掲載日:2015年06月12日 週刊メンテナンス講座
記事提供/モトメンテナンス編集部(※この記事はモトメンテナンス102号に掲載された内容を再編集したものです)
今回のボアアップ作業では、同時にヘッドのリフレッシュのため、バルブシートカットと摺り合わせを行なった。当然、バルブステムの突き出し量が変化するため、バルブクリアランスの調整が必要となる。W650は直打式のアウターシム式。調整にはシムが必要だ。
全サイズのシムを在庫できるプロショップなら良いかもしれないが、個人で大量のシムを抱えるわけにはいかない。部品を発注したとしても届くまでにはタイムラグがあるため、エンジン組立て前に、まず、ヘッド単体でシム調整を行い、必要なシムの選定が必要だ。また、バルブを組付け、ヘッド単体をある程度仕上げておくことで、後の作業が楽になる。
順序としては、あらかじめ準備しておいた新品のステムシールを使ってバルブを組付け、各部、内燃機加工に出す前の元あった位置にシムを復元し、カムとカムホルダーを載せる。そこからバルブクリアランスを測定し、まずは現状の数値を把握。サービスマニュアルには、測定値によって、何ミリのシムに交換すれば適正なクリアランスになるかが一目でわかる変換表が付いているので、それを参考に(もしくは暗算で)必要なサイズを割り出し、数値はその都度、見やすいようにメモしていく。
W650は、4バルブエンジンのため、もし、全部厚みの違うものが使われているとしたら8種類シムが使われている。ある箇所では使えないシムが他の場所で使える可能性は大いにあるので、手持ちの8枚でできる限りの調整を行なう。シムの厚みを表示した刻印は、永年の使用で消えていることがほとんどなので、マイクロメーターを用意しておきたい。
バルブがスムーズに動くかどうかを確認した後。バルブガイド先端に付いた内燃機加工時の油を洗浄しつつ、指で押し込むようにして新品のステムシールを組付ける。
バルブを通す前にバルブガイド内にオイルスプレーを吹いておく。塗りすぎはカーボンの原因ともなるので、少量で構わない。再びバルブがスムーズに動くかどうか確認する。
バルブスプリングは、巻きが狭い方(密側)をスプリングシート側にセットする。続いてスプリングリテーナー、コッターを乗せる。ここまでの組付けにオイルは必要ない。
本来は、ここでバルブスプリングコンプレッサーを使用してコッターを組むが、4バルブのW650は、バルブが小さかったため、4ミニ用のバルブコッター装着ツールを使用してみた。
すると4ミニ用が使用できてしまった。コッターとリテーナーをセットして、工具を押し付けると、パチンッと音がして簡単にコッターの装着ができた。全バルブに使用できた。
コッターが装着できたら、Tレンチなどをステムエンドに当て、プラハンなどで軽く叩いてバルブとコッターを落ち着かせる。バルブ組付け時は必ず行ないたい。
叩いたときにコッターがずれたり、外れてしまったら、正しく組みつけられていなかった証拠だ。エンジンがかかった状態で外れたら、壊れるので確実に作業を行ないたい。
同じ作業を繰り返し、全部で8個のバルブを組付けたら、シムを元あった場所の通りにセットし、カムとカムホルダーを載せて、ボルトを指定の順序どおりに締め付けていく。
カム山がバルブを押していないことを確認し、シクネスゲージでバルブクリアランスを測定していく。数値はその都度メモして必要なシムをリストアップしておく。
コッター装着ツールは、コッターをセットしたリテーナーに押し付けるだけで、簡単にコッターを装着することができる。構造としては、工具先端の外周部分がリテーナーを押し下げ、それと同時にスプリングでフロートマウントされた中心部分がコッターを押し下げてセットする。商品はアストロプロダクツ製。
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