
掲載日:2009年11月04日 オフロードライテク講座 › オフ走行の基礎テクニック
Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。
コーナリング中にマシンが安定していれば、コーナリングスピードを速めていってもバランスをとることができるようになる。つまり、速いコーナリングが出来るということだ。最初はアクセル全閉でヨタヨタしていたクラモチだったが、アクセルを開けたまま走れるようになると、バイクを傾けていても安定感があるのがわかるようになってきた。
そうやってコーナリングスピードを上げられるようになると、コーナーへのアプローチも速くしたくなるのがオフロード・ライダーの性というもの。しかし、闇雲にコーナーに速くアプローチしても曲がりきれない、というのをクラモチは前回のG RIDEで体験している。
クラモチ「三橋さん、コーナリングが安定してきたので、アプローチスピードも速くしようと思うんです。コーナー手前で自分が曲がりきれるスピードまで落とせばいいんですからね。でも、スピードを出すと速く止まらなくちゃいけないと思うし、そうすると急ブレーキになってフロントがロックしちゃうんです。怖くてレバーを離すと今度はフロントサスがガクガクしちゃって…。せっかくコーナリングがわかってきたのに、またしてもスムーズに走れません。一体どうすればいいんですか?」
三橋「教えたこと以外にも考えるようになってきて、ようやく上手くなりたい気持ちが出てきたね。まず、なんで怖く感じるかを考えてみようよ」
クラモチ「うーん、ロックするのがこわいんだけど、どこでロックするかがわからないんです。だから、どれだけブレーキをかければいいのかもわかりません。スピードが速いからブレーキも一気にかけないと効かないと思うし」
三橋「速いコーナリング=速い進入ではないのと同じで、ハイスピード=一気にブレーキングではないんだ。バイクはフロントタイヤで止まるから、フロントタイヤのグリップ力をしっかり使えることが重要なんだよ。そして、フロントタイヤの使い方のカギが、ブレーキングになるんだ」
走行中にフロントブレーキをかけるとフロントサスが縮んでいくが、サスが縮むということは、タイヤにGがかかっているということだ。だからサスが縮んでいく動きを体感できれば、それはタイヤのグリップ状態を知ることにもなる。
G RIDE流ブレーキングはサスの縮ませ具合で路面のグリップ状態を確認しながら制動でき、転倒の危険が少ないのがメリット。その反面、制動距離は長くなる。路面状況がわかるモトクロスなどでは、ロック寸前まで一気にブレーキングすることで、制動距離を短くできるものの、ロックさせないシビアなコントロールが要求されるし、失敗すればタイヤのグリップを使い切った状態となり転倒の危険性も大きくなる。リスクを減らし確実性を重視するのがクロスカントリー・ライディングのセオリーだ。
タイヤが本来持っているグリップ力は、タイヤにGをかけることで十分に発揮することが出来る。それならばと、Gをかけ続けていっても、タイヤが持っている以上のグリップ力を引き出すことはできない。つまり、ロックする手前のGがかかっている状態が、タイヤがいちばんグリップ力を発揮する状態でもある。路面によって変わるロック寸前の状態を、どれだけはやくつかむことができるか? それがブレーキングの極意だ。それは走り込んで身につけるしかない!
三橋「フロントブレーキをかけるときに注意するのは、ブレーキはオンかオフのスイッチではないということ。制動距離を短くしようとして一気にブレーキを握るから、フロントサスもボトムしてロックする。で、ロックしてバランスが崩れそうになり、慌ててブレーキを離すとフロントサスが一気に伸びてくる。こうなるとフロントアップした状態と同じだよね。フロントタイヤが路面から離れてしまったら、いくらフロントブレーキをかけても止まれない。
だから、まずは一気に止まるという意識を捨てること。制動距離が長くなってもいいから、フロントサスをゆっくり縮めていって、フロントタイヤのグリップ力が増えていくのを体感して走みよう」
と、三橋さんのアドバイスを受けたクラモチ。ブレーキレバーをゆっくり握り込んでいるので、フロントサスもゆっくりと縮んでいる。いきなりロックさせて転倒しそうな雰囲気が、まったくなくなっている。
三橋「自分のやりやすいギアとスピードで構わないから、ブレーキレバーを握る量と、フロントサスがストロークする量をリンクさせていくんだ。滑りやすい路面とグリップする路面とでは、ロックするタイミングも変わってくるから、どこまでサスを縮められるか探りながら、ゆっくりとレバーを握っていくんだ。グリップ状態の分からない路面を走るときは、ゆっくりとレバーを握っていってタイヤのグリップ力を確認しながら走る。これがクロスカントリー・ライディングなんだ」
クラモチ「そっか。だからスピードが速くなったからといって、速く止まろうとしちゃダメなんですね。あとはいろいろな路面を走って、経験値を増やしていけばいいんですよね」
…クラモチの挑戦はまだまだ続く!
フロントタイヤがロックしたときは、フロントタイヤのグリップ力が無いのと等しい状態なので、路面をグリップすることができない。靴底がツルツルの革靴でスケートリンクに立っているようなもので、そんな状態で走ろうとすれば転けるのは必至だ。ロックするとハンドルが切れて転倒することが多いが、そんな不安定な状態では、転倒のきっかけが小さい石ころだったりするのも納得できるだろう。
フロントブレーキの使い方をマスターするため、リアブレーキは使わず、ハンドルを真っすぐにしてアプローチしてみる。ギア、スピードは自分のやりやすいところでOKだが、最初はゆっくりのほうがいい。
アクセルを戻し、ブレーキレバーをゆっくりと握っていく。するとフロントサスもゆっくりと縮んでいく。
フロントタイヤのグリップ状態を確認しつつ、フロントブレーキを握っていく。
ロックさせないようにフロントタイヤのグリップ状態を確認する。フロントサスが縮み、フロントタイヤがグリップしているのがよく分かる。ブレーキングの勢いで体が前のめりになるので、くるぶしグリップと手の平でハンドルグリップを押すようにして、体勢を安定させる。ハンドルグリップは握らず、指をフリーな状態にしておく。アクセルは親指と小指ではさむ感じにするといい。
バランスを崩すことなく安全に停止できた。
フロントタイヤが路面をグリップしていれば、そのままスタンディング・スティル状態になる。
ブレーキングは、フロントサスを縮めてフロントタイヤのグリップ力を増やし、そのフロントサスはブレーキレバーでコントロールする、ということを知ったクラモチ。練習を重ねることで、「スピードを出しても怖くない」と言えるほどになった。「次はリアブレーキの使い方ですかね?」と、ブレーキに対する執着にはフェティズムの匂いも漂う。
2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。
GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。
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