バイクカスタムの基本、アフターパーツを装着するなら誰もが最初に思い浮かべるパーツ、それがマフラーだ。それだけメジャーなパーツだけに、日本国内だけでもマフラーメーカーは非常に多い。その、星の数ほど存在するマフラーの中から、自分にあった1本を探し出すのは至難の業。だが今、カスタムフリークの間で話題となっているマフラーブランドがある。それがBMS-Rだ。
BMS-Rを展開するのはBEAMS。その名前を聞いて“オッ”と思ったなら、相当なツウ。BEAMSはスクーターや4ミニカスタムの世界では、推しも押されぬビッグネーム。並外れた品質と、確実なパワーアップが約束されるマフラーとして広く知られている。BMS-Rは、そのBEAMSのロードスポーツモデル用のブランドなのだ。こだわりの作り込みと確かな性能アップはもとより、ミドルクラスからビッグネイキッド、スーパースポーツに至るまで、対応車種の幅広さも見逃せない。
そのBMS-Rのラインナップに、MT-09用とMT-07用のフルエキゾーストが新たに加わった。今回は、その新作マフラーを装着したMT-09に試乗する機会を得た。果たしてBMS-Rの実力や如何に? 期待に胸を膨らませながら走り出した。
試乗を開始して数100m、角をいくつか曲がり、停止と発進を何回か繰り返したところで気付いたことがある。それは、“MT-09って、こんなにイージーなバイクだったかな?”ということだ。MT-09は乗り難いバイクではないが、優しすぎるということもない。オーナーならご存知の通りスロットルレスポンスが非常に鋭く、加えてサスペンションがソフトでピッチングモーションを起こしやすい車体セッティングが与えられている。その二つの要素が重なると、低いギヤを使っての低速走行中にラフなスロットル操作をすると、マシンがギクシャクとした挙動を起こしてしまう。ところが、BMS-Rのマフラーを装着していると、そのギクシャクが起きないのだ。
試乗のステージは市街地。信号や交差点が多く存在するレイアウトで、基本は低中速域でのゴー&ストップ。それだけに、BMS-Rマフラーの乗りやすさを、より強く体感することができるシチュエーションだった。BMS-Rマフラーを装着すればスポーツ性が高まるのみならず、ユーティリティヴィークルとしてのMT-09の魅力を発見できたのは思わぬ収穫だった。
MT-09はライダーに“オレを扱いきってみろ”と挑発してくるようなストイックな部分があり、それが走りの面白さを生み出すファクターではある。だが、走っている間、常に繊細な操作を要求されるのは少々疲れる。特に、速度がのらず、ゴー&ストップが連続する街乗りでは気になる。軽快でパワフルという、コミューターとして優秀なパッケージを持ちながら、もったいないと感じる部分だ。その点、BMS-Rのマフラーは、実に上手くエンジンを調教している。意識せずにスロットルをオン/オフさせても、エンジンは望んだ通りに反応し、気持ち良く加減速してくれるだ。
だからといって、牙を抜かれた優しいだけのキャラクターではない。中回転域からスロットルを大きく開けば、マシンは猛然と加速する。この加速感が、またイイ! これは、体感してもらうしかないのだが、ノーマルマフラーが後ろから蹴飛ばされるような加速だとすると、BMS-Rの加速は巨大で強力なゴムひもで前方から引っ張られるような加速とでも言うべきか? スムーズなのだけれど、ものスゴく強烈な加速感。これはクセになる。
今回は市街地での試乗だったので、高いギヤでのトップエンドまで引っ張ることはできなかった。試そうにも、あっという間に前を走る車に追いついてしまうからだ。聞けば、中回転域の凄まじい加速力を保ったまま、レブリミットまで吹け上がっていくのだという。それも、ノーセッティングのボルトオン状態のままで、そのパワー特性を実現しているというから驚かされる。
これだけ見事なマフラー、開発には苦労したのではないかと訊ねたところ、やはり相当に時間をかけて作り込まれたものとのこと。中でもポイントとなったのが、ヘダーズパイプに設けられたバイパスだったそうだ。バイパスパイプの位置が10mmズレれば全く違う特性になってしまい、試作段階では全然パワーが出ないマフラーもあったという。ヘダーズの形状や管長、バイパスの位置やサイズの変更を繰り返し、現在の素晴らしいパワー特性を実現したのだ。また、サイレンサーの前に、ボックス形状のサブサイレンサーを採用したことも大きかったという。内部構造の自由度の高いボックスを設けることで、十分な消音性能を確保。キャタライザーも内蔵し、排気ガス規制にも適合。安心の車検対応マフラーであることも重要なポイントだ。
最後に付け加えておくと、排気音はけっして大きくはない。それでいてパルス感の利いた、乗り手を鼓舞するようなサウンドを響かせてくれる。アフターマフラーの魅力のひとつが排気音なのだから、ここは大切だ。気楽に乗れて、その気になれば猛烈に速い。そして音がイイ。“こうだったらいい”と考える、理想のMT-09の姿が、ここにあったのだ。
BMS-Rのマフラーには、BEAMSがマフラー製作で研き上げてきた技術が、思う存分に注ぎ込まれている。ここでは、その魅力の一端を紹介しよう。MT-09 & MT-07用マフラーの注目ポイントは、なんと言っても新型サイレンサーの採用だろう。CORSA EVO IIと名付けられたサイレンサーは、異径6角断面を持つエッジの利いたデザインが実に個性的。排気口がドライカーボン製のカバーで覆われているところも新しく、アピアランスの高さは格別のものがある。見せるパーツという意味合いでも、BMS-Rマフラーのクオリティの高さは揺るぎがない。また、BEAMSでは素材も国産品にこだわっている。安価な輸入素材に頼らず、コスト度外視でクオリティを追求しているのだ。ユーザーサービスとして2年間の製品保証が付くのは、ユーザーとしては有り難いポイントだ。
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高い性能とスタイリッシュなルックス、優れた品質を持つこだわりのマフラーを生産するメーカー。対応する車種は、原付からビッグバイクまで、実に幅広いラインナップを誇る。業界に先駆けて採用した2年間の保証制度は、製品に対する自信と責任の表れだ。レース活動にも積極的で、鈴鹿8耐や全日本レベルのレースでの使用実績を持つ。