掲載日:2012年07月13日 フォトTOPICS
文/富田 由起奈 写真/河合 宏介 取材協力/株式会社モビリティランド
トライアル選手権ももてぎエンジェルの笑顔が欠かせません。ハイヒールでも観戦できるエリアもあり、女性でも楽しめるよう環境が整えられています。
6月2日から3日の2日間で、FIM トライアル世界選手権シリーズ第3戦日本グランプリがツインリンクもてぎで開催されました。取材に訪れた大会2日目の天気は、少し雲のある青空で、地面のぬかるみもなく良好なコンディションでした。観客動員数は、1日目は約5,500人、2日目は約6,000人。昨年より約3,500人も多くのファンが集まりました。今年は、7年間王者を守り抜いたドギー・ランプキン選手の引退の年にもなり、引退セレモニーではたくさんのファンと共に、記念撮影も行われ大変な賑わいを見せていました。
トライアルは、1900年代初頭のイギリスのスコットランドで始まったと言われ、伝統ある紳士のスポーツとして親しまれています。自然の景観を使い、倒木や岩を上り、時には絶壁に近い崖をマシンと共に駆け上がります。ルールを簡単に言えば「足を付いたら減点」、「決められた場所を通る」、「90秒以内にセクション(コース)をクリアする」この3点になります。
初日の結果は1位トニー・ボウ選手、2位ジェロニ・ファハルド選手、3位アルベルト・カベスタニ-選手。2日目は1位トニー・ボウ選手、2位アルベルト・カベスタニー選手、3位藤波貴久選手となりました。今後スペイン、アンドラ、イタリア、イギリスで大会が行われ、合計7戦でポイントが高い選手が、今年の世界選手権の王者になります。
トライアルは、迫力満点の選手達の技も見所のひとつですが、家族で観覧できるモータースポーツでもあります。もてぎでは、小さな子供や女性連れでも快適に過ごせるように、足元やトイレなど環境が配慮されています。そして、選手達との距離が近いところもまた魅力のひとつです。運がよければ世界ランキングの選手達と直接会話することも出来、実際のマシンも目の前でじっくり見ることができます。カメラを向ければ、ポーズをとってくれることもあり、とてもフレンドリーです。
現在活躍している選手のほとんどは、親子でトライアルという競技を受け継いでいて、子供のころから練習を重ね、世界の舞台で活躍しています。観客もそんな姿を小さい頃から見守ってきた、コアなファンも多く見受けられます。だからこそ、選手達もファンサービスをしてくれます。そんな選手も観客も一体となれるモータースポーツ「トライアル」を、来年はツインリンクもてぎで観戦してみませんか?
01第6セクションを例にして、簡単に観戦のコツを紹介します。入り口にある番号札はセクション番号で、黒いテープで囲まれています。クラスごとに通るべき道を矢印で分けられていて、赤はワールドクラス、青はオープンインターナショナルクラスとジュニアクラス、緑はユースクラスです。観客は黄色いテープの外側で観戦します。
02各セクションにはオブザーバーと呼ばれる審判が数名います。1回の足付きで1点減点。減点数の少ない選手が勝ちとなります。写真ではオブザーバーが3本の指を出して、3点目の減点を知らせています。
03セクションコーディネーターの成田 匠さんです。「今年は徹底的に自然にこだわり、昨年まで金属の足場を使っていた人工セクションでも、今回は金属を一切使わずに足場を組みました。」
04スタート前、ファンの子供から笑顔でプレゼントを受け取る藤波選手。ピット前での歓談は、トライアルではおなじみのシーンです。
05第1セクションでは、斜面をナナメに登って丸太越えをするのが見どころでした。使用されるトライアルバイクは、無駄なものが一切省かれ、スリムで軽量なマシンになっています。
06パンクのように後輪がへこんでいるのは、空気圧を減らしてグリップを高めるためです。
07トライアルバイクは、シートが付いていません。全てスタンディングポジションのまま、セッションをクリアしていきます。
08チームには1人のメカニックが同行します。メカニックは選手と同じマシンに乗っているので、パンク修理ではホイールごと交換していました。
09第2セクションは、斜面を一気に駆け上がり、大きな岩を登ります。昨年、もてぎ2日目の優勝者、2番ラガ選手がきれいにクリーンしました。
10先にセクショントライする選手の走りを見て、どのラインを通るのか、どのくらいタイヤが滑るのかなど、自分のトライの参考にします。
11初日に3位に入賞したスペインのアルベルト・カベスタニー選手。2日目は2位という好成績で日本グランプリを終えました。
12日本のヒーロー、藤波選手。集まった観客から「フジガス~!」の声援が止みません。
13次のセクションへの移動中の藤波選手。新緑の中を疾走していきます。
14障害物に前輪を当てて、そのリバウンドで上にあがります。ステアケースと呼ばれ、方法を知っていてもなかなかできない技です。
15第4セクション応援席での1コマ。人垣の後ろからでも見えるように、脚立持参の方が多くいます。
16ラガ選手が、後輪だけで岩の上を弾むように、ウイリー状態で越えていきます。
17ジャックナイフで後輪を空転させて、タイヤに付いた泥を落とします。このまま方向転換をする選手もいました。
18大岩にトライする王者ボウ選手。岩の上で待機してアドバイスをしているのは、マインダーと呼ばれるチームメイトです。
19リアタイヤを岩に押し当て、全身でマシンを引き上げているのでしょうか? 近くで見ていても、なぜオーバーハングした障害物を登れるのか分かりません。
20第5セクションは、もてぎ名物の岩盤ゾーンです。下から見上げると垂直に近い壁にしか見えません。救急車と消防車が待機しているくらい危険なセクションです。
21ゼッケン5番ファハルド選手のトライをセクション脇から見るとこんな風景です。選手の右にいるマインダーは綱をつかみ、万が一の選手の失敗に備えています。
22ゼッケン4番、カベスタニー選手のトライ。背後にいる多くの観客から声援がかかります。
23もてぎの山々に囲まれた第5セクション、そこをダイナミックに自信を持ってトライする、王者トニー・ボウ選手。この場所は、ほとんど助走区間がないのです。
24万が一トライに失敗したときは、マインダーがサポートしてくれます。この状況で転倒してもクラッチを切ってエンジンを止めない、ワールドクラスの底力を見せつけられた感じです。
25お昼はもちろん、フジガスTOPping勝カレ?(900円)です。酸味の効いたトマトをベースに、トンカツを乗せたカレーです。
26中央エントランスの広場には、たくさんのケータリング屋台がありました。宇都宮の焼きそばや那須の豚丼など、地元の特産品を使ったメニューが豊富にありました。
27ストライダーは、ペダルがなく蹴って進む自転車です。その体験レースが開催されていました。応援する大人のほうが、子供よりも必死に走っていました。
28HRCのブースには、なかなかお目にかかれない最新のRTL260FやNSF100などが展示されていました。もちろん、触ってもまたがってもOKです。
29ハローウッズの第13セクションは、またも岩盤です。13と14セクションは芝の広場にあり、ほとんど移動することなく観戦ができます。ピクニック広場もあり、そこで飲食もできます。
30岩盤の終わりをにらみつけながら駆け上がる、ゼッケン16小川友幸選手のトライ。こういうシーンでは「いけ~!!」と歓声が沸き起こります。
31第13セクションを勢い良く登り切った、ゼッケン20斎藤晶夫選手。きちんと着地できたので、ご安心ください。
32歯を食いしばり体勢を整え、アクセル全開でヒルクライムに挑む、ゼッケン2ラガ選手。トライアル車は、指先1本で操作できるほど軽いクラッチになっています。
33ヒルクライムを登り終えたラガ選手。リアタイヤが見えているかのようなクリーンで、見事に着地します。
34第14セクションは、ハローウッズの庭に設けられたセクションです。 写真中央に見える椅子が並べられた席が、セクションに一番近いプレミアム席です。
35ジュニアクラス、まだ19歳の吉良祐哉選手。若手の日本人選手は、将来の活躍が楽しみです。
36岩にマシンを引っかけてしまい、それでも足をつかずに奮闘する、ジュニアクラスの滝口輝選手です。このセクションはクリーンでした。
37今年から新しくできた「OPEN INTERNATIONAL」クラスで出場の砂田真彦選手。年齢に制限がなく、ジュニアのラインを走れるクラスです。トライアルの見所がまたひとつ増えました。
38ラストの15セクションは、人工的に組んだ岩山です。ここでのゴールシーンは、選手の一番いい表情が見られます。
39第15セクションで、岩から岩へ飛び移るタレス選手。しかし、次の岩への着地に失敗してコースアウト。痛恨の5点減点でした。
40宙を舞いながら、着地地点を見つめる藤原慎也選手。離れた岩が連続しているセクションを、テンポ良く走り抜けていました。
41最後の大岩を登るセクションで滑落し、悔しがる黒山健一選手(2011全日本チャンピオン)。しかし、そのファイトあふれるライディングに、観衆は大きな拍手を送っていました。
42第15セクション最後の上りを、危なげなくクリーンするトニー・ボウ選手。最後まで安定した走りを披露してくれました。
43ゴールの瞬間のトニー・ボウ選手。共に戦ったマインダーと抱き合い、喜びを分かち合います。ボウ選手は、11セクションから15セクションまで、減点なしの連続クリーンを叩き出しました。
44表彰式はクラス別で行います。ユースクラス、第1位スベレ・ルンデボル選手、第2位スティーブン・コクラン選手、第3位ブラドレイ・コックス選手。減点18、クリーン23で、BETAを駆る若いノルウェー人が優勝しました。
45ジュニアクラスは、減点6、クリーン28でアレキサンドレ・フェラー選手が優勝。第2位はポル・タレス選手、そして3位はセドリック・トンピエル選手でした。
46最高峰のワールドクラス、2位と1点差の減点20、クリーン24で優勝したトニー・ボウ選手。2位はアルベルト・カベスタニー選手、そして2位とクリーン数は同じながら、4点の減点差をつけられた日本の藤波貴久選手は3位でした。
47表彰台に登った者のみが許される栄誉あるシャンパンファイト。観客は、その栄誉を大きな拍手で、ときに紙コップを差し出して讃えます。トライアル世界選手権はまだまだ第3戦を終えたばかり。これから4か国を周り、戦いは続きます。
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