
掲載日:2010年09月14日 オフロードライテク講座 › オフ走行の基礎テクニック
Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。
クラモチ「三橋さん、なんとこの G RIDE が今回で最終回になってしまったんです!」
これまで当企画の生徒役として三橋さんにオフロードの走り方を教えてもらってきたクラモチは、がっくり肩を落としながら三橋さんにそう伝えた。
三橋「来るときが来た、って感じだね。でも G RIDE の企画がなくなったからといって、Gについての考え方が変わるわけじゃないでしょ。そういえば、クラモチ君も初めて会ったときはまるで走れない生徒だったけど(笑)、今ではすっかりGを意識した走り方を実践してるよね」
クラモチ「はい、走る場所が変わっても、Gについての考え方を応用させると、自分でも意外と簡単にクリア出来ちゃったりして。だから今ではバイクでいろんなところを走るのが楽しくて仕方ありません!」
三橋「それはね、クラモチくんがGを積極的にコントロールすることで、ドンドン走りの幅を広げているってことなんだよ。」
クラモチ「!!!」
クラモチがハッとしたのは、それが、三橋さんが G RIDE について語るときにいつも口にしていた言葉だったからだ。
三橋「じゃあ今回は最終回らしく、これまで学んできたことをおさらいしながら走ることにしようか」
平地でも、フロントブレーキを強くかけたりアクセルを急閉することで、自らフロントにGをかけることが出来る。するとシチュエーションに合わせた効果的なフロントアップが出来るようになる。
ということで、場所を移動したふたり。見晴らしのいい場所にあるギャップをバンクコーナーに見立て、さっそく三橋さんはマシンを倒し込んでコーナリングをキメてみせた。
クラモチ「今のはアクセルを開けてリアタイヤにGをかけているんですね。イン側に倒れ込もうとするマシンを、アクセルを開けることでバランスを取ってたりもするんじゃないですか?」
三橋「よくわかっているね。今のコーナリングはバランスを取りながら、壁の方に向かってヨコのGをかけて走っていたんだ。Gの働きさえ理解していれば、同じ場所でフローティングターンすることも可能だよ」
アクセルを開けるとリアにGがかかって、タイヤが路面にグリップしやすくなる。逆に、アクセルを閉じるとマシンにGがかからなくなって不安定になる。これまでの G RIDE で何度となく登場したGのテクニックだ。
三橋「さっきはコーナーを使ったヨコのGの話だったよね。次はここでタテのGの話をしよう」
そこはなだらかな短い上り斜面の先に高さ約50cmの段差がある場所。
まず三橋さんは、段差に向かってまっすぐにアプローチし、斜面手前でアクセルを開けながらフロントタイヤを斜面にぶつけてフロントフォークを縮めていった。リアタイヤが斜面にぶつかったところでアクセルを戻し、ヒザで抜重しながらスマートに段差を乗り越えた。
三橋「アクセルワークでバイクの加速する力をコントロール出来れば、地形と組み合わせていろいろなことが出来るんだ。タテのGを利用して遊べることってたくさんあるんだよ」
すると三橋さんは、同じ段差を今度は斜めからアプローチし、コーナリングとまったく同じ体勢のままサスを縮めていった。次の瞬間、横っ飛びしながらコーナーを曲がってきた三橋さんの姿が!
クラモチ「今のはナニをしたんですか!?」
三橋「さっきと同じことをコーナーでやっているだけなんだよ。バイクを寝かせたまま斜面にタイヤをぶつけてサスを縮めているんだ。斜面の前半から寝かせた状態でアクセルを開けていく必要があるから少し慣れが必要かもしれないね」
クラモチ「そうすると、コーナー出口から跳び出して出てこられるわけですか。でもこれって、なんのためにやるんですか? どんなときに使えるテクニックなんですか?」
三橋「なんのためか、っていうより、ただ単におもしろいからやってるだけだよ(笑)。そうだなあ、コーナーの先にミゾがあるときなんかは有効かもしれないけどね。」
コーナー入り口に向かってスタンディングポジションで勢いよく進入。
バイクを安定して走らせるためには、タイヤと路面が垂直になっていることが望ましい。そこで、せりあがる壁と垂直の関係となるようにマシンを寝かせる必要がある。アクセルを閉じてもコーナー手前の勢いが残っているのでマシンは不安定にならない。
勢いがなくなってくると、傾けたマシンが一気に内側に倒れてきてしまうので、アクセルを開けてマシンを起こす動きを加えてやる。
コーナー後半はアクセルを開けていく。マシンが傾いた状態なのでリアタイヤがスライドし始めるが、ライダーがGを加えることでマシンが前に進もうとする力も得られる。
コーナー脱出。
バンクの斜面と正対してアクセルを開ける。斜面で縮んだフロントサスが伸びてくるタイミングに合わせて、尻をシートに押しつけるようにリア荷重。
フロントタイヤは地面に足を着いていたイン側方向へと斜めに浮いてくる。再度アクセルを開け、イン側へ倒れ込む力と前にマシンを進めようとする力のあいだを探りながらバランスをとる。
マシンの向きが変わったら、フロントタイヤが地面に落ちる前にシートをまたいで乗車。
斜面手前からアクセルを開けて、フロントタイヤが斜面にグイッと押しつけられるとフロントフォークが縮む。マシンを加速させるGがフロントタイヤを斜面に押しつける力を決定させている。
フロントタイヤが段差を越えたあともアクセルを開け続け、リアタイヤが斜面をグリップして上り始めたところ。
リアタイヤが跳ね上がってくるのにそなえて、ヒザを曲げて抜重している。直前の写真と見比べてみればライダーの意思がよく伝わってくる。
しんなりと段差の上に着地。バイクの動きをいかに意識出来ているかでライディングの可能性は大きく変化する。
なにも角度のきつい斜面でなくてもサスを縮ませることはできる。やるべきことは段差越えのときと同じ。ギャップに向かってマシンがもっとも加速するようにアクセルを操作すればサスが縮み、そのままアクセルを開けてリアにGをかけ続ければフロントアップする。
段差越えと同じ斜面を、今度は正面からではなく斜めからアプローチ。乗り越える段差としてではなく、バンクするための壁に見立てている。まずは斜面に入る手前からアクセルを開ける。マシンを寝かせている状態のまま壁にぶつかった前後サスが縮む。次にサスが伸び上がってくるが、コーナリングの体勢なので、そのまま斜面から進行方向へ飛び出すことになる。斜面の前半からマシンを寝かせてアクセルを開けていくこと、これが横っ飛びターンのポイントだ。
2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。
GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。
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