

掲載日:2008年12月18日 試乗インプレ・レビュー
構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
今から20年以上前、性能と速さを追求するレーサーレプリカが全盛だった時代に、ある1台のバイクが登場した。アメリカで人気のモータースポーツである、土の上を豪快にスライドさせながる走るフラットトラック競技に出場するマシンのイメージを、そのまま公道モデルに落としこんだFTR250だ。実際にフラットトラックレースに出場できるだけの性能と装備をもって登場したFTR250だが、ロードレース全盛時代の流れには逆らえず、モデルとしての寿命は短命で終わってしまった。
しかし、1990年代後半からはじまったテイスト系バイクへの注目とカスタムブームの隆盛により、にわかにFTRへスポットが当てられることとなるが、絶版となって年月の経つモデルだけに在庫数も少なく、それに変るモデルの登場が多くのユーザーから待ち望まれていた。そして2000年秋、FTRが「FTR223」という形で復活を果たす。軽量・コンパクトなボディに、トルクフルな空冷単気筒エンジンを搭載、先代同様フラットトラックレーサーのスタイルで新生したFTRはまたたく間に大ヒットモデルになり、今やストリート・シングルの定番モデルとも言える存在になっている。多くのライダーに支持されるFTRとは一体どんなバイクなのか。試乗を通して、その実力を確かめてみたい。
フラットトラックレーサーをイメージしたFTRは、シンプルな車体構成が特徴だ。余計な電子デバイスは付与されておらず、オーソドックスな設計となっている。搭載されているエンジンは、トレールバイクで実績を積んだ223ccの空冷OHC単気筒4ストローク単気筒エンジン。5,000回転以下の常用域でトルク特性を重視しており、街乗りに向いた仕様に設定。また、セルスターターが搭載されているので始動は容易だ。サスペンションはフロントにテレスコピックフォーク、リアにモノショックサスペンションを採用したコンベンショナルな構成で、街中における安定性だけでなくフラットトラックでの走破性も考慮したとセッティングとされている。そして、何より特徴的なのがフレームだ。軽量ながらも高い剛性を確保するために、タフなオフロードモデル同様のセミダブルクレードルフレームを採用。そして、剛性を保持しながらもできる限り補強プレートを使わない設計とすることで、「フレーム自体の美しさ」を強く意識したデザインとなっている。
シンプルさで言えば、外装も簡素さと美しさを兼ね備えたデザインだ。フラットトラックレーサーの雰囲気を漂わせる装備類は、必要充分な機能を備えるが派手さは抑え目。メッキパーツを使わないソリッドなスタイルは、FTRが持つ「素のバイク」としての美しさを引き出している。FTRは、近年のカスタムブームにおいて、中心的存在の一つだ。カスタムが似合うバイクというのは、何でもいいわけではない。ベースとしてのマシンが美しいからこそ、カスタムが映えるのだ。モーターサイクル本来の美しさをシンプルに表現しているからこそ、多くのライダーがFTRでカスタムを楽しむのではないだろうか。
SL230やXR230シリーズなどのオフロードバイクに採用され、熟成を重ねられた信頼性の高い空冷OHC単気筒4ストロークエンジン。街中で多用する5,000回転以下のトルク特性を重視したセッティングとなっており、小気味良い走りが楽しめる。
タイヤにはトラッカーモデルの定番とも言える、ダンロップ社製のK180を前後に装着。安定性したハンドリングが特徴で、そのままダート走行を行うことも可能だ。また、フロントホイールには軽量なアルミリムが採用されているのも特徴だ。
未舗装のコースでバイクを豪快にスライドさせながら走行する、フラットトラックレーサーの雰囲気をまとった外装。軽量・シンプル・機能的を追及されており、簡素だが使いやすい。シート形状もよく、車体をホールドしやすくなっている。
FTRにはシンプルなソリッドカラーと、ホンダの伝統とも言えるトリコロールカラーが採用されている。トリコロールは先代FTRにも採用されていたもので、元々はフラットトラック競技におけるホンダワークスが採用していたカラーとなる。
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