掲載日:2015年05月29日 週刊メンテナンス講座
記事提供/モトメンテナンス編集部(※この記事はモトメンテナンス102号に掲載された内容を再編集したものです)
取材協力/カーベック
バイクのエンジンは露出しており、車体デザインの大きな構成要素となっている。しかし、熱で酸化が進みやすく、ペイント剥げや錆びを発生させやすい。この劣化が大きく美観を損なうのだ。特に空冷エンジンはフィンが深く、錆を落とすのは至難の業、また梨地の表面を綺麗にするのは、サンドブラスト以外では難しい。
W650のエンジンは、それはもう酷い有様で、パーツ単体になる部分は、最初の段階よりそれなりに綺麗になってきたものの、エンジンだけは購入時のボロいまま。エンジンカバー類は何となくDIY磨きを行なったものの、その他は手付かずだった。ペイントだけのためにエンジン分解する気にもならないから、もはやあきらめていたところである。だからこそ、今回のボアアップ作業が大きなチャンスとなった。
腰上分解に伴い分解されたシリンダー、ヘッドカバー、その他細かな部品には、ペイントを実施。純正と同様のカラーリングにもできるが、せっかく分解したのだから少し変わった塗り分けをしたくなるのが、サンメカのさが。シリンダーの半ツヤ黒、ヘッドのアルミ地のシルバーはそのままだが、エアサクションバルブのカバーとマフラーフランジを黒に、同じくシルバーのヘッドカバーを結晶塗装ブラックで仕上げることにした。
使用した塗料は、シリンダーは圧倒的な表面強度と高い放熱性でもはやエンジンペイントの定番と言えるガンコート、そしてヘッドカバーは先に述べたとおり、結晶塗料で仕上げたのだが、両塗料とも仕上げには焼付け乾燥が必要である。とても個人で大型焼付乾燥機なんて購入できないから、ここは見送ろうか……。とあきらめないでほしい。W650のシリンダー、ヘッドカバーは両方ともカーベックの小型焼付乾燥器CVジュニアに納まってしまった。プロにペイントを依頼する代金を考えれば、インフラが整ってしまうかもしれない。
ヘッドは井上ボーリングで施工してもらったウェットブラスト仕上げのままとして、その他をサンドブラスト+ペイントで仕上げ、見違えるほどの美しさを見せるエンジンに生まれ変わった。ヘッドカバーとマフラーフランジなどを純正とは違ったブラックで塗り分けることで、ほとんど本人しか分からない、自己満足的オリジナリティ溢れる仕上がり。血迷ってヘッドカバーを赤にしようかと思ったが、思いとどまることができて良かった……。
スリーブ打替えが終わったシリンダーにブラスト処理を行なうため、マスキングを行なう。使用するテープは粘着力がありつつ、テープ自体に弾力がある布ガムテープが最適だ。
フィン奥までブラストを当てたら、中性洗剤で水洗いする。マスキングしても、内部には必ず砂が入り込んでいるため、念入りに洗浄する。洗浄はペイント前の脱脂を兼ねる。
次にペイント用のマスキングを行い、50℃で余熱。熱を加えると、水分と油分が飛び、塗料の乗りが良くなる。余熱時にスリーブが抜けないようシリンダーに下駄をかませた。
シリンダーのガンコートは塗りにくい空冷フィンの奥から塗りはじめ、その後、全体に吹いて数回重ね塗りをする。塗料は粘度が低いので、塗りすぎるとたれるので注意する。
一方、ヘッドカバーの結晶塗装も同様に余熱を加えた後、施工。たれる寸前までポッテリと数回厚塗りすることで、焼付けた後に表面に均一な結晶(ちぢみ)模様となる。
結晶塗装は、施工後に120度で15~20分焼付けることで、チヂミ模様が現われるもので、見た目に美しいのはもちろん、タペット音の低減などの効果が見込める。実は、ペイント後に乾燥機を収める時に、1ヶ所針金で引っかいてしまったのだが、そのまま焼付けたところ、塗料が締まって傷を覆い隠してくれた。このような許容性も魅力だ。結晶塗装缶スプレーは、1本2,800円(税抜)。W650のヘッドカバーも収まるカーベックCVジュニア。
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