

掲載日:2009年08月06日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
オートバイ・ロードレースの最高峰MotoGP。そこに参戦する多くのメーカーが、そこで培われた技術を自社の市販スーパースポーツモデルにフィードバックしています。でも、MotoGPマシンはV型4気筒、市販車は並列4気筒と、エンジン形式だけはまったく違うタイプを採用することが多いのはご存知の方も多いはず。ところがですよ! 今回ご紹介するヤマハのYZF-R1(以下、R1)は、MotoGPに参戦しているヤマハ・ワークスチーム「フィアット・ヤマハ」のYZR-M1(以下、M1)とまったく同じ並列4気筒エンジンを採用。しかも、エンジンのキモとなるクランクシャフトはクロスプレーン型と呼ばれる特別なもので、これもM1と同様。両車の間にはパーツや機構に直接的な連携はないとはいうものの、ワークスマシン開発チームがこのR1開発に大きくかかわっていることは紛れもない事実で、その内容はまさにMotoGPマシン直系。そんなスペシャルなマシンの乗り味とはいかなるものなのでしょうか。
このR1の実物を目の前にしたときの私の第一印象は、「カッコイイ」の一言。試乗車が「ブラックメタリックX」という凄みのあるカラーリングだったためか、生命体、そう海に潜む「エイ」のような面構えと相まって、今にも「ビューン」と泳ぎ出しそうな雰囲気がムンムンしています。そしてエンジンを始動するとその反応もタダモノではないことが分かります。右手に対するレスポンスは「ギュン、ギュン」といった感じで、まるで電気モーターのスイッチをオンオフしているような鋭さ。「こんなにシャープなマシンを私が乗れるのだろうか…」という不安にかられてしまいました。ところが、R1は普通にクラッチを繋げばスルスルと走り出し、意外なほど扱い易いのです。短いストロークのミッションは、スコスコと入って気持ちイイし、慣性トルクの変動を軽減してくれるクロスプレーン型クランクシャフトの効果か、走り出しても振動やノイズが極めて少ないため、エンジンの回り具合や路面の状況がとても分かりやすいのです。例えて言うなら、誰もいない静かな庭園に佇んでいる感じ。小鳥のさえずりや虫の鳴き声など、小さな変化が手に取るように分かる。そんな印象です。
こんな感じなので、しなやかに路面を舐め続けるタイヤのグリップに集中していれば、どんどんアクセルを開けられるし、気持ち良くブレーキを握りこんでいけるようになるのです。しかも、コーナーに進入するときに車体を軽々と倒し込んでいける。これはもう本当に感動的で、頭の中でイメージするだけでマシンがコーナーリングを開始するかのような従順さなのです。走り始める前はエンジンの鋭いレスポンスに気後れしていた私も、試乗の後半ではワインディングを十分に堪能することができました。きっとベテランライダーが乗れば、どんな風にでも振り回せる感覚に狂喜乱舞するのではないでしょうか。
こうした「初心者にも優しい高性能」は近年飛躍的に進化した電子制御技術の賜物でしょうけど、それだけではない気がします。クロスプレーン型クランクシャフトなど、高度な工作技術が必要なメカニズムと、先進の電子制御技術が一体となってはじめて実現できるライダーとバイクの一体感。それこそがR1の本当に魅力なのではないか、そう感じた試乗でした。
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