自分の好きな事象を愛でる時、その対象を写真に収める、というひとつの愉しみ方がある。その行為に必要なカメラは、今ではデジタル一眼レフから携帯電話に内蔵されている小型のものまで千差万別だ。そもそも、カメラの原点を遡ると、1836年頃に最初の実用的撮影技術が起こったと言われている。そこから様々な技術や製品が生まれていったが、今なお当時の製品たちは独特の魅力を放っている。本連載では、そのどうしようもない魅力に囚われつつオートバイへの愛もある一編集者の世界観を届けて行きます。

※横版の写真はすべてデジタルカメラ撮影

オールドレンズとハーフ判が魅せる世界 懐古03 インダスター 5cm/3.5 ③

掲載日:2013年05月20日 ダートライフ    

取材・写真・文/ダートライド編集部  取材協力/うず潮レーシング福山

レンズフード付きで
果敢に絞りを調整してみた

今回も使用するレンズはロシアのИНДУСТАР(インダスター)レンズです。本連載1回目の再トライで、もう一度バイクを置き撮りして、フードの効果やレンズの特性を掴みたかったからです。ただ、今回は下にあるフィルム作例を見てもらうと分かりますが、薄曇りでの撮影。コーティングのない旧いレンズにはうれしい条件かもしれません。

 

ところがです。印画紙での上がりを見てみたところ、全体的に画が眠いです。プライベート撮影でインダスターは快晴時に、対象物をパッキリ切り取れる比較的硬質のキャラクターを持つレンズと見ていたのですが、今回はそのような仕上がりになりません。

 

連載2回目で、写真は光といかに上手くお付き合いするかが成功の鍵と書きましたが、インダスターはかなり光を貪る習性のレンズのようです。ロシアというと常に薄曇りなイメージがあるので、今回のような条件下でも健闘してくれると思ったのですが、組み合わせるボディとフィルムは一般的なカメラ機材であるので、やはり充分な光量が写真撮影の好条件なのかもしれません。

 

ただ、仕事での撮影に待ったはなしですから、こればかりは仕様がありません。掲載にあたっては、35mmのネガフィルムをノーリツ製の業務用スキャナーで取り込んでデジタルデータ化しているので、色調補正など加工をしました。素の状態ではちょっと苦しいですので。

 

それと今回は、再び三脚に固定しての撮影になったので、フードを付けた事で絞り羽根のリング爪にアクセスしにくくなりましたが、積極的に指を入れて数値を変えてみました。静物撮影なので時間はありますし、暗い画面でも手持ちよりまだピント合わせにゆとりがありますから。

 

そういう事で、絞り値を変えるとインダスターの写し取る画にどのような変化があるかも、今回はお見せしながら被写体であるバイクの紹介をしたいと思います。フィルムは再びコダック ProFoto XL 100を使い、三脚固定。レリーズは現場に持って行き忘れてしまったので、通常の指押し撮影となっています。撮影データは、今回も写真下に記載しています。

 

ライカ・エルマー 50/3.5用のサードパーティー製フードを付けた事で、絞り羽根を調整するリング爪にもの凄くアクセスしづらくなったが、今回は積極的に変えてみた。

ライカ・エルマー 50/3.5用のサードパーティー製フードを付けた事で、絞り羽根を調整するリング爪にもの凄くアクセスしづらくなったが、今回は積極的に変えてみた。

KTM最新型2013年モデル450SX-F
WPをKYBに変えるなど特徴ある1台

今回、撮影の対象として選んだのは、うず潮レーシング福山所属のモトクロスIAライダー、北居良樹選手 のマシンです。日本国内では唯一、KTMの準ファクトリーマシンのポジションにある本機は、最も大きな特徴として、前後のサスペンションがKTMのスタンダード装備であるWP製ではなく、KYBになっています。これは、KTMが用意するオプションパーツであるパワーパーツに設定があるわけではなく、国内でのサービス体制を踏まえての変更です。日本ではモトクロスレース現場にWPのサービス員はおらず、何かの時、対処が不可能なためKYBに変更しているのです。

 

そのサスペンションは、フロントがフルエアー式になるPSF(Pneumatic Spring Fork)、リアはアジャスターの項目数が多い先行試作品を使用します。他、ノーマルはガンメタリックのフレームなのを、KTMのイメージカラーに合わせてオレンジにガンコートしています(カーベックス施工)。このガンコートは、ラジエーターにも施工されています。エンジン系は2013年モデルからSOHC&フューエルインジェクションに変更になり、排気系をパワーパーツであるアクラポビッチ(チタン製)に変更してあります。シリンダーヘッドもチューニングして北居選手の好みに変更していると言います。

 

他、細かな変更点などは、フィルム写真で説明してあります。それで、今回見てもらいたいのが絞り値の違いによる画の見え方です。具体的には、14番、18番、20番です。14aは8.0 1/8秒でbは4.0 1/30秒で、背景のボケ具合が変わっているのが分かります。18aとbになると、バッテリーの奥側の文字がボケています。被写体によって、絞り羽根の加減を選択せねばならず、デジタルカメラのようにその場で仕上がりが確認出来ないので、多目に撮っておくか、数値とボケ具合を身体に覚え込ませておく必要があります。20番では手前のエキゾーストパイプの見え方まで変わってきますし、作例を見て貰うとフィルムは絞り加減によって色味に変化が出てきているので、ベストを探ろうとすると本当に奥が深いです。

 

また今回、バイクと正対したはじめのほうのカットは(1、2、3、4番)、実は原版はもの凄く右が余っています。ファインダーを覗いた時はバイクは中心にあったのですが、仕上がりはことごとく左に寄っています(タイヤの切れ方がギリギリですよね)。マウントアダプターを使用した正規の使い方ではないので、それによる弊害なのかもしれません。今後はトリミング前提で少し広めに撮った方がよさそうです。デジタルの、その場で仕上がりが分かってしまう状態に慣れてしまうと、フィルム撮影は本当に難しいです。モトクロスも難しいので、こじつけですが共通性があるように感じました。

 

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