
掲載日:2010年08月10日 オフロードライテク講座 › オフ走行の基礎テクニック
Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。
マディ路面の深いワダチや雨水にえぐられてできたミゾは、コースだけでなく林道でも遭遇するシチュエーションだ。そうしたワダチやミゾは、スタックしないライン取りをするのがイチバンだけど、それが出来ていれば悩まないというもの。
では、どうすれば悩みが減るか? こうしたシチュエーションがやっかいなのは、スタックして身動きが取れなくなり、リカバリーに手間取って体力を消耗してしまうことだ。だから、体力を消耗しない効率的なリカバリー方法を身につけることが解決策となる。
クラモチ「そんな便利なリカバリー方法があるんですか?」
三橋「ワダチやギャップでスタックしてしまったら、ラインを変えることで脱出するんだ。ワダチを切るなんて言ったりもするよね。それにはフロントタイヤをワダチやギャップから抜け出させる必要がある。そのためにはフロントアップ出来ることが大前提になるけれど、逆にそれさえ出来れば誰でも簡単にリカバリー出来るんだ。今回はコース脇の壁をワダチやギャップの壁に見立てて、ラインを変える練習をしてみよう」
ということで挑戦したクラモチだが、フロントアップ出来てもマシンの向きを変えられなかったり、せっかくマシンの向きを変えられてもマシンを放り投げる感じになってしまったりと、スムーズにリカバリー出来ない。
クラモチ「フロントアップしてから向きを変えようとしているのですが、どうも上手くいかなんですよ」
三橋「向きを変える意識はそんなに必要じゃないんだよ」
進めなくなってしまったワダチはラインを変えて脱出する。道幅が狭くて向きを変えられなくても、フロントタイヤを引き出せばリカバリーし易くなる、ということを覚えておこう。
フロントタイヤをワダチやギャップから抜くことが出来ればいいので、高々とフロントアップする必要はない。またバイクの向きも必ず90度以上変えるのではない。スタックしてしまったワダチやギャップから脱出するための方法なので、必要な高さで必要な向きだけ変える。これがテーマとなるのを忘れずに。
クラモチ「え!? そうなんですか。う~ん、どうすればいいんだろう…」
三橋「悩まなくても大丈夫。コツも本当に簡単だから」
コツは右足を着いている位置。この右足を着いた位置の違いだけで、その後のバイクの動きが変わってしまうのだ。
三橋「今回は、壁側の足(この場合は右足)だけを着くことと、その足を着く位置がポイントなんだ。足は真下に下ろした位置ではなく、やや開くようにして壁に着くようにするんだ。こうすることでバイクが少し右側に傾いた状態になる。そこからフロントアップしていくと、バイクは足を着いたほうに自然と傾いていくんだ。あとは向きを変えたい方向へ目線を送ってやれば、スムーズにバイクの向きを変えることが出来る。だから向きを変えようという意識は持たなくても大丈夫なんだよ」
クラモチ「なるほど。両足を着いてしまうとバイクは直立するから、向きを変えにくくなってしまうというのか」
三橋「今回は壁の高さが少しあるから、バイクの向きが変わってもアクセルを開け続けて、リアタイヤをしっかりグリップさせてバイクを前進させてやろう。そうしてリアタイヤも壁を乗り越えたらリカバリー完了」
クラモチ「足を着く位置でこんなに変わるとは思いませんでした。クロスカントリー・ライディングって奥が深くて楽しいものですねぇ。」
クラモチのダメダメな例 ①
斜めにフロントアップするのは難しいので、まず真っすぐフロントアップして、それからバイクの向きを変えようとしていたクラモチ。フロントアップの高さは十分で、あとはバイクの向きを変えればOKという段階まで来ている。しかし、体を使って方向転換しようとしているのだが、ほとんど向きは変わっていない。じつはこの失敗例と三橋さんの成功例との違いは、ごくわずかなのだ。逆に、そのわずかの差が大きなポイントになっている
クラモチのダメダメな例 ②
こちらもフロントアップの高さは十分で、しかもバイクの向きも大きく変えられている。それでも体が遅れてしまい、バイクを放り投げるような形になってしまっている。これはバイクと一緒に体の向きを変えられなかったからだが、その原因となっているのが左足だ。左足を地面に着いているので、体の向きを変えることが出来なくなっている。両足を地面に着いてしまうと、フロントアップした際にバイクが真っすぐのままになりやすいということも覚えておこう。
フロントアップ出来なければこのリカバリー方法は使えないので、しっかりおさらいしておこう。フロントサスの反動を使い、トルクが立ち上がるエンジン回転に合わせ、クラッチを使ってエンジンパワーを引き出す。少し後ろに座ってリアサスにGをかける。
上体を使ってフロントサスを縮める。しかし、座る位置はシートのやや後ろめをキープしておこう。
フロントサスの反動に合わせて腰を引き、リアサスにGをかける。同時にアクセルを開けクラッチをつなぐ。
フロントを高く上げる必要はないので、スパッと上げられるタイミングとアクセル開度をつかんでいこう
バイクを傾けることで方向転換し易くなるのだが、あまり傾けすぎてしまうと今度はフロントアップしにくくなってしまう。そのバイクの大きさやライダーの体格によって足を着く位置は変わってくるが、目安としてほしいのはバイクの傾き具合。フロントアップと方向転換をし易く、リアサスにGをかけられるポジションに座り、バイクを少し傾けられる位置に壁側の足だけ着く。練習でベストな位置を見つけていこう。
壁側の足だけ着く。バイクが少し傾いているのに注目。
リアにGをかけてリアサスを縮め、アクセルを開けてクラッチをつなぐ。
リアタイヤが路面をグリップしているので、フロントがポンッと上がっている。しかもバイクを少し傾けていたので、すでに向きが変わり始めている。
向きを変えたい方へ目線を送っていく。
するとバイクはスムーズに方向転換する。
リアタイヤも壁を乗り越えるようにアクセルを開け続けていく。
リアタイヤをしっかりグリップさせて脱出。今回はコース脇の壁をワダチの壁に見立てたので、壁の高さがある。90度近くバイクの向きを変えているのは、直登できるラインを取ってリアタイヤが壁を乗り越え易くしているからだ。
リアにGをかけられるように、やや後ろに座る。猫背の姿勢をとり、リアサスを縮める。と同時にアクセルを開ける。
バイクが少し傾いているので、フロントアップと同時にバイクの向きが変わっている。向きを変えたいほうへ目線を送る。
リアタイヤを路面にしっかりとグリップさせて壁を上っていくために、バイクの向きが変わってもアクセルを開け続けていく。
ワダチやミゾの状態によって、バイクの向きをどれだけ変えればいいかが決まる。要はリカバリーし易い向きになればいい。
2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。
GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。
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