モトグッツィ

【 旧車メーカー別購入ガイド】モトグッツィ

掲載日:2007年06月21日 バイク購入ガイド        件のユーザーレビュー

縦置き空冷V2とシャフトドライブ
伝統の“ルマン”シリーズ

燃料タンク下に空冷フィンを持つシリンダーヘッドが、斜めに顔を覗かせる独特のレイアウト。90度V型空冷エンジンを縦に置き、そこから伸びるシャフトで後輪を駆動する独特のレイアウトを持つのがモトグッツィだ。1967年にV7が登場して以来、頑なにこのレイアウトを守り続けている。1970年代に入ると「7 Sport」、「850 Le Mans」、「850 Le MansII」といった名車を生み出し、その後1980年代になっても「850 Le MansIII」、「1000S」と、ファンを唸らせるモデルを登場させた。個性的なフォルムとイタリアの匂いを感じさせる存在感に惹かれたライダーも多かったのではないだろうか。今回はそんなモトグッツィの魅力を、特に'70~'90年代のモデルを中心にメインテナンスを行っている、モトグッツィリパラーレの代表、志賀太一氏に伺った。

初めて乗ったとき
とんでもないバイクだと思った

イメージもともと昔モトグッツィの日本総代理店だった「諸井敬商事」でメカニックをやっていました。だから、モトグッツィの優秀さは頭ではよく理解していたんですがね。でも実際に乗ってみると、改めてそのことを痛感させられました。

 

初めて乗ったモトグッツィは、仕事で試乗した「850 Le MansII」です。その印象は強烈でした。走り出しの街中ではとにかく思うように走らせられなくって、とんでもないバイクだと思いました。でも高速道路に入り、どんどんスピードを上げていくと「これはちょっと違うな」と感じたんです。時速100kmで走っていて前の車に追いつくと、シフトダウンして120kmくらいまで加速して追い越し、またもとのスピードに落とすと、100kmより120kmの方が気持ちいい。だから、ちょっとスピードを上げてみる。そして、今度は時速140kmまで加速して追い越してもとのスピードに戻すと、さらに140kmの方が気持ちいい。そうやって、どんどんペースが上がっていくんですね。いつの間にかとんでもないスピードになっていたのですが、それが怖いといった感じではなく楽しいんです。

 

当時、ホンダのCB750やスズキのカタナといった、アウトバーンで最高速度を競っていたDOHC4バルブの4気筒だと、もっと速いスピードで走ることはできました。しかし、そのスピードでずっと走ることは怖くてできなかったんです。こうした国産バイクは、アウトバーンでの最高速度を競って市場を席巻していましたが、時速200km近いスピードではまっすぐ走ることは大変でした。それを、当時のモトグッツィはいともたやすく、そしてライダーが楽しく乗ることができたんですね。

長時間の高速ツーリングが
楽しくなるキャラクター

イメージモトグッツィの魅力は、なんと言っても高速道路を使った長距離ツーリング。長時間、高いアベレージスピードで走り続けられる性能を持っているのがモトグッツィなんです。もちろん長距離を長時間走れば疲れるのですが、それでもますます走りたいと思わせてくれます。その理由は、ハイアベレージで巡航しているときのエンジンの回り方や使っている回転数にあると思います。よく、“縦置きクランクシャフトが生み出す、モトグッツィの直進安定性”と言われますが、クランクシャフトによる効果よりも、フレームも含めた車体全体の基本設計のよさだと思うんですよね。

 

こうしたハンドリングは、モトグッツィがテストコースを持っていなかったからこそ生まれたのだと思います。今でもそうですが、当時の国産メーカーはテストコースやサーキットを使って開発をしていましたが、モトグッツィのテストコースは一般公道だったんです。我々のような一般のライダーが乗るシチュエーションでテストをしてバイクを造っていたんですね。だから、決して国産バイクのようにトップスピードは速くはありませんが、高速道路でツーリングしているときに楽しさを感じられるバイクになっているのです。それだけに、街中をチョコチョコ走るような乗り方ではモトグッツィの良さはわかりません。また、とてもしっかりした高速安定性があるだけに、レーンチェンジといった細かな動きに対してはいい加減な乗り方をしていると思うように動いてくれません。ライダーに対してしっかり基本に忠実な乗り方を要求してくるんです。そこがモトグッツィの面白さであり、乗りこなす楽しさがあるんです。

 

また、“イタリア車は壊れやすい”とよく言われますが、実はそうではありません。イタリア車の質が悪いのではなく、初期の納車前の整備が大切なのです。モトグッツィの場合、生産されてから1ヶ月以上の時間を掛けて海を渡ってきますから、フュエルタンク内の錆止めがキャブに入りジェット類や加速ポンプなどを詰まらせて不調になることがあります。実際、納車前の車両でシリンダー周りからオイルが漏れていたので、開けてみてみたらシリンダーのガスケットに塗装のバリが乗っていたこともありましたね。これは組み立て上の問題です。だからこそ納車整備のときに、そういったところまでしっかり見てあげればいいだけなんですよ。こうした組み立て上の問題に対して、モトグッツィは当時の日本車に比べても基本設計がとてもよくできていると思います。事実、リパラーレのお客様には10万km、20万km乗っているお客さんがいらっしゃいます。そんな20万kmを超えたモトグッツィでも、クランクやコンロッドを交換するようなことはしていません。クランクを換えるということは、そのエンジンの寿命が尽きたのと同じことを意味しますから。それが20万kmも走れるということは、もともとも設計がよくできているということだと思います。

志賀さんに訊く!
ビギナーにオススメなモトグッツィ

ショップマスター'70年代、'80年代のモトグッツィで人気の高いのは、やはり「850 Le Mans」でしょうか。あの丸いビキニカウルとロングタンク、後退したポジションが魅力のようです。また、その後の「850 Le MansIII」も人気がありますね。私個人としては「Le Mans 1000」が好きですね。性格がとてもスポーティで、エンジンの回り方では「850 Le MansIII」が問題にならないくらいです。Le MansIIIに比べて、キャブレターの口径が大きく、カムシャフトが違っていて、バルブの大きさも違います。何より排気量が850ccに対して950ccありますからね。

 

いずれにしても、'70年代、'80年代のモトグッツィは、発売されてからすでに20年、30年たっていますから、どんな車両もあまりコンディションがいいとは思わないことです。それだけに、乗るからにはそれなりの予算とリスクを覚悟しておく必要がありますね。また、その当時のモトグッツィはもともと輸入台数少ないため、中古車を探すのは相当大変だと思います。たまたま見つけたとしても、前のオーナーがしっかり整備して乗っているか、動けばいいと乗りっぱなしなのかで、コンディションにかなり違いがあります。だから、中古のモトグッツィは買ったらすぐにしっかり整備をした方がいいですね。例えば100万円あってその時代のモトグッツィに乗りたいと思ったら、100万円の車両を買うのではなく、50~60万円くらいのものを買って、残りでしっかり整備をした方がいいと思います。また、外装がちゃんと揃っている車両を選んだ方がいいとも思いますよ。確かに今でも外装部品を手に入れることはできますが、例えばサイドカバーが欠品していると、パーツと塗装代を合わせて3万5000円かかります。同じお金を払うのであれば、例えばタイヤを新しいのにするといった、乗ることに関係のある部分に当てた方がいいと思いますね。

愛車DATA --

ライディング状況Le Mans 1000
リパラーレオリジナルカスタム

1976年に誕生した「850 Le Mans」から「850 Le MansII」、「850 Le MansIII」と進化して、1984年に949ccにボアアップして登場したのが「Le Mans 1000」だ。今でも人気の高いLe MansIIIと共通のフォルムを持った、モトグッツィのフラッグシップ。志賀さんのモデルは1987年に登場したフロントホイールが18インチ、フェアリングがフレームマウントとなった後期型。リパラーレをスタートさせるのと同じころに新車で購入した。その後、フロントフォークを倒立フォークに換装し、17インチの前後ホイール、Le MansIIIのリヤショック、Le Mansのフロントカウル、ワンオフのアルミタンクといったカスタムを施した車両だ。

 

取材協力
30年にわたってモトグッツィの日本総代理店であった諸井敬商事が1989年に閉鎖したのを受けて、同社で工場長をしていた志賀氏が開いたモトグッツィ専門のワークショップ。「正しく理解し、基本に基づいて正しく確実な整備を実施する」をモットーに、’70~’90年代のモデルを中心にサービスを行っている。長年のキャリアに裏付けられた志賀氏のノウハウや、独自のルートで調達した膨大なパーツのストックなど、旧いモトグッツィユーザーのよりどころともいえる存在。

 

住所/東京都杉並区上高井戸3-2-23
営業/10:00~18:00
電話/03-3304-2562
休日/金、毎月第1土、祝祭日、年末年始

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