

掲載日:2009年04月30日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
カワサキが日本専用設計モデルとして開発したネイキッドモデル「ZRX1200 DAEG(以下、DAEG)」。そのモデル名から分かる通り、ZRX1200Rの後継にあたり、「Japanese Standard Naked」と銘打つだけあって、随所に日本のライダー事情を考慮したと思わせる特長が散りばめられている。 “DAEG”という言葉には「日」とか「一日」という意味があり、英単語“DAY”の語源でもあるらしいが、それにしても何故カワサキは敢えてこの言葉を選んだのか…。その謎が解けぬまま試乗に臨んだのだが、こうしてDAEGと一日を過ごした後では、その疑問が氷解したような気がする。
スケジュールの都合でDAEGの試乗は夜間、しかも豪雨の中となってしまった。良く調教されているはずだとは言え、相手は1200ccのビッグバイク、気が重いのは事実だ。しかし、こういうときこそバイクの素性が良く分かるというメリットもある。気を取り直して西神田から首都高に駆け上がると、豪雨の中を突き進むDAEGはすぐにその車体バランスの良さを主張してきた。いつもの下りながらの右コーナー。もっとも荷重の掛かるポイントに路面の繋ぎ目があるのだが、タイヤのグリップに対する依存度が高いバイクでこの地点を通過すると、グリップを失ってまたすぐに復帰する例の「ブルッ」というショックがコーナーリング全体に影響してしまうことが多い。DAEGの場合も一瞬そのショックを伝えてくるものの、それが車体の全体に及ぶことはない。バランスや重心位置が適切なため、コーナーリングはビシッと安定したままだ。そして、インジェクション車にありがちなアクセル開け始めの急激なトルク変動がまったく無いため、雨の中のコーナー立ち上がりも怖くない。それどころか、条件が許せばワイドオープンすら可能だった。
大排気量のビッグバイクでありながら、ライダーに緊張を強いない優しさはブレーキや足回りのセッティングにも貫かれている。フロントに装備されたペータル形状のダブルディスクは、見た目とは裏腹に穏やかな性格の持ち主。ローターにパッドが触れた瞬間に発揮されるストッピングパワーは僅かなものだが、その代わり握り込んでいったときのコントロール幅はとてつもなく広い。対してリアブレーキは強力かつ実用的だ。街中ではリアブレーキを多めに使用する走りを意識すれば、決して小さくはないDAEGの車体を思い通りにコントロールすることができる。ガツンと効かないと物足りなさを感じる向きも多いとは思うが、ツーリングの機会が多いライダーにとっては、この前後ブレーキの組み合わせを有り難いと感じる場合も多いのではないだろうか。サスペンションのセッティングも同様だ。固すぎず、動きすぎずで乗り心地も良く、したたかに路面をとらえ続ける前後足回りだ。あらゆる局面でライダーに緊張を強いない躾の良さは、まさに“DAEG”。日々を共にすごしていく相棒として最適だ。ネーミングの謎がやっと腑に落ちたと感じた。
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