“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson14/ガレ場

掲載日:2011年03月18日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson14/ガレ場
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson14/ガレ場

“地味な走り”が
成功のヒケツ

白バイが任務を行う場所は舗装されたアスファルトだけとは限らない。必要とあらば、大きな石がゴロゴロとあるような荒地にも分け入らなければならないことも。こうしたガレ場は勢いで走破しようとしないこと。一定のスロットルとクラッチ操作、そして乗り手が体全体をサスペンションのように使って衝撃を吸収するようにしたい。

 

白バイ隊員はオフロードでの訓練にもオンロードと同じぐらいの時間を割いている。白バイの任務では不整地を走ることを想定していることも理由だが、それ以前にバイクという乗り物の基本特性を知り、バランス感覚を養うためのトレーニングとしてオフロードは有効だからだ。

 

特に大きな石が転がっていたり岩が露出しているようなガレ場では、バイクの姿勢を安定させるための微妙なスロットルワークとバランス感覚が重要になる。

 

「路面の不安定なガレ場ではスタンディングが基本になります。ある程度バイクに身を任せるつもりで上体の力を抜きつつヒザと肘を軽く曲げて、体全体で路面からのショックを柔らかく吸収するようにしてみてください。スロットルも煽ったり閉じたりせず、なるべく一定速度のままグリップ走法で“タイヤを転がしていく”イメージを持つといいでしょう」と笹野巡査長。

 

バイクには加速すると安定を取り戻す性質があるが、ガレ場で無闇にスロットルを開けると石を飛び散らせるだけでなく、滑りやすい石に乗ってかえってバランスを崩しやすい。基本的にはスロットル一定のまま、半クラとリヤブレーキを穏やかに使って速度をコントロールするイメージだ。止まらないことも大事。足場が悪い場所や登り坂などでは、一度ストップしてしまうと再スタートが難しい上に、転がる石に足をとられてケガをするリスクも高まる。

 

また、タイヤのグリップが期待できないガレ場では、バイクをなるべく寝かさずに曲がることもポイント。車体は立てたままハンドルを切って曲がることになるが、その際はハンドル操作とステップワークでバランスをとる。この場合、若干リーンアウト気味に上体をアウト側へ移動しつつ外足荷重にするとバランスをとりやすいはず。ハンドルが取られそうな激しいガレ場では直線的に走って、比較的路面コンディションのいい場所で方向転換するのが賢い方法だ。まずは自分でも自信が持てる簡単なコースで、無理のない範囲で練習してみてほしい。

肘とヒザを軽く曲げて路面からの衝撃を吸収する。前輪が大きな石などに乗りあげる瞬間なども同様。一瞬、サスペンションの荷重を抜くことで安定性をキープしやすい。(模範走行/黒森昌也巡査)

肘とヒザでショックを吸収

肘とヒザを軽く曲げて路面からの衝撃を吸収する。前輪が大きな石などに乗りあげる瞬間なども同様。一瞬、サスペンションの荷重を抜くことで安定性をキープしやすい。(模範走行/黒森昌也巡査)

滑りやすい路面で上写真のように抜重すると逆効果。ハンドルやステップに体重を乗せたほうがグリップを得やすい場合もある。実際は荷重と抜重を繰り返しながら走破する。

ステップにしっかり荷重する

滑りやすい路面で上写真のように抜重すると逆効果。ハンドルやステップに体重を乗せたほうがグリップを得やすい場合もある。実際は荷重と抜重を繰り返しながら走破する。

スロットル操作はスムーズかつなるべく開度を一定にキープするのがポイント。平地であれば回転数はアイドリング+α程度で十分。フロントブレーキは基本的に使わない。

コンスタントスロットルを意識

スロットル操作はスムーズかつなるべく開度を一定にキープするのがポイント。平地であれば回転数はアイドリング+α程度で十分。フロントブレーキは基本的に使わない。

エンジンパワーは主にクラッチで調整する。スロットルで行うとギクシャクしてバランスを崩しやすい。速度が出すぎたらリヤブレーキを穏やかに使う。オフ車なら指一本でオーケー。

半クラでパワーをコントロール

エンジンパワーは主にクラッチで調整する。スロットルで行うとギクシャクしてバランスを崩しやすい。速度が出すぎたらリヤブレーキを穏やかに使う。オフ車なら指一本でオーケー。

登りではステップを踏ん張ってリヤサスを沈み込ませることで、後輪に荷重がかかりグリップしやすくなる。スロットル開けて勢いで登るのではなく、あくまでもトラクション重視だ。

登りは後輪のトラクション重視

登りではステップを踏ん張ってリヤサスを沈み込ませることで、後輪に荷重がかかりグリップしやすくなる。スロットル開けて勢いで登るのではなく、あくまでもトラクション重視だ。

勾配にもよるが急な下りはリヤブレーキだけでは止め切れないため、フロントブレーキも積極的に使っていく。ただしロックしたら緩めてバランスを回復。腰を引いて後輪荷重も稼ぐ。

下りはフロントブレーキがメイン

勾配にもよるが急な下りはリヤブレーキだけでは止め切れないため、フロントブレーキも積極的に使っていく。ただしロックしたら緩めてバランスを回復。腰を引いて後輪荷重も稼ぐ。

ガレ場で曲がりたいときはなるべく路面状態が良い場所を選んで、車体を立てたままハンドルを切って曲がるようにする。極低速ではリーンアウト+外足荷重が効果的。

車体を立ててハンドルを切る

ガレ場で曲がりたいときはなるべく路面状態が良い場所を選んで、車体を立てたままハンドルを切って曲がるようにする。極低速ではリーンアウト+外足荷重が効果的。

ガレ場では直線でも石でタイヤが滑ったりしてバランスを崩しやすい。車体は垂直に保ったまま、腰ごと左右に移動してステップ荷重によってバランス回復を図るのがコツ。

左右への移動でバランスをとる

ガレ場では直線でも石でタイヤが滑ったりしてバランスを崩しやすい。車体は垂直に保ったまま、腰ごと左右に移動してステップ荷重によってバランス回復を図るのがコツ。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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