“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson7/オフロードコーナリング

掲載日:2010年11月05日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson7/オフロードコーナリング
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson7/オフロードコーナリング

「グリップ走法」と「スライド走法」
両方使いこなせれば言うことなし

写真のスタンディングスタイルは重心位置を高くでき、ヒザで衝撃を吸収できるなど荒れた路面などでは有利だが、今年からマシンがトレール車になりシッティング主体になってきた。いずれにしても、オフロードコーナリングでは滑りに対応した外足荷重がポイントである。

 

白バイ隊員は日頃からトレーニングにオフロード走行を取り入れている。公道で取締りを行う白バイに何故オフロードの技術が必要なのか疑問に思うかもしれないが、実はバランス感覚を養う上で非常に有効なのだ。通常時においては白バイ隊員もアスファルト上を走ることがほとんどだが、災害救助の現場や悪質な逃走犯を追跡する場合、不整地に入り込まなくてはならないケースも出てくる。また、雨天や冬場の凍結などで滑りやすい路面に遭遇する場合も少なくない。これは一般ライダーとて同じことだ。そういった状況下においても、常に冷静さを保って安全なライディングを続けられるスキルを身につけたいものだ。

 

さて、オフロード走行のトレーニング種目だが、白バイ大会に準じて「トライアル」と「不整地走行」の2つがある。前者は障害物やガレ場などの難しいセクションをいかに転倒やコースアウトなどのミスをすることなく走破する技術であるのに対し、後者は滑りやすいダート路面でいかにバイクをコントロールするかが問われる。今回のテーマであるコーナリングについて、千葉県警の佐藤巡査長にそのポイントをうかがった。

 

「オフロードは路面のグリップが低く滑りやすいため、ブレーキやクラッチ、スロットルなどすべての操作を丁寧かつスムーズに行う必要があります。また、限界が低い分、安全にスライドコントロールなどの技術を学ぶことができます。土の上なら転んでもダメージは少ないですし、バイクも白バイに比べるとずいぶん軽量なので、思い切ったトライができる点もいいですね」

 

事実、最近のハイパフォーマンスモデルの中にはちょっと油断すれば簡単に後輪スライドしてしまうものもある。オフロードで培ったバランス感覚が生かされるのは、むしろ普段のオンロードのほうかもしれない。

 

技術的なことは下の写真を見てほしいが、白バイ大会でも今年から使用するマシンがトライアル車のTLMからトレール車のXR230に代替えされたことでテクニックにも若干の違いが出てきているという。ライディングフォームが従来のスタンディングからシッティング中心になったこともその一例。走り方も大きく分けて「スライド走法」と「グリップ走法」がある。それぞれにメリットがあるので両方とも習得できればベスト。ライディングの幅もより大きく広がるはずだ。

硬くしまったダート、あるいは逆にヌタヌタの泥濘路には後輪を滑らせないグリップ走法が有利。進入ではフロントブレーキを中心にしっかりと減速する。(模範走行/黒森昌也巡査長)

グリップ走法

硬くしまったダート、あるいは逆にヌタヌタの泥濘路には後輪を滑らせないグリップ走法が有利。進入ではフロントブレーキを中心にしっかりと減速する。(模範走行/黒森昌也巡査長)

極端なリーンアウトはせず上体をバイクの中心に置いたままスムーズに倒し込み。スロットルは一定に開けている。上体の向きはハンドルと並行になっている。

リーンウィズで穏やかに倒し込み

極端なリーンアウトはせず上体をバイクの中心に置いたままスムーズに倒し込み。スロットルは一定に開けている。上体の向きはハンドルと並行になっている。

コーナリング中も内足は極力を出さない。後輪のスライドは最小限なので効率的にパワーを伝えられる。シートにしっかり荷重。前輪と後輪の軌道はほとんど同じだ。

内足は出さずスライドさせない

コーナリング中も内足は極力出さない。後輪のスライドは最小限なので効率的にパワーを伝えられる。シートにしっかり荷重。前輪と後輪の軌道はほとんど同じだ。

ややシート後方に座りつつしっかり荷重をかけてサスペンションを沈み込ませて後輪グリップを稼ぐ。車体を立てて早い段階で加速体勢に持ち込めるなど、地味だが確実なライディングスタイルだ。

後輪トラクション重視で立ち上がり

ややシート後方に座りつつしっかり荷重をかけてサスペンションを沈み込ませて後輪グリップを稼ぐ。車体を立てて早い段階で加速体勢に持ち込めるなど、地味だが確実なライディングスタイルだ。

フカフカのダートや車輪が埋まりそうな砂地などでは有利なスライド走法。リヤブレーキ中心で減速しつつ、後輪を滑らせながらそのままブレーキターンに持ち込む。(模範走行/佐藤一路巡査長)

スライド走法

フカフカのダートや車輪が埋まりそうな砂地などでは有利なスライド走法。リヤブレーキ中心で減速しつつ、後輪を滑らせながらそのままブレーキターンに持ち込む。(模範走行/佐藤一路巡査長)

スライドに対応して上体は常にバイクの外側にセットしたリーンアウトフォームが基本。倒し込みと同時にスロットルを当ててパワースライドに持ち込む。

リーンアウトでクイックに倒し込み

スライドに対応して上体は常にバイクの外側にセットしたリーンアウトフォームが基本。倒し込みと同時にスロットルを当ててパワースライドに持ち込む。

コーナリング中は内足をイン側斜め前に出してバランスをとりつつ大きなスライドに備える。スロットルを開けながら半クラで滑りをコントロール。後輪は大きく振り出される。

パワースライドで向き変え

コーナリング中は内足をイン側斜め前に出してバランスをとりつつ大きなスライドに備える。スロットルを開けながら半クラで滑りをコントロール。後輪は大きく振り出される。

スロットルを開けることでリヤを沈ませ、後輪で路面を削りながら加速。車体が多少暴れてもパワーで立て直すなど、一見派手でカッコいいライディングだが疲れやすく、意外とタイム差は出ない。

スロットル全開で立ち上がり

スロットルを開けることでリヤを沈ませ、後輪で路面を削りながら加速。車体が多少暴れてもパワーで立て直すなど、一見派手でカッコいいライディングだが疲れやすく、意外とタイム差は出ない。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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