第3回 カワサキW650ボアアップ【バルブシートカット&リフレッシュ編】

掲載日:2015年05月22日 週刊メンテナンス講座    

記事提供/モトメンテナンス編集部(※この記事はモトメンテナンス102号に掲載された内容を再編集したものです)
取材協力/ポッシュフェイス井上ボーリング

カワサキW650ボアアップの画像

カワサキW650ボアアップの画像

ヘッドのリフレッシュと
バルブのシートカット

このW650は、新車時から13年が経過した4万km走行車。普段から3日と空けずに乗っているが、エンジンは好調で、体感できるパワーダウンの兆候は感じられなかった。ところが、分解した燃焼室やピストンヘッドにオイル混入の兆候は見られなかったものの、多量のカーボンの堆積が認められたのである。

カーボンが発生する要因は様々だが、一つとして燃調の狂いが挙げられる。特に近年のモデルは排ガス規制に合わせるため、燃料が絞られており、気温が低い時にミスファイヤを起こしやすい。この時の未燃焼ガソリンが燃焼室のカーボンの原因となるのだ。今回のW650がまさにそのケースだろう。堆積したカーボンは、バルブとバルブシートの間に噛みこんで圧縮もれを引き起こしたり、逆に燃焼室容積を圧迫することで、異常燃焼の原因となる。そのため、カーボンを洗浄し、バルブの摺り合わせが必要だ。

同時に、バルブとバルブシートは、高温下の中で叩きつけらており、決して磨耗は避けられない。いくらメンテを念入りに行なっても、磨耗はエンジン実働時間に由来するため、走行距離に応じたリフレッシュが必要だ。今回行なうボアアップは、エンジンパワーを求めるためのチューニングである。もちろん、シリンダーボアのみを拡大しただけでも、十分パワーアップを果たすことができるだろう。しかし、バルブがしっかりとコンプレッションを保てていなければ、せっかくのボアアップも最大限の効果を発揮することはできない。

だからこそ、ボアアップ作業と同時に井上ボーリングにバルブシートカットとリフレッシュを依頼した。プロの手による精密な仕事により、W650のエンジンは再び新車時のコンプレッションを取り戻し、ボアアップはさらに効果を極めることになったのである。

井上ボーリングによるヘッドワーク

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ヘッドには多量のカーボン堆積が見られ、バルブシート、フェイス面は表面が荒れていた。まず、バルブフェイス専用研磨機を使用して平滑なフェイス面に修正を行なう。

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バルブフェイスの角度に合わせて、回転する砥石に当て、必要最小限の研磨を行なう。また、永年の使用でバルブステムエンドが広がっている場合もコンディションによっては研磨修正を行なう。

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続いてヘッド側、バルブシートカットの作業を行なう。シートカットを行なうバルブシートリフェーサーのバイトの突き出しを調整するため、研磨したバルブフェイスの角度と距離を計測する。

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次に計測治具を当てて、バルブシートリフェーサーのバイトの突き出しを調整する。この調整が狂えば当然バルブの当たりが悪くなる。最新鋭の機械も使う側の技術経験が無ければ意味を成さない。

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井上ボーリングのスイス製バルブシートリフェーサーは、バルブガイドを基準に自動調芯を行い、バルブシートの中心を正確に割り出して、シートカットを行なうことができる。

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バイトがぐるっと回転して正確にバルブシートカットを行なう。当たり位置は中央部で仕上げてもらった。バルブシートは、4万kmを走破したものの、当たり幅はそれほど広がっていなかった。

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このバルブリフェーサーには、バルブがしっかりと圧縮を保てるかどうかをテストするバキュームテスターが付いている。バルブを閉じた状態でポートから空気を抜いて負圧状態にする。

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気密状態はゲージによって一目瞭然。すべてのバルブはゲージ緑色の範囲-700mbar近辺の数値を保っており、バルブがしっかり当たっている=コンプレッションを保っていることが数値で判断できる。

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本来は、これで作業は完了だが、ベテラン技師は光明丹による再チェックを欠かさない。井上ボーリングが人気を集める秘密は、こういった技師たちの細かな心遣いの積み重ねによるところが大きい。

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燃焼室内だけでなく、外側が特にサビでよごれていたヘッドは、単体になったのを機にウェットブラストの施工をお願いすることにした。ブラスト前にインマニと燃焼室をマスキングする。

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井上ボーリングでは、施工による寸法変化が少ないウェットブラストを導入。内燃機加工と同時に依頼できる。エンジンパーツが単品状態となる機会に、中味と共に外見のリフレッシュもお勧めだ。

カワサキW650ボアアップの画像

リフレッシュが済んだヘッドは、合わせ面にガスケット跡の腐食と外す時に付いた線傷があったため、最後に面研磨をお願いした。せっかく蘇った圧縮をここで漏らすわけにはいかない!!

完成したヘッド周り

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井上ボーリングの手により、見た目も圧縮も蘇ったヘッド。バルブステムはがた無くガイドをスムーズに動き、手でバルブを閉じると「パキーン」と気持ちの良い音を出してくれるようになった。もはや新車時以上と言っても過言ではないだろう。ここで行なったヘッドリフレッシュの作業工賃は、シートカットが2,300円/1ヶ所。バルブフェイスの研磨が800円/1個。摺り合わせが750円/1個。ウェットブラストが2気筒空冷で1万円となる。(すべて税抜き)

カワサキW650ボアアップの画像

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バルブフェイス、バルブシート共に平滑な面が蘇った。これでボアアップによって高まったコンプレッションをしっかりと保持してくれるはずだ。バルブの当たり幅は、W650の標準0.8~1.2mmでお願いした。機能を失いつつあるエンジン部品が生まれ変わる様は実にうれしい!! ボアアップに伴う腰上分解の際は、是非ともヘッドのリフレッシュを同時に行なうのがお勧めだ。なお、作業の依頼時には最低限燃焼室のカーボンを落としておくことが必要だ。

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