
掲載日:2009年03月11日 オフロードライテク講座 › オフ走行の基礎テクニック
Gとは重力加速度(gravity)の略称。ここでは「スピードレンジを問わずに感じられる荷重の変化」のことを指す。「このGをライダーが積極的にコントロールすることで、オフロードバイクの楽しさは広がっていく」とは三橋選手のお言葉。オフロードライディングをより楽しむためのテクニック、それがG RIDEなのだ。
前回のお勉強でダウンヒルのコツをつかんだクラモチ。今回はヒルクライムに挑戦だ。
クラモチ 「ヒルクライムはアクセルを開けていけばいいんですよね」
と余裕ありげなクラモチ。
三橋 「それはガーッとのぼるやりかただね。それだとタイヤで路面を引っかきながらのぼることになるんだよ。じゃあ、クラモチ君のやり方で、この小山で坂道発進してみてごらん」
と、三橋さんに言われたクラモチ。高さ1mほどの斜面で、坂道発進しようとするがリアタイヤが空転してしまった。
三橋 「たとえば滑りやすそうな坂を歩いてのぼるとき、クラモチ君はダッシュしてのぼろうとするかい? 一歩一歩踏みしめてのぼっていくでしょ。それはGをかけてトコトコのぼっていくということなんだけど、みんなバイクになるとなぜか勢いでのぼろうとするんだよね」
という三橋さん。リアブレーキを踏んだままアクセルを開け、ゆっくりとクラッチをつないでいく。さらに少しだけアクセルを開けつつクラッチをつなぎ、半クラッチにしていく。そして、リアブレーキをリリースすると、バイクはトコトコと坂をのぼっていった!
三橋 「リアタイヤが回ったぶんだけ坂をのぼっていくでしょ。ただアクセルを開けるんじゃなくて、リアタイヤの気持ちになって、しっかりと路面にGをかけてのぼっていくんだ。これはスピードが出ないから慌てなくてすむし、路面も痛めないのぼり方なんだよ」
半クラッチに苦戦しながらも、1mの小山で坂道発進できたクラモチ。アクセルワークの意味を徐々につかみはじめてきたようだ。
クラモチ 「トコトコ」と「ガーッ」ですね!
坂道発進でリアタイヤのトラクションを体感するためには、まず斜面で停止できなければならない。斜面で停止するにはブレーキをかける必要があるが、それにはリアブレーキを使う。その理由は、斜面でのバイクはつねに谷側を向いているタイヤのほうにGがかかっている。つまり、より路面をグリップしているのだ。だから路面をグリップしているタイヤにブレーキをかければ、斜面で止まれるようになる、ということだ。“斜面のブレーキは谷側”と覚えておこう。また、坂の途中でエンストしたり、リアタイヤがスリップしてスタックした場合も、リアブレーキをかけて停止する。フロントブレーキだけかけたりクラッチをわしづかみすると、バイクは斜面を下っていってしまう。スタックした場合はリアブレーキをかけ、クラッチを少しだけ切って、マシンの向きを変えて下りよう。
坂の途中でエンストしたクラモチ。再発進できずにバイクから下りてしまったが、これだとリアブレーキを踏めないのでNG。フロントブレーキしか使えず、クラッチもわしづかみでズルズルとバックしていき、危うく転倒するところだった。バイクから下りる前に、リアブレーキを踏む習慣を身につけよう。
坂をのぼっていくときは、リアタイヤにGをかけてしっかりと路面をグリップさせる。そのための特別なライディングフォームなんて、じつはない。というよりも、平地のライディングフォームをとっていれば、リアタイヤにGをかけることができる。○と×の写真を比べると、○のライディングフォームのほうが、リアのサスペンションが沈んでいる。斜面で平地と同じライディングフォームをとろうとすると、頭が谷側に引っ張られるので怖さを感じるかもしれないが、ここで前のめりにならないことが、ヒルクライム攻略のカギとなる。
斜面では体も谷側に引っ張られるので、前のめりなライディングフォームで耐えようとしてしまう。これだとリアサスを縮めることができないので、リアタイヤにGをかけることもできない。つまり、リア荷重が抜けてリアタイヤを路面にグリップさせられなくなり、すべりやすくなってしまうのだ。ヒルクライムは平地と同じライディングフォームをとることを体に覚え込ませよう。
平地と同じライディングフォームをとり、リアブレーキをかけて斜面で停止したら、アクセルを少し開けてクラッチをつなぐ。クラッチがつながっていくとエンジン回転数は下がり、エンジン音が変わるのが聞こえる。そして、その状態でリアブレーキを離しても、バイクは斜面で止まったままになる。これが半クラッチの状態だ。ここから斜面をのぼっていくにはさらにクラッチをつないでいくが、アクセルを開け足さないとエンジン回転数が下がり、エンストしてしまう。クラッチがつながりはじめたときのエンジン音になるように、アクセルを少しずつ開け足していこう。前のめりな姿勢にならなければ、バイクはタイヤが回ったぶんだけトコトコと斜面をのぼっていく。教習所で習った坂道発進と同じやり方でいいのだ。違うのはリアタイヤのグリップを確かめて、アクセルを余分に開けないようにすること。ダート斜面の坂道発進は、坂をのぼるグリップ感を身につけることができるんだ。
リアブレーキをかけて斜面で止まれるようになったクラモチだが、坂道発進は大苦戦。クラッチをつないでいき、半クラッチまではできるのだが、そこでエンストしてしまう。クラッチレバー操作はしているのに、なぜかアクセル操作がおろそかになるというクセが露呈した。しかも足を着いているのでリアブレーキが踏めず、前輪をロックさせてずり落ちる失敗も繰り返した。
G RIDE流ヒルクライムはトコトコ走りが基本だが、滑りやすい路面では、グリップさせてものぼっていかない状況もある。そんなときは、アクセル開け開けでリアタイヤを回して「ガーッ!」とのぼる方法がある。滑る路面をリアタイヤで掻き出し、グリップする路面を掘り出してやるのだ。まず平地と同じライディングフォームをとり、リアブレーキを踏んで止まり、クラッチをつないでいくまでは同じ。しかしリアタイヤに荷重しても路面をグリップしない。そこでアクセルをガバッと開け続け、リアタイヤを激しく回転させる。するとリアタイヤはグリップする路面を掘り出すまで斜面の土を掻き出していく。バイクが前進する限りアクセルを開けていくので、当然、路面は荒れる。1秒を争うレースでは有効なのぼり方だが、それ以外ではオススメしたくないヒルクライム方法である。ちなみにこれでものぼれないときは、一度斜面を下り、助走をとって再度のぼっていこう。その方法は次回で解説していくぞ!
2007パリダカ・市販車無改造クラスで優勝を果たしたのは記憶に新しいところ。四輪ドライバー転向前は、BAJA1000、UAEラリー、ラリーレイドモンゴル、パリダカなどの海外レースで輝かしいリザルトを残してきた。豪快かつ繊細なライディングは未だに健在。
GARRRR編集スタッフではあるものの、オフロード経験はほぼゼロ。学生時代にカッコイイという理由で購入したKDX200SRも半日で焼きつかせてしまい、その後もストリート・オフローダーとしてRMX250S、DT200WRと乗り継いできた2スト好き。
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