取材協力/WR'S  取材・撮影・文/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2013年10月09日
四半世紀近くに及ぶマフラー作りで培われ蓄積された豊富なノウハウを活かし、主にミドルクラスのユーザーに向けた製品を送り続けているのが 『WR'S』 だ。ユーザーが「安心して使える物を…」と、徹底したベンチテストが行われている。

FEATURE

培われた膨大なノウハウを活かした
安心して使えるマフラーを提供

ミドルクラス向けのマフラーをメインとしたパーツメーカー 『WR'S(ダブルアールズ)』 は、ネイキッドブームが沸き上がっていた1990年に自社ブランドとしてリリースし、以降ストリートユースを前提とした、リーズナブルでありながらも満足度の高い製品を世に送り続けている。

四半世紀近くにわたるマフラー作りで培われ、蓄積されたノウハウは膨大なものがあり、自社ブランドを立ち上げた直後、ホンダ CBR250RR において、クルマの車体ほどの長さを持ったマフラー(当然バイクの車体からは大きくはみ出す)を実験的に試作してみたこともある。これは管長を確保することで、低速トルクが大幅に上がるのではないか? との予測を元にトライされたものであり、そういった市販前提ではない、常識にはとらわれない方向性へのアプローチなど、柔軟性を持っているのである。現在ではエキパイやテールパイプなどの、長さや太さから得られるパワー特性を予測できるまでになっているが、それでも試作してみると予想外の結果になってしまうこともあり、そこがマフラー作りの難しさでもある、とは開発担当の山本弘之さん。

製品に対するポリシーは、前述の通りミドルクラス向けにリーズナブルであることは当然だが、それ以上にユーザーが「安心して使えること」を念頭に置いている。山本さんは JMCA (一般社団法人 全国二輪車用品連合会)のマフラー部会副部会長も務めており、立場的にも強い使命感を持っている。販売する製品は音量や排ガスなど、定められた規制値は当たり前のようにクリアしており、正々堂々と装着して走りを楽しむことができるのだ。

また耐久性についても然り。パーツに適した材質を選定し、それを確かめる意味でも開発段階からベンチ(シャーシ・ダイナモ)上でテストを繰り返し、その回数は1機種あたり100時間以上にも及んでいる。

ユーザーが「安心して使えること」を踏まえ、その上でマフラーに求められる性能を追求している。車種によって “味付け” は異なってくるが、いずれも方向性は WR'S の考える “乗りやすさ” だ。ノーマルの状態をベースに、補った方が良い部分の厚みを増したり、あるいは長所の部分を伸ばしたりといった具合。いわゆるピークパワーだけを太らせるのではなく、ストリートユースで使用することが多い領域での味付けを重視しているのである。そして製品は自社工場で一貫して作られており、最先端を支える町工場の街、東大阪発のメイドインジャパン。サイレンサー部分に燦然と輝く 『WR'S』 のロゴは、信頼のブランドの証でもあるのだ。

数年前から主力商品のマフラーに加え、F.R.P.やカーボンの素材を使用したボディパーツもリリースされている。それらは “コールドプレス” という製法で作られており、軽量でありながらも高い強度と精度を持ち合わせているのが特長だ。これは製造にあたり、雄(オス)型と雌(メス)型のふたつを用意し、そこにサンドイッチして生み出されていく。F.R.P.やカーボン素材は通常、オスかメスのいずれかの型があれば作ることは可能だが、ふたつで挟み込んで圧力を加えることで余分な樹脂が取り除かれ、その結果として軽量化に繋がるのである。当然のことながら型がふたつ必要なため、そのぶん製造コストは嵩むが、WR'S ブランドとして展開するのに相応しいクオリティの製品となっているのは言うまでもない。

サイレンサー部分に燦然と輝くWR'Sのロゴは信頼できる製品の証だ。騒音や排ガスなど各種の規制値をクリアしており、車検にも対応。開発の中心となっているのが、山本弘之さん。豊富なノウハウを有し、また新たな可能性にも日々取り組んでいる。2014年から、同じくマフラーメーカーであるBEAMSとのとコラボレーションで、KTM 1190 RC8 R を用いて鈴鹿8時間耐久レースにも参戦が決定している。

BRAND INFORMATION

WR'S(ダブルアールズ)

主にミドルクラスに向けたマフラーを主力商品とするとするパーツメーカー。社内で一貫して開発から生産までを行っており、リーズナブルでありながらも満足度の高い、かつ各種規制にも対応した安心して使える物作りがモットーである。カーボン/F.R.P.を用いたボディパーツも展開しており、WR'Sブランドらしい確かな作り込みがなされている。

住所/大阪府東大阪市長瀬町1-15-21
電話/06-6728-5978
FAX/06-6728-7075
営業時間/09:00-18:00
定休日/土、日、祝日

MAKING

商品化までには徹底したベンチテストを繰り返す
ボディパーツはドライプレス製法で

主力商品であるマフラーは、開発から量産まで社内で一貫して行われている。開発の際の車両は徹底したテストを気兼ねなく行えるように、全て購入され用いられている。ボディパーツはドライプレス製法で作られており、そちらにも要注目だ。

製品化までに行われるシャーシダイナモによるテストは100時間以上にも及ぶ。用いられているのはフランスはFUCHS社製の物で、セッティングが容易で得られたデータの補正が必要がないのがメリットなのだそうだ。

開発の際に用いられたテスト用の中間パイプ。長さや太さ、形状の異なる物が数種類(機種によって異なる)が用意され、それを入れ替えて狙いのパワー特性になるように探っていく。エキパイなども同様に、さまざまな方面からアプローチが行われている。

マフラーの製造は素材となるパイプのカットから曲げ、溶接など各工程が社内で一貫して行われている。量産品と言えども溶接を始め、様々な部分が手作業となっており、またそれぞれが丹念かつ丁寧に進められている。

ズラリと並べられた溶接の終わったサイレンサーエンド部分。これに外側(シェル)が組み合わせられるのを待っている状態だ。内部のパーツも組み込まれて完成した製品は、丁寧に梱包、箱詰めされて出荷される。

こちらのカワサキNinja250に装着されているのは、オーソドックスな丸形サイレンサーのスリップオンタイプ。ノーマルのエキパイとの接合部には“ダミーパイプ”を配しており、ルックスの向上にも大幅に貢献。

カワサキZ250とNinja250は共通となっており、こちらの車両に装着されているのはエキパイ部分から交換するフルエキゾーストタイプ(試作品)だ。サイレンサーは現代的なオーバル形状となっている。

開発中のCBR125R用フルエキゾースト。ノーマルとは異なる軽快感のあるルックスとなっている。125ccのロードスポーツバイクらしいスムーズな繋がりのある加速が得られるように設計されている。

Ninja250/Z250用フルエキゾースト(試作品)の集合部。どのあたりで集合させてテールパイプに導くかが開発のキモとなり、開発段階ではいくつかのパターンが用意されて試されている。

Ninja250/Z250用フルエキゾースト(試作品)のエキゾーストパイプ部分。試作のため量産品には無い溶接箇所が見られる。車種によっては左右のエキパイを繋ぐバイパスパイプが設けられることもある。

10Z250に装着されていたオーバルタイプサイレンサーのエンド部分。現代的なルックスのオーバル形状か、あるいはオーソドックスな丸形にするか…それも楽しい悩みと言えるだろう。

11WR'S ブランドのF.R.P./カーボンボディパーツは、雄型と雌型のふたつをサンドイッチして圧力を加える“ドライプレス”製法が用いられている。余分な樹脂がしみ出すことで、強度を確保しながらも軽量化を実現している。

12Ninja250/Z250用の綾織りカーボンタンクパッド。タンク形状のシルエットを損なうこと無く、傷付き防止という機能面とルックス面の向上に大きく貢献する。専用パーツのためフィット感にも優れている。

13Ninja250/Z250用のF.R.P.リアフェンダーレスキット。リア回りをスッキリと見せてスタイリング性を向上、また反射鏡の下にもストップランプを備え、ブレーキング時の視認性を高める機能性も加えられている。

14Ninja250/Z250用綾織りカーボンリアフェンダーと綾織りカーボンスイングアームカバー。リア回りをスタイリッシュに見せるパーツで、リアフェンダー単独、あるいはスイングアームカバー単体でも装着可能。

PICK-UP PRODUCTS

ミドルクラスを中心としたカスタムパーツ

Ninja 250用 フルエキゾースト
Z 250用 フルエキゾースト

スリップオンに加え、排気系を丸ごと交換するフルエキゾーストシステムもラインナップ。サイレンサー部分のみの変更となるスリップオンとは異なり、エキパイ形状や集合部までの長さなどが新たに開発され、Ninja250/Z250のポテンシャルをさらに引き出されている。エキパイから集合部、テールパイプまではステンレス素材、サイレンサー部分はステンレスのラウンドタイプから焼き色の付けられたチタンオーバルまで、全6種類がラインナップされている。

サイレンサータイプ【ラウンド】

ステンレス■7万8,750円
チタン■8万5,050円
カーボン■8万7,150円
焼き色チタン■8万7,150円

サイレンサータイプ【オーバル】

チタン■9万300円
焼き色チタン■9万2,400円