第1回 カワサキW650ボアアップ【腰上分解編】

掲載日:2015年05月11日 週刊メンテナンス講座    

記事提供/モトメンテナンス編集部(※この記事はモトメンテナンス101号に掲載された内容を再編集したものです)
取材協力/ポッシュフェイス

カワサキW650ボアアップの画像

カワサキW650ボアアップの画像

ボアアップで“ダブハチ”化に着手
最初の関門は腰上分解時にあり

ボアアップは、手っ取り早く効果的にエンジンパワーを得るためのチューニング法だ。ポッシュフェイスのボアアップキットは、W800の772.6ccを上回る803ccまで排気量アップを実現。これはW650から比べ127.5ccもの増大となっている。これだけ排気量が上がれば、いくら鈍感な人でも、少し走っただけで明らかなパワーアップを体感することができるはずだ。

また、大幅なパワーアップを果たしたとしても、ハードなエンジンチューニング車のように扱いに気を使う心配も無い。フレームや足周りを強化する必要は無いし、オイルクーラーもいらないのだ。なぜなら、W650はあらかじめ開発時に800ccになることを想定していたきらいがあるから。

カワサキW650ボアアップの画像

それを裏付けるのが、650と800のエンジンの共通パーツの多さ。コンロッドやバルブ、ベースガスケット、セルモーターまですべて部品は共用されているのだ。まるで900ccのZ1が開発時にすでに1,100ccまで排気量の増大を見越していたように、W650も800ccになるのが想定されていたのだろう。だからこそ、800ccまでは排気量アップに伴う、車体側の剛性不足やエンジンの耐久性低下の心配は無いのである。ポッシュフェイス製のボアアップキットは、その中で最大の排気量アップを果たす理想的なキットなのだ。

今回のボアアップ作業では、チューニング要素とは別に4万キロを走破したエンジンのコンディション確認、リフレッシュ作業を同時に行う目的もある。そのため、シリンダースリーブの打ち換えと同時にヘッド周りのオーバーホールを行う予定。なので、ボアアップキットの組込みと同時にその辺の作業の模様もご紹介したい。それでは、長期レポートを早速スタート!

腰上の分解作業を追う

カワサキW650ボアアップの画像

腰上分解作業に当たり、燃料タンク、マフラー、キャブレターなど周辺部品を外し、ヘッドカバーを取り外す。オイル管理も良かったのか、中はそれなりに綺麗。

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カムホルダーを外す前にジェネレーターカバーのキャップ2つを緩め、ローターを反時計方向に回してカムを圧縮上死点の位置に合わせる。この時必ずプラグは外しておくこと。

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カムチェーンだったら……と愚痴を言わずに、カム側ベベルギア調整ナットを緩める方向に1回転させて、スナップリングを外した後、ベベルシャフトのカバーを下ろす。

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次にカムシャフトの位置決めをしている板を固定するボルトを緩めるが、通常のメガネでは厚くてアクセスできない。かといってオープンエンドスパナではなめてしまう!!

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ここでは、メガネを薄く削って加工したものを使った。カムホルダーには締付け順序が記されているので、緩める際は逆順(数字の大きい方から)でトルクを抜いていく。

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カムホルダーはロッカーアームが組み込まれている。やっとカムと対面。カムやロッカーアームの当たり面は4万キロなりだった……。カムホルダーのノックピンは2ヶ所にある。

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カムの端にはドリブンベベルギアが付く。実はカムシャフトにWPC加工を目論んでいたが、ベベルギアが圧入式な上、ベアリング単品部品設定が無い!  ので涙を飲むことに……。

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悪名高き8本のシリンダヘッドボルトと対面。やはり番号が振られているので数字の大きい方から順に緩めていく。特に内側はフレームの下なので工具が入りづらい。

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スピンナーハンドルをインナーチューブで延長して一気に強い力を加えて緩めていく。「バキンッ」と嫌な音をたて、無事すべてのボルトのトルクを抜くことができた。

カワサキW650ボアアップの画像

そのままハンドツールで緩めるとボルトが「ギギーギー」っと断末魔の叫びを上げるので、インパクトで一気に抜き取った。ボルトが折れたら内燃機屋さんのお世話になることに……。

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内側のシリンダヘッドボルトは抜く際にフレームに当たるので、ヘッドをずらしながら、うまいこと引き抜く。スタッドだったらエンジン下ろさないと駄目だね。

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ボルトがすべて抜けたら、めでたくヘッドが外れる。左右のシリンダーの間には2本のオイルパイプも通っているのでこれも外れる。やっとシリンダーに辿り着いた。

4万キロ走破のヘッドもリフレッシュ!!

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排気バルブ、吸気バルブ共にオイルで湿った形跡はなかったが、カーボンの付着が顕著。最近のモデルは調子が良くてもカーボンが溜まりやすいとの意見もあるようだ。

カワサキW650ボアアップの画像

燃焼室にもやはりカーボンの堆積が見られた。このカーボンを落としてから、シリンダースリーブの打ち替えと一緒に作業を井上ボーリングさんにお願いする予定。

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W650ノーマルと800ccボアアップキット組込み車(POSH Faith製フルエキキャブトン+キャブリセッティングのみ)の比較パワーグラフ。パワーは44.79psから57.13psへ約12psアップ!! トルクは5.30kgf・mから6.70kgf・mへ1.4 kgf・mアップ!! これでノーマルエアボックス仕様というから、驚き!!

W650、W800、ポッシュフェイス製800ccボアアップキット比較データ

W650 W800 ポッシュフェイス
排気量(cc) 675.5 773 803
ボア(mm) 72.0 77.0 78.5
パワー(ps) 44.79(カタログ50) 48(カタログ値) 57.13(実値)
トルク(kgf・m) 5.3(カタログ5.7) 6.3(カタログ値) 6.7(実値)
圧縮比 8.6 8.4 9.5

比較表を見てもらえば分かるとおり、ポッシュフェイス製ボアアップキットのみ実測であるにも関わらず、すべてにおいて最高値を記録!! 本当に走ったらどうなってしまうのだろうか!?

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