掲載日:2026年01月21日 試乗インプレ・レビュー
写真/伊澤 侑花 文/稲垣 正倫

YAMAHA WR125R
かつて日本のオフロードシーンには、スズキジェベル125やカワサキKDX125SRといった「フルサイズ(前21/後18インチホイール)」の原付二種モデルが存在し、多くのライダーを育ててきた。しかし排ガス規制等の影響でラインナップから消滅して久しく、このクラスは長らく空白地帯となっていた。その間、欧州では免許制度の関係から125ccフルサイズオフロード車が若年層を中心に活発化。多くの欧州メーカーがこぞって魅力的なモデルを投入し、一大市場を築き上げていたのである。

今回登場したWR125Rは、インドネシアのマーケットで鍛えられた「WR155R」をベースに、欧州・日本の法規や環境に合わせて最適化されたモデルだ。ヤマハ発動機によれば、ターゲットは40代の「お父さん世代」や、20代の若年層。子育てが一段落し、再びバイクに乗りたいリターンライダーや、維持費を抑えつつ本格的な趣味を楽しみたい層に向けた戦略車である。
WR125Rの最大の魅力は、そのスタイリングにある。レーサーであるYZシリーズや、かつてのハイパートレールWR250Rといった上位機種の遺伝子を受け継いだデザインは、「125ccだから」という妥協を感じさせない。水平基調のシャープなボディライン、車体側に追い込まれたコンパクトなヘッドライト周り、そしてシュラウドは2色で造形されている。これらはすべて「所有する満足感」を満たすための演出だ。さらには、このシュラウドはデザインだけに止まらず、ライディング時のライダーインターフェースとしても秀逸な形状で、バイクの上でライダーが動きやすく設計されている。

エンジンは水冷4ストロークSOHC 4バルブ単気筒。特筆すべきはVVA(可変バルブ機構)を搭載している点だ。これにより低回転域での粘り強いトルクと、高回転域での伸びやかなパワーを両立している。125ccという限られた排気量の中で、日常の通勤・通学から週末の林道ツーリングまで、ストレスなくこなせる性能が与えられている。
車体構成も本格的だ。フレームはセミダブルクレードルを採用し、フロントにはインナーチューブ径41mmの正立フォークを装備。リアはリンク式サスペンションとし、オフロード走行に十分なストローク量を確保している。一方で、シート高などのディメンションは日本のライダーに合わせて調整(875mm)されており、足つき性にも配慮されているのが嬉しいポイントだ。
それでは、この注目のニューモデルの実力を、一般道から林道まで、実際のツーリングシーンを想定してチェックしていこう。
実車を前にすると、その堂々たる車格に驚かされる。原付二種ナンバーが付いているのが不思議なほど立派な佇まいだ。しかし、跨ってみるとシートは意外なほどスリムで、足つきも悪くない。タンク位置が低く、ライダーが動けるスペースが広く取られているため、窮屈さは微塵も感じない。

車体剛性が高く、舗装路でのコーナリングも非常に安定している。125ccエンジンのパワーを使い切り、高回転まで回して走る楽しさは格別だ。倒立フォークのおかげでブレーキング時の姿勢変化も穏やか。
まずは舗装路へ走り出す。125cc単気筒エンジンと聞くと、非力で振動が多いイメージを持つかもしれないが、このエンジンは別物だ。とにかく回転フィールが上質で、まるでフリクションが存在しないかのようにスムーズに回る。

市街地では早めにシフトアップして交通の流れをリードできるし、峠道に入ればVVA(可変バルブ)の本領発揮だ。6000回転を超えたあたりから元気が良くなり、レッドゾーン手前の1万2000回転付近まで一気に吹け上がる。

絶対的なスピードは大型バイクには敵わない。しかし、アクセルを大きく開け、エンジンを使い切って走る楽しさは、小排気量車ならではの特権だ。車体の剛性が非常に高く、倒立フォークもしっかり仕事をするため、コーナーリング中の安定感は抜群。昔のトレール車のようなフワフワした頼りなさは一切なく、オンロードバイク顔負けのペースでワインディングを楽しめてしまった。
舗装路を抜けて、落ち葉の積もる林道へと足を踏み入れる。ここでWR125Rは、真の「相棒」としての顔を見せてくれた。

特筆すべきはエンジンの極低速域での「粘り」だ。3000回転以下のトルク感は決して太くはないのだが、不思議なことにエンストする気配が全くない。あえて高いギアでトコトコと走ってみても、エンジンは止まることなく粘り強く進んでいく。

この特性は、林道初心者にとって最強の武器になる。荒れた路面や急な上り坂で、「エンストしたらどうしよう」という恐怖心から解放されるだけで、オフロード走行は劇的に楽しくなる。純正でかなりショートに設定されたギア比も手伝って、1速アイドリング状態で人が歩くような速度(時速4〜5km)で進むことも可能だ。これなら半クラッチを酷使せずとも、難所をクリアしていける。

低速で粘るエンジン特性のおかげで、エンストの不安なくトコトコと進んでいける。サスペンションが路面の凸凹を綺麗に吸収してくれるため、未舗装路でも快適なクルージングが可能だ。
今回の試乗ではモトクロスコースも少し走行したが、ジャンプを飛んでも底付きしないサスペンション性能には驚かされた。しかし、この余裕のあるサスペンション性能は、むしろ林道ツーリングでこそ活きる。路面のギャップや石ころを綺麗にいなしてくれるため、長時間のダート走行でも身体への負担が驚くほど少ないのだ。
一日を通して様々なシチュエーションで試乗したが、WR125Rは期待を遥かに超える完成度を見せてくれた。パワーこそ125ccなりだが、それを補って余りあるエンジンの粘りと、クラスを超越した車体性能。そして何より、乗っていて楽しいという根源的な魅力が詰まっている。

「パワーがないから面白くない」などという先入観は、このバイクに乗れば吹き飛ぶはずだ。むしろパワーを持て余すことなく、エンジンをきっちり回して走り切れる楽しさがある。高回転までストレスなく回るエンジンは、まるで上質な楽器のようだ。
燃費も恐ろしく良く、タンク容量8Lとは思えない航続距離を稼ぎ出すだろう。林道を含めたロングツーリングなら、スズキVストローム250なんかとも競合できる快適性と走破性を秘めている。

通勤快速として、週末の冒険の相棒として、あるいはライディングテクニックを磨く練習機として。WR125Rはあらゆるライダーの要望に応える懐の深さを持っている。長らく不在だった「国産125ccフルサイズトレール」の決定版。日本のオフロードシーンを再び熱くする一台になることは間違いない。

WR155Rをベースとしつつ、日本の法規・環境に合わせて最適化されたWR125R。YZシリーズに通じる水平基調のスタイリングと、ブルー&ブラックのカラーリングがスポーティな印象を与える。125ccとは思えない堂々とした車格が魅力だ。

水冷4ストロークSOHC 4バルブ単気筒エンジンを搭載。最大の特徴はVVA(可変バルブ機構)で、低速域のトルクと高速域のパワーを両立。FIセッティングの妙により、極低速でも驚異的な粘りを見せる。

インナーチューブ径41mmの倒立フロントフォークを採用。高い剛性を確保しつつ、しなやかな動きで路面追従性を高めている。タイヤはダンロップ製D605(フロント21インチ)を装着し、オン・オフのバランスを考慮。

リアにはリンク式サスペンションを採用。スイングアームはスチール製だが十分な剛性を確保している。タイヤクリアランスも広く、FIM規格のエンデューロタイヤやトライアルタイヤの装着も視野に入る。

ハンドルポストはトップブリッジ別体式を採用し、ポジション調整の自由度が高い。液晶メーターはコンパクトながら、ギアポジション、時計、燃費計などを表示可能。Y-Connectによるスマートフォン連携機能も備える現代的な装備だ。

法規対応のため大型化しがちなヘッドライトだが、2灯とすることでコンパクトな見た目を実現。フロントフェンダーからのラインに溶け込むようなデザイン処理により、精悍な顔つきに仕上がっている。

フラットな形状のシートはボディアクションを妨げず、前後移動が容易。タンク容量は8Lを確保しており、燃費の良さと相まって長い航続距離を実現する。シュラウドの張り出しも適度でニーグリップしやすい。

シャープなデザインのリアフェンダー。剛性が高く、オフロード走行時の振動でもバタつきが少ない。テールランプはLEDを採用し、被視認性を確保。ウインカーはバルブ式だが、転倒時の破損リスクを考慮した柔軟なステーを採用。

6速トランスミッションを搭載。純正でかなりショートなギア比設定となっており、1速アイドリングで歩くような速度での走行が可能。林道や難所での走破性を高めるセッティングだ。

エンジンは水冷式でラジエーターを1枚装備している。シュラウドには黒い樹脂パーツが組み合わされた複雑な造形が施されており、デザイン上のアクセントとなっているだけでなく、転倒時のプロテクション効果も期待できる。








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