掲載日:2019年08月02日 レトロバイク・グラフティ
イラスト・文/藤原かんいち
1980年代前半、日本の原付バイク界はハイパワー、イケイケゴーゴーの時代だった。とにかく早いバイクが一番カッコイイ。ライバルよりも0.1馬力でもパワーのあるバイクに乗りたい、そんな若者たちのエネルギーが充満していた。
そういう僕も実は、カタログに載っているスペックの数値を見ながらバイクの勝敗を友人と熱く語り合う、若者のひとりであった(笑)。
そんなイケイケ時代の頂点を、ある意味極めた原付スクーターがホンダのビートだ。まず見た目が独創的。フロントがまるで車のような流線形で、さらにヘッドライトが左右に付くデュアルハロゲンヘッドライト。スタイリングとしては頭でっかち、それがカッコいいのか悪いのか、感覚がマヒしていた当時の僕はよくわからなかった。
もちろん最大出力の上限7.2馬力を誇っていたビートだが、そのパワーを最大限に発揮するためにV-TACS(可変トルク増幅排気システム)と呼ばれる排気デバイスを装着していた。これは、低速域と高速域でチャンバーをそれぞれ適したものにフットペダルを踏んで切り替えるという、かなりアナログなシステムだった。そんな操作さえ当時はカッコよかったのだろう、多分(笑)。
ところが、ビートはホンダが初めて作った世界初の水冷2スト単気筒マシンだというのにあまり人気が出なかった。当時のスクーターに乗るユーザーが求めている世界感がズレていたのだろう。メーカーとユーザーはお互いに熱い思いを持っているのに、こんな風にすれ違うことがある、それはどこか恋愛に似ている気がする。
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