“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson6/8の字ターン

掲載日:2010年10月29日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson6/8の字ターン
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson6/8の字ターン

走る・曲がる・止まるを
スムーズにつないでいこう

白バイ隊員が行う「8の字」はかなりハイスピードである。強烈な減速を必要とするため前後ブレーキをフルに使っていくがその加減がポイントとなる。滑りやすい路面にも役立つスロットルと前後ブレーキの連携操作のコツを身につけるには最適なトレーニングでもあるのだ。

 

8の字走行は白バイ隊員の運転技術の高さがよく分かる種目だ。白バイ大会の8の字コースは直線部分が長い独特なレイアウトになっていて、フル加速からのフル減速、フルステアでの旋回から全開での立ち上がり……というように、バイクの持つ「走る」「曲がる」「止まる」の基本性能を限界ギリギリのところで引き出す、非常に見ごたえのある種目なのだ。

 

「バイクをスムーズに乗りこなすために必要なことは丁寧な操作です。白バイ大会などの競技会ではタイムアタックになるため、かなりアグレッシブな走りをしていると思われがちですが、実際のところはいかにスムーズかつ正確にそれぞれの操作をつないでいくかがポイントになります。荒っぽい操作は結局のところタイムロスや転倒につながります。特に公道では危険に直結しますので、丁寧な操作で安全運転を心掛けてください」と語る笹野巡査長だが、実際の走りを見ていても操作や動作にムダがなくウルトラスムーズ。全身の力が抜けていて楽に走っているようだが、それでいて速い。まさにすべてのライダーのお手本となる走りである。

 

8の字走行では一連の操作を流れるようにつないでいくのがキモ。ブレーキングでは前後ブレーキをバランスよく使って減速していくが、直線だけでなく倒し込みながらもフロントブレーキを引きずりながら速度をコントロールしている。コーナー前半部分までを減速区間としているのだ。そのためにはフロントブレーキの繊細なリリースコントロールが必要で、バンク角が深まるにつれてブレーキを緩めていく絶妙な感覚を身につけなくてはならない。

 

コーナー後半ではリヤブレーキが主役になる。フロントブレーキを完全にリリースすると前輪が切れてガクッと曲がるため、そこでスロットルを開けながら同時にリヤブレーキでパワーを抑えながら後半のターンを曲がっていく。そして車体が直線に向いたらスロットル全開で立ちあがるが、まだ車体は寝ているためリヤブレーキを最後まで残しておく。ちなみに半クラはパワーが不安定になるため使わない。また、上体のリラックスや目線を曲げたい方向に積極的に向けていくことも大事なポイントだ。

 

このように、8の字走行にはいくつもの操作を同時こなす高いスキルが求められるが、習得できれば運転技術も格段に上達するはず。下の写真を参考に全体の流れをイメージしてもらえればと思う。

白バイが訓練で行う8の字は走路がマーカーで規制されているのが特徴。コーナー入口では前後ブレーキをフルに使いつつ車体を傾けながら進入していく。

ブレーキングしつつ進入

白バイが訓練で行う8の字は走路がマーカーで規制されているのが特徴。コーナー入口では前後ブレーキをフルに使いつつ車体を傾けながら進入していく。

フロントブレーキを緩めつつ進入速度を調整しながら倒し込み。リヤブレーキはコーナーの最後まで踏みっぱなし。すでに目線はコーナー出口のほうに向いている。

フロントを緩めつつ倒し込み

フロントブレーキを緩めつつ進入速度を調整しながら倒し込み。リヤブレーキはコーナーの最後まで踏みっぱなし。すでに目線はコーナー出口のほうに向いている。

リヤブレーキでパワーを抑えつつスロットルを開け始める。バンク角がこれ以上深まらないようにコーナー後半はハンドルを切って曲げていく。

舵角をつけてリヤ中心に旋回

リヤブレーキでパワーを抑えつつスロットルを開け始める。バンク角がこれ以上深まらないようにコーナー後半はハンドルを切って曲げていく。

前輪がコーナー出口に向いたら車体を起こしつつスロットル全開で立ち上がる。スライドを抑えるためにまだリヤブレーキを踏んでいる。上体は常にリラックス。

スロットル全開で立ち上がり

前輪がコーナー出口に向いたら車体を起こしつつスロットル全開で立ち上がる。スライドを抑えるためにまだリヤブレーキを踏んでいる。上体は常にリラックス。

8の字のようなタイトターンで小さく曲がるためには目線は特に大事。旋回中は基本的に顔ごと90度ぐらい先に向けるイメージでちょうどいい。同時に上体も向けていく。

目線は90度先に向ける

8の字のようなタイトターンで小さく曲がるためには目線は特に大事。旋回中は基本的に顔ごと90度ぐらい先に向けるイメージでちょうどいい。同時に上体も向けていく。

進入ではフロントブレーキ主体に減速していくが、倒し込みながらかなりコーナーの奥までブレーキレバーには指がかかっている。微妙な入力コントロールが大事。

フロントブレーキで減速

進入ではフロントブレーキ主体に減速していくが、倒し込みながらかなりコーナーの奥までブレーキレバーには指がかかっている。微妙な入力コントロールが大事。

旋回中はリヤブレーキをほぼ最後まで踏みっぱなしの状態。そのまま前半はフロントブレーキで減速、後半はスロットルで加速へとスムーズに移行していくのがキモ。

リヤブレーキでパワー制御

旋回中はリヤブレーキをほぼ最後まで踏みっぱなしの状態。そのまま前半はフロントブレーキで減速、後半はスロットルで加速へとスムーズに移行していくのがキモ。

低速コーナーで舵角をつけて曲がるときほど内輪差が生まれる。後輪の軌跡は前輪に比べてだいぶイン側を通るため、その差を意識して前輪のラインを決める。

内輪差を考えたライン取り

低速コーナーで舵角をつけて曲がるときほど内輪差が生まれる。後輪の軌跡は前輪に比べてだいぶイン側を通るため、その差を意識して前輪のラインを決める。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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