受出来るロードスポーツ・バイクとして、30年もの長い期間に渡って生産、販売され続けてきた。闇雲にパワーを求めない、時代と逆行したモノヅクリで発売当初は大きなセールスには結びつかなかったものの、ユーザーは「バイク=馬力」ではないところで SR の魅力を自ら開拓していき、それは「SRブーム」となって一世を風靡することに。メーカーはそのニーズを無視することも出来ず、極力価格を抑えながら、なるべく姿を変えずに生産を続投する。SR という製品は、真に良品が生き残ってきたという好例で、累計販売台数は2009年10月末時点で約12万7,000台(SR500含む)を数える。しかし時代は変化し、排ガスおよび騒音規制という厳しい環境の煽りを受け、SR500 は2000年、SR400 は2008年の30周年記念モデルを最期に、とうとう生産終了となった。

今回ご紹介する SR400 は、2009年12月に販売開始された「マイナーチェンジ・モデル」だ。パッと見た印象では見事なまでに「SRらしさ」を残しており、この先10年を見据え、その開発には相当な手間をかけ、熟考がなされている様子。大きな変更点としては、燃料供給システムがキャブレターからインジェクション(電子制御式燃料噴射装置)に、また環境性能向上のため、排気触媒の追加装備がある。時代の流れに翻弄されながら、進化を遂げて再び日本の道路に戻ってきた「新生SR」は、果たして「SRらしさ」をどのように継承しているのだろう…。

ヤマハ SR400(F.I. model)の試乗インプレッション

ヤマハ SR400(F.I. model)の画像

普遍的なメカニズムは健在
「進化」の真意が垣間見える

SR に求められるのは走行フィーリングとスタイリング(カスタム含む)だ、と勝手に断言したい。バイクらしいスタンダード&ベーシックな姿で、過激な加速やギンギンに効くブレーキシステムを必要としない“ほどほど”の走行性能、常にライダーが心地良く、風を切って“トコトコ”と走り、時にはアクセル全開でエンジンを唸らせる。バイクで走ることの基本的な悦びを味わえる気持ちの良いビッグシングル・スポーツが SR だ。個人的に SR400 から 500 へと乗り継ぎ、その気持ち良さはそんな風に、身体で理解している。今回の「インジェクション SR 」に乗ってまず感じたのは、あっけないほどの始動性の良さ。デコンプは使わず、何気なくキックペダルを踏み降ろせば“ストトト…”と起動する。まるでホンダのスーパー・カブみたいだ。もちろんチョークなんてものは存在しない。この気楽さは「走り出す前の儀式」を短縮するもので、これからの若手ライダー、それこそ女子ライダーにも受け入れられ易い改良ポイントだ。キャブレターからインジェクションになったことで得られるメリットは、いかなる環境でも安定した始動性と最適な燃料供給が可能となったこと、これはとても大きい。

ヤマハ SR400(F.I. model)の画像

発進から加速、そして高速域まで、全体的に“まろやか”な印象を覚える。人によってはトルクが薄くなったと感じるかもしれないが、最後のキャブ車と数値を比較してみると、最大トルクが 6,500回転で29N・m に対し、インジェクション SR は 5,500回転で 29N・m、最高出力は 7,000回転で 27PS に対し、6,500回転で 26PS を発揮する。つまり、より低速域重視となっているため、それで「トルクが薄くなりました」と言うほどでは無い。実際に走っていると、確かにビッグシングル・エンジンの個性である“突進力”は「ヌルイなぁ」と感じることもある。しかし今まで感じていた、大きなピストンが荒馬の如く車体を前へ押し出す感覚というのは、そもそも不完全燃焼のままギクシャクとエンジンが回され、クラッチが繋がっていれば、そりゃあ力強く感じるだろう、というもの。インジェクションになってからは常にスロットル開度に対して最適な燃料供給がなされるため、そういった機械的に不完全な作動は制御されている。それを「つまらない」と感じるか「良く出来ている」と感じるかは、バイクに何を求めるかによって変わってくる。それこそ現行ハーレーのように。その反面、高速道路では思いのほか快適なクルージングを体感出来た。高回転域まで淀みなく吹け上がり、より上の回転域でも息苦しさは無く、グイグイと身体を引っ張って行ってくれる。「SR ってこんなに良く“走る”エンジンだったっけ?」と、正直驚いた。

インジェクションとそれに付随する新たな装備を盛り込むことで、ヤマハの開発陣が目指したのは単なる環境性能の向上ではなく、個性の「深化」を目指している、と言える。新たな装備と技術で如何に「SR らしさ」を具現するか。技術的には可能なことでも、そこへ到達するまでは人間の感性によるアナログ的な作業なので、きっと眠れない日々を送っていたに違いない、と想像してしまうのは考え過ぎだろうか…。百数十キロ程度の距離を走ってみて感じたのは、今までに無い、特筆すべき優れた走行性能云々と言うことではなく、前述したような、むしろこれまでの SR と較べて過不足の無いところで大きく「進化」している点が、何より素晴らしいということだ(解りづらいか…)。

ヤマハ SR400(F.I. model)の特徴は次ページにて

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