エンジン内部の抵抗を削り取り、スムーズな走りを実現。快速、快適、T-REV αシステム
取材協力/寺本自動車商会  取材・文/淺倉恵介  写真/木村圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年10月28日
装着すると驚くほど乗り味が変化すると大きな話題となっているT-REV。そのT-REVのエヴォリューションモデルであるαシステムに、MT-09/TRACERとYZF-R25用が登場した。T-REVは何故走りが変わるのか? その原理と効果、狙った特性を、開発者のインタビューと実走インプレッションを交えてお伝えする。

INTERVIEW

一度使えば手放せない!
T-REVの魅力と秘密に迫る

クランクケース内はある種の密閉空間。その中でピストンが上下し、ミッションが高速で回転している。そこにはさまざまな抵抗が存在しているのだが、そのひとつが空気だ。空気が抵抗になるという現象を、単気筒エンジンで考えてみよう。ピストンが下がる時、クランクケース内の空気は圧縮される。出口に蓋をした注射器を押すことを考えれば、その抵抗の強さを想像できるだろう。

 

この空気の抵抗を減らすため、クランクケースにはブローバイラインと呼ばれる外気とのバイパス経路が設けられている。それでもエンジンの稼働中は、温度上昇やピストンとシリンダーの隙間から入り込んだ空気などが原因で、クランクケース内は気圧が高くなっているのが普通だ。実際の容積より、多くの空気が入り込んでいる状態で、これが大きな抵抗になる。

 

そこで登場するのが寺本自動車商会のT-REV。T-REVはワンウェイバルブを持つユニットをブローバイラインに割り込ませ、一旦クランクケース内から出ていった空気が、中に戻ろうとするのを防止する。クランクケース内を負圧状態に保ち空気密度を下げるので、”空気密度が下がる=空気の重量が軽くなる”という現象がおきる。クランクケース内の空気は、非常に高い速度で移動しているため、その空気が軽くなることでエンジン内部の抵抗を軽減するのだ。

 

そうして得られる効果は、過大なバックトルクを最適化することでエンジンブレーキのフィーリングがスムーズになる。スロットル開閉時のドン付き感の緩和。ポンピングロスの低減により、高回転域の伸びや燃費の向上など多彩だ。

 

このようにメリットの多いT-REVを、更に進化させたものが今回紹介するT-REV αシステム。最近のバイクは、排気ガスの清浄化を狙いエアインダクションシステム(AIS)を導入しているモデルがほとんど。AISとは排気ポート直後に新気を送り込み、排気ガス内の未燃焼ガスを再燃焼させ、排気ガスを清浄化させるデバイス。T-REV αシステムは、このAISが生み出す負圧を利用しブローバイガスを強制的に吸い出し、クランクケース内の減圧度合を高めて効果の向上を狙ったシステムなのだ。

 

寺本自動車商会 寺本幸司さん

1971年生まれ、大阪府出身。過去には全日本ST600、世界耐久選手権などで活躍。2014年からは国内二輪レースの最高峰JSB1000クラスに、Team Tras 135HPのエースライダーとして、BMW S1000RRを駆ってフル参戦中。開発ライダーとしての手腕は高く評価されており、バイクメーカーのテストライダーを務めた経験もある。

T-RV αシステム装着のMT-09の走りを体験。走行コースは、開発時に想定されている市街地から幹線道路といった街乗りシチュエーション。「MT-09は刺激的で楽しいけれど、神経質なところのあるバイク」という印象を持っていたが「どこで乗っても楽しめる!!」と評価が一変した。

T-REV αシステムは、全て車種別専用設定とされ汎用品は存在しない。フィッティングの問題ではなく、機能面で車種別に製作せざるを得ないのだ。その理由を、開発を担当する寺本さんはこう語る。

 

「単純にT-REVとAISを組み合わせれば良いというわけではありません。クランクケース内圧は下げ過ぎるとデメリットも出てきます。過剰な減圧はエンジンオイルの油圧低下を招き、エンジンを壊す危険性もあります。

 

減圧すればバックトルクは軽減しますが、その度合いを調整することも重要です。エンジンブレーキが全く効かないと乗りにくくなってしまいます。自然に行っていることなので意識していない場合が多いのですが、エンジンブレーキは”バイクを減速させる”という動作で、とても重要なファクターなんです。

 

スロットルを閉じた時に思ったように減速しないと、背中から押されたようなイヤな感じが出る。これを我々は”押され感”と呼んでいます。押され感が出ないように、それでいて不要なバックトルクを排除しなければ気持ち良く走れません。T-REV αシステムは、絶妙なエンジンブレーキのフィーリングが得られるようにセッティングしています」

 

寺本自動車商会には、寺本さんを含め二人の国際ライセンスライダーが所属している。トップクラスのテクニックを持つライダーが、車種ごとに入念にテストを繰り返し最適な特性を追求しているのだ。だからと言って、T-REV αシステムはレーシングパーツではない。一般的なライダーがストリートで気持ちよく走れることを、開発コンセプトに掲げている。

 

そのT-REV αシステムに、人気の2車種ヤマハMT-09とYZF-R25用のキットが、新たにラインナップに追加された。今回、T-REV αシステムが装着されたMT-09をテストライドする機会を得たので、そのインプレッションをお届けしよう。

 

走り出して最初に気づくのは、エンジンの回転上昇がスムーズになっていること。比べてしまうと、ノーマルは回転の上がり方にザラつきを感じてしまう。振動も減っているようだ。そして、何と言ってもスロットルのオン/オフ時のギクシャク感がマイルドになっていることが嬉しい。

 

俊敏なレスポンスと爆発的なパワー感はMT-09の魅力的なポイントだが、柔らかめの足回りと組み合わせられていることで、スロットル操作時の姿勢変化が大きくライダーを疲れさせる傾向がある。T-REV αシステムを装着すると、レスポンスが鈍くなったりはしていないにも関わらず、スロットルの開閉に気を遣わなくても良いようになる。

 

「抵抗の大きいエンジンは、スロットル操作に対するエンジンの反応にタイムラグが出ます。MT-09も、スロットルを開けてから遅れてトルクが立ち上がるので、ドン付き感が出てギクシャクする。T-REV αシステムを使用すると、エンジン内部の抵抗が減ってレスポンスがリニアになるので、違和感がなくなるんです」と、寺本さん。納得の理由だ。

 

各パワーモードも試した。過剰にも思えるAモードでも、高回転域をリラックスして楽しめるし、Bモードでは4気筒エンジンのような従順さを身につけている。面白いのは、開けやすくなっているのに、レスポンスやパワー感といったMT-09ならではの、スポーティな乗り味が失われていないことだ。MT-09が元々持っているキャラクターを変えることなく、操る楽しさが増している。力だけはある野生馬を、調教して優秀な競走馬に仕立て上げたという感じ。MT-09にT-REV αシステム、これは一度味わって欲しい組み合わせだ。この走りを体感してしまうと、他のマシンでもT-REV αシステムを試してみたくなる。無限の可能性を感じさせるアイテムだ。

MT-09にT-REV αシステムを装着したところ。高級感のある仕上げが、カスタムパーツとしての所有欲をくすぐる。取り付け作業は、信頼のおけるプロに任せたい。

PICKUP PRODUCTS

違いは走ってみれば分る!
T-REV無料体感イベントにエントリー

T-REVの効果は、自分で体感してみるのが一番。寺本自動車商会では、日本各地のバイク用品店で「T-REV 無料体感イベント」と題したキャンペーンを展開中。これは、自分のバイクにT-REVを装着して、走行テストが出来るというもの。取り付け工賃などは一切かからない無料イベントなので、是非一度参加してみよう。開催スケジュールは寺本自動車商会のwebページで確認できる。取り付け作業には、ある程度の時間が必要なため、作業が混み合っている場合は飛び込みでのイベント参加は不可能な場合がある。事前に寺本自動車商会のwebページからエントリーしておくと確実だ。

 

BRAND INFORMATION

株式会社寺本自動車商会

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