第10回 カワサキW650ボアアップ【W800化完成編】

掲載日:2015年07月10日 週刊メンテナンス講座    

記事提供/モトメンテナンス編集部(※この記事はモトメンテナンス102号に掲載された内容を再編集したものです)
取材協力/NAG SED

カワサキW650ボアアップの画像

カワサキW650ボアアップの画像

W650改ボアアップ800は、現行W800を超える
トルクフルなエンジンフィールを実現!!

はやる気持ちを抑え、チョークを引いてセルボタンを押した。空だったフロートチャンバーにガソリンが落ちてくると、あっけなくエンジンが始動する。アイドリングが安定してくると、すでに排気が勇ましくなっているのが感じられた。

早速、実走してみることに。いくらプラトーホーニングが施されているとは言え、いきなり全開をくれてやる訳にもいかず、そろそろと様子を見ながらアクセルを開けていく。すると以前とは流れる景色のスピードが違うのに気が付いた。速度の乗りが違うのだ。そのまま、スロットルを4分の1ほど一気に開けてみると、W650改は猛然と加速をはじめ、気を抜いていたため上体が後方へ持っていかれてしまった。驚くほどのトルクである。これがプラス130ccの効果なのだ。もはやギアがどこにいようとも、スロットルをガバ開けさえしなければ、スムーズに加速していく。ボア6・5mm拡大により回転上昇の鋭さに陰りが現われるかと思ったが、それも感じられなかった。また、スロットルレスポンスの向上が見られた。これは、以前、650にW400の小径キャブを装着した時に、スロットルレスポンスが向上したのと同様、排気量に対するキャブ口径が狭くなったため、混合気の流速が早まったものと思われる。つまり大径キャブの装着で更なるパワーアップが見込めるということだ。

ボアアップ後に感じた気になる点もある。まずは振動だ。アイドリング時は650と大差無いものの、特に3000回転以上でハンドルから伝わる振動が増大した。W650改は以前に制振ウェイトが入っていないハンドルに交換しており、通常より振動が出やすいのは致し方ない。しかし、この振動がものすごく不快かといえば、そうでもなく、エンジンの鼓動を感じられるようでもある。

その他はセッティングなどで解消するものだった。まず、エンジンのスムーズさが消えて、とにかく荒々しいのである。エンジンブレーキの効きが強く、スロットルオン、オフでギクシャク感が強く出た。また、低回転でガバ開けした時にごく軽いノッキング症状が出るのである。

カワサキW650ボアアップの画像

プラグを確認してみると当然白いので、まずはキャブセッティングを行なうと、幾分、ギクシャク感が解消され、パワー感がさらに出てきた。また、800ccエンジンの実圧縮を計測してみると、16・0kgf/cm2と、W650標準最大値13・0kgf/cm2を大きく上回っていたため、ハイオクガソリンを入れてみると、軽いノッキングは綺麗に解消した。ただし、普通に乗っていてレギュラーガソリンの時と大きな差を感じるかと言えば、決してそんなことは無いので、今後、燃費を計測してみて、どちらの燃料を使用するかどうかを決めようと思う。

最後まで、消すことができなかったのが強すぎて不快なエンジンブレーキとエンジン回転のゴリゴリしたフィーリングだった。自分なりに一つ思い当たったのがナグバルブだった。排気量が上がった分クランクケース内圧が高まり、今までのバルブでは容量が不足しているのではないかと考えたのだ。さっそく、ナグSEDの永治さんに相談すると、バルブ容量の問題ではなく、エアクリーナーの問題であることが判明。対策したところW650改800は、スムーズかつまろやかながらパンチの効いたエンジンフィールを実現することができたのである。

W650よりトルク感で優位のあるW800より、さらにパワフルかつトルクフルな走りを見せるW650改800。思いつきで簡単にできるチューニングではないかもしれないが、W650オーナーは是非ともボアアップをお勧めしたい。今までの愛車がボアアップで突然豹変する様を味わえる楽しみがまだ残されているのは非常に幸運なことだ。

フロントスプロケットの交換

カワサキW650ボアアップの画像

ギア比がショートに感じられたので、フロントスプロケットを1丁アップの16丁に交換した。緩み止めワッシャーを起こしてハンドツールで緩めるも固着している。

カワサキW650ボアアップの画像

インパクトレンチを使ってみたものの、緩まない。おそらく新車時から使われているフロントスプロケットは頑固に固着しているようなので、ヒートガンを使って熱を加えた。

カワサキW650ボアアップの画像

熱を加えたことで無事、緩めることに成功。消耗品は長持ちすれば良いという訳ではない典型だ。たまには脱着が必要なのである。フロント1丁なのでチェーンはそのままでOK。

カワサキW650ボアアップの画像

ファイナルのギア比はW650初期が2.533、後期とW800が2.466、今回W650改がフロント1丁上げで2.375と最もロングになる。W650で100km/h時約4000回転がフロントスプロケット1丁上げで約3500回転に変化した。

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