R25/R3、MT25/MT3 確かな性能と選べるルックスが魅力のWR'Sマフラーに待望のフルエキ登場
取材協力/WR’S(ダブルアールズ)  取材・文/淺倉恵介  写真/木村圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年12月22日
高性能なマフラーを数多くラインナップするWR'Sから、ヤマハの人気ツインスポーツYZF-R25/MT-25用のフルエキゾーストシステムが新たに登場した。ミドルクラスのマシンを中核に置き、マフラー開発を続けてきたWR'Sだけにノウハウは豊富。一体どんな素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのか? 開発者インタビューを交えての、実走インプレッションをお届けする。

INTERVIEW

マフラー開発に賭ける妥協無き姿勢が
珠玉の1本を誕生させた

WR'Sのマフラー開発には、膨大な時間がかけられる。試作とテストを繰り返し、求める性能とフィーリングが追求されるのだ。その徹底ぶりが凄まじい。例えばシャシーダイナモを使用したテスト。少しの仕様変更であっても必ずテストが行われ、データが記録される。

 

「例えば、パイプの径を変えて出力特性に変化が出たとします。でも、その結果だけが欲しい訳ではありません。もちろんデータは大切ですが、その出力特性が変化した理由を究明し理解して、ユーザーさんに根拠を説明出来なければなりませんから」

 

そう語るのはWR'Sでマフラー開発を担当する山本弘之さん。YZF-R25/MT-25用マフラーの開発時、シャシーダイナモでのテストは300回を数えたという。それでも、そのデータ自体は最終的な開発指針にはならないのだという。

 

「最後は実走でのフィーリングが決め手です。結局、乗って楽しさを感じられるマフラーでなければ、意味がないと考えています。仮にシャシーダイナモ上で素晴らしいデータが得られたとしても、走りが面白くないのなら製品化はしません。YZF-R25はマフラー作りが難しいバイクなんです。スリップオンマフラーを開発した時も、なかなか乗り味に変化が出なくて苦労しました。フルエキゾーストの開発を始めた時も、思ったようなパワー特性が得られなかったら、ボツにしようと決めていました。ですが、開発を進めていくうちに、面白いマフラーになる手応えが得られたんです」

 

山本さんは、YZF-R25/MT-25のエンジンを、高回転に元気があり面白いエンジンだと高く評価している。だが、そこに至るまでの過渡特性に、不満を感じたという。

 

商品開発本部長 山本弘之さん

家業がバイク用マフラーのOEMメーカーだったこともあり、学生時代には既にパーツの自作を行っていたという。若き日にはレース活動も経験。和興インダストリーズに入社後、WR'Sブランドの立ち上げから一貫して開発を担当している。

WR'Sでは、まだ国内導入例が少なかった1990年代初頭から、マフラー開発にシャシーダイナモを活用してきた。現在使用している機種は、フランスのフックス社製。計測データのバラツキが少ないことを評価しての採用とのこと。シャシーダイナモでのテストと実走の2本の柱が、WR'Sマフラーの高性能を実現する。

「言葉は悪いのですが、ダラダラと回ってメリハリがない。その部分をなんとかしたかった。パワーを出せば単純にスピードは出ますが、それを楽しいと感じられるかは別だと思います。よく回るエンジンですから、『回す』楽しさを引き出すことも重要だと考えました。苦労はしましたが、その分だけ面白いマフラーになったと思います」

 

そう聞けば、乗り味に期待せざるを得ない。インプレッションに使用したマシンはMT-25。YZF-R25と基本コンポーネンツを共有するスポーツネイキッドだ。スターターボタンを押し、エンジンをかける。始動性には、何の問題もない。ノーマル状態のインジェクションセッティングに、マフラーがピタリとマッチしているひとつの証明だ。アイドリング状態での排気音は、拍子抜けするほど静か。音圧こそやや高めに感じるが、音質はノーマルマフラーのそれに近い。

 

ノーマルと同様に発進は容易。マフラーが変わったことで、トルクが細くなるような弊害は皆無だ。むしろトルクが太っているので、頼もしさを感じる。回転を上げていくと、パワーの繋がりの良さに気づかされる。ノーマルはアイドリング付近のトルクは豊かだが、3千回転から6千回転といった中間の領域でモタつく傾向がある。その部分のパワーとトルクが上乗せされ、走りがスムーズになっている。日常使用で多用する回転域だけに有難い。車の流れに乗るだけなら、ギアを固定してのスロットル操作だけで十分だ。

 

だが、WR'Sのマフラーの本領はそこにはない。スロットルを大きく開くと、5千回転くらいからトルクがグイグイと立ち上がってきて、レスポンスも鋭さを増してくる。本気のパワーバンドは7千回転から上、エキサイティングに変化した排気音と相まって、乗り手を鼓舞するようだ。また、その領域ではスロットル操作とタコメーターの数値がシンクロするように動き、開けたら開けただけ加速してくれる。パワーデリバリーが実にリニアで、スロットルでマシンを操る醍醐味が味わえる。そして、もちろんピークパワーも向上。これは速い!!

 

低速トルクが細いわけでもないのに、高回転のパワーが刺激的なため、ある意味ピーキーな特性にも感じられる。そして、そこが面白い。低中回転域の扱いやすさと、痛快な高回転域という2面性は魅惑的だ。試乗後、山本さんは、こうコメントしてくれた。

 

「マフラーを交換するだけで、こんなに走りが変わる。そういったカスタムの楽しさを、多くのライダーに知って欲しい。バイクをもっと好きになって欲しい。WR'Sのマフラーが、そのきっかけになれれば……。そう考えてマフラーを造っています」

 

その言葉通り、しっかりとパワーアップが体感出来て、何より走りの楽しさが倍加するWR'SのYZF-R25/MT-25用マフラー。オーナーにとっては、何とも魅力的な選択肢だろう。

試乗のステージは、YZF-R25/MT-25が最も多く使われるであろうストリートを選択。細い生活道路から交通量の多い幹線道路、コーナーなど様々なシチュエーションを試してみたが、あらゆる場面で走りを楽しむことが出来た。スムーズなパワー特性は、ワインディングやサーキットでも威力を発揮するハズだ。

PICKUP PRODUCTS

サイレンサーのバリエーションが豊富で
好みのスタイルが選択可能

WR'Sのマフラーはリーズナブルな価格も魅力。今回紹介しているフルエキゾーストマフラーも、税抜きで7万8,000円?という驚きの低価格を実現している。また、スリップオンマフラーも、YZF-R25/MT-25用とYZF-R3/MT-03用がそれぞれラインナップ。サイレンサーは数タイプから選択可能となっており、好みのスタイリングを選ぶことができる。WR'Sのストリート用マフラーは、JMCA認定品の政府認証マフラーなので安心して公道走行が可能。排気音が法規制内で収まっているのは当然、環境問題にも配慮して排気ガスの成分にも着目。規制値ギリギリではなく、余裕を持って規制をクリアできるスペックが持たされている。

 

BRAND INFORMATION

WR’S(ダブルアールズ)

住所/大阪府東大阪市長瀬町1-15-21
電話/06-6728-5978
営業時間/09:00-18:00
定休日/土、日、祝日

OEMでバイク用マフラーを生産していた和興インダストリーズが、自社ブランドとして立ち上げたのがWR'S。スタートは1990年代初頭で、当時はビッグバイクカスタムが注目を集め始めた時期。多くのメーカーがビッグバイクに移行する中で、”他がやらないならウチがミドルクラスを極めよう!”とミドルクラスを中心にパーツラインナップを展開。ネイキッドブームの隆盛を共に、メジャーブランドへと一気に駆け上がった。