“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson15/キャンバーターン

掲載日:2011年03月25日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

お断りとお知らせ

○この内容は、平成22年7月に撮影したものです。

○取材協力いただいた千葉県警察本部交通部交通機動隊は、平成23年東北地方太平洋沖地震発生に伴う広域緊急援助隊として活動しています。

Lesson15/キャンバーターン
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson15/キャンバーターン

V字バランスが
斜面走破のキモ

勾配のついた登り坂でターンする難易度の高い技。「ボクには関係ないし…」と思っては損! これはトライアルだけのものではものでなく、実は一般公道でとても役立つテクニックなのだ。たとえば上り坂でのUターン。操作系はもちろん、重心移動と体の使い方を知ることで、勾配がある場所でも安全・確実なターンができるようになるはずだ。

 

キャンバーとは傾斜のこと。トライアルで言うキャンバーターンとは登り斜面でのターンするテクニックのことだ。ちなみに下り斜面で行う場合はオフキャンバーターンとなる。いずれにしても非常に高度なスキルが要求され、オフロード走行におけるバランス感覚を磨くにはもってこいの技である。キャンバーターンはオンロードにも応用できる。特に有効なのは傾斜地でのUターンなど。ビッグバイクでのUターンはただでさえ難しいが、これに傾斜が加わると難易度は高くなる。ことさら上り坂では路面が遠くなり、足が着きにくくなるため失敗しやすく、恐怖感も倍増するはずだ。でも、キャンバーターンのコツをつかんでしまえば、傾斜地でのUターンも恐るに足らずだ。

 

「トライアルでは地形に合わせて3次元的にバイクを操る必要があります。特に登りや下りの中でバイクの方向を変えて行くキャンバーターンなどは、バイクへの荷重のかけ方や体の使い方がポイントになります。バイクを安全に乗りこなすためのバランス感覚を磨くためにもトライアルはとても効果的だと思います」という笹野巡査長は、自分でもトレーニング用にトライアル車を所有しているそうだ。

 

キャンバーターンは登り、ターン、下りの3つのプロセスから成り立っている。まず登りではスロットルをデリケートに開けつつ半クラッチでパワーを調整しながら、スタンディングポジションで前後輪にしっかり荷重をかけてタイヤのグリップ感を高める。ターンではある程度車体を倒し込む必要があるため、バンク角とのバランスを考えライダーは腰を山側にずらしたリーンアウト的なフォームをとることになる。このとき、上体は曲がりたい方向に向けつつ主にアウト側のステップに荷重するのがポイント。これにより、正面から見るとバイクとライダーとで「V字」のカタチを作るようにしてバランスをとっている様子が分かるはずだ。下りではやや腰を引いて後輪に荷重しつつリヤブレーキで速度を調整してやる。

 

V字バランスはバイクとライダーの重心を分散されることで低速でも安定して走破することができるのが特徴で、特にタイヤのグリップに頼れない、滑りやすい路面の場合などに有効である。とはいえ、いきなりは難しいので、最初は平地で8の字を描くところからトライしてみてほしい。

スロットルは一定で開けすぎず、半クラッチで速度を調整しながら登りのアプローチ。滑りやすい路面の場合は平地で勢いをつけて一気に登る方法もある。(模範走行/黒森昌也巡査)

前後輪にしっかり荷重

スロットルは一定で開けすぎず、半クラッチで速度を調整しながら登りのアプローチ。滑りやすい路面の場合は平地で勢いをつけて一気に登る方法もある。(模範走行/黒森昌也巡査)

ターンするために車体を谷側に傾けるが、腰は山側にずらしたリーンアウト的なフォームになる。正面から見るとバイクとライダーはV字に開いたカタチでバランスをキープ。

V字バランスでターン

ターンするために車体を谷側に傾けるが、腰は山側にずらしたリーンアウト的なフォームになる。正面から見るとバイクとライダーはV字に開いたカタチでバランスをキープ。

上体は曲がりたい方向に向けていくのがポイント。前輪と同じ方向と考えていい。タイヤのエッジを路面に食い付かせるイメージで、外足でステップに荷重していく。

上体を向けて外足荷重

上体は曲がりたい方向に向けていくのがポイント。前輪と同じ方向と考えていい。タイヤのエッジを路面に食い付かせるイメージで、外足でステップに荷重していく。

下りでは腰をやや引き加減にして後輪に荷重しつつ、リヤブレーキ主体で速度をコントロールする。急斜面などでは後輪はロックさせたままフロントブレーキで減速する場合もある。

リヤブレーキで速度調整

下りでは腰をやや引き加減にして後輪に荷重しつつ、リヤブレーキ主体で速度をコントロールする。急斜面などでは後輪はロックさせたままフロントブレーキで減速する場合もある。

上体を常に曲がりたい方向に向けていくことでバイクの動きにスムーズに追従できる。両肩を結ぶラインをハンドルと並行にし上体が前輪と同じ方向へ向くようにする。

上体の向きはハンドルと並行

上体を常に曲がりたい方向に向けていくことでバイクの動きにスムーズに追従できる。両肩を結ぶラインをハンドルと並行にし上体が前輪と同じ方向へ向くようにする。

ターン中にリーンアウトフォームをとったときに上体が外側後方に逃げてしまう悪い例。前輪荷重も抜けやすく、イン側の腕が突っ張るとセルフステアを妨げて曲がりずらい。

上体が逃げると曲がれない

ターン中にリーンアウトフォームをとったときに上体が外側後方に逃げてしまう悪い例。前輪荷重も抜けやすく、イン側の腕が突っ張るとセルフステアを妨げて曲がりずらい。

スタンディングではイン側の爪先を前輪が進む方向へ向けるのがキモ。上体だけでなく腰から爪先まで体全体を曲がりたい方向へ向けているのが分かるだろう。

爪先を曲がりたい方向に

スタンディングではイン側の爪先を前輪が進む方向へ向けるのがキモ。上体だけでなく腰から爪先まで体全体を曲がりたい方向へ向けているのが分かるだろう。

最初は平坦な路面を選んで、低速で8の字を描く練習をするといい。スロットルは一定で半クラとリヤブレーキで速度を調整しつつ、体重移動とステップ荷重でバランスをとる。

まずは平地でトレーニング

最初は平坦な路面を選んで、低速で8の字を描く練習をするといい。スロットルは一定で半クラとリヤブレーキで速度を調整しつつ、体重移動とステップ荷重でバランスをとる。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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