掲載日:2009年09月25日 ノスタルジックバイクス
少し目を離せばまるで冗談のように姿を変えていく街並みや世情こそが正しいのか。世間も人も仕事もこちらを見つける度に「お前も変わらなくてはいけない」と指差すが、そうやって変化だけを追い求めていくことだけが正解だとは思えない。何をどこまで変えるかも語らないままに、お題目だけ唱えたってどうしようもないだろう。それ以前に、変わらないからこそ見つけられる大切なことだってある。そんなことも分からずに、上ッ面だけの変革でしたり顔をする連中を見飽きたから、少し離れてしまえと私は旅に出ることにした。
着古したジャケットに袖を通した私が火を入れるのは、V7クラシック。モトグッツィ栄光の時代を懐かしむスタイルは“ネオクラシック”と言われるかもしれないが、ゆっくりと鼓動を刻む心臓は、ずっと昔から原点を変えていない。30年という月日をかけてゆっくりと歩んできた縦置きのツインエンジンは、“今”を必要なだけ取り入れはするが、決して変わらない“芯”を持っている。目の前に広がる風景も、きっと同じだ。変わらないではなく、変えない。連綿と受け継がれていく小気味良い鼓動に身を任せながら、走り続けていく。
V7クラシックは、決して高性能なバイクではないだろう。けれども、グッツィのエンジニア達が守ってきたこの2気筒エンジンが生み出す世界は唯一無二。現代の変革を重ねたものに比べれば、遅く、重く、無骨かもしれないが、だからこそ生み出せる鼓動と走りが存在する。変わらないわけではない。もちろん、変われないなんてことも無い。無限の選択肢がある中で、変わらないことを選んだからこそ、このバイクが存在する。「くだらない」と他人は笑うかもしれないが、私はそれを大切にする1台と、走り続けていきたい。
Text and Photo/Daisuke Murayama
変わらない風景を求めてどこまでもグッツィを走らせる。
大切なことを変えず、必要なことを変えてきたからこのエンジンがある。
たおやかな鼓動に揺られながら、次はどこまで走っていこうか。
モトグッツィ V7クラシック
MOTO GUZZI V7 CLASSIC
■エンジン = 空冷90°V型2気筒744cc
■最高出力 = 35.5kw/6,800rpm
■最大トルク = 54.7Nm/3,600rpm
■価格 = 126万000円(税込)
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