マスターシリンダーのオーバーホール編(後編)

掲載日:2009年12月08日 部位別メンテナンスブレーキ&ホイール    

メンテナンス講座

ブレーキ内部はデリケート
エア抜きまで気を抜かずに作業しよう

マスターシリンダーを分解し、しっかりと洗浄したらいよいよ新しいピストンの組み込みだ。ブレーキ関連のパーツは作業ミスがそのまま重篤なトラブルに直結することが多いため、作業は引き続き慎重に行いたい。特にピストン部分は高圧がかかるため、ゴミなどが残ったりゴム部分を切ったりしてしまうとこれまでの作業が台無しになってしまう。作業が完了したら、次はエア抜きを行おう。新品の内部パーツと新しいフルードが、バイク本来が持つリニアなブレーキ性能をよみがえらせてくれるはずだ。

作業手順を見てみよう!

ピストンにカップを組み付ける際は、カップの滑りを良くするため、あらかじめピストンをブレーキフルードで濡らしておく。またはゴムパーツ潤滑に効果的なCCI製メタルラバーMR20を塗布する。

ピストンにカップを組み付ける際は、カップの滑りを良くするため、あらかじめピストンをブレーキフルードで濡らしておく。またはゴムパーツ潤滑に効果的なCCI製メタルラバーMR20を塗布する。

 

ピストンのカップ溝にカップを収める際は、その手前の出っ張りを乗り越える必要があり、ここで無理にカップを引っ張ると破損する。出っ張りの高さをクリアするための専用工具(ピストンカップインストーラなどと呼ばれる)を用いれば安全だが、汎用性の低い工具なので用意するのも大変。そこで精神を集中して、繊細な手作業にてカップをセットする。Oリング溝にOリングをセットするのと同じ作業だが、ブレーキ操作時のフルードは高圧で、なおかつ漏れは許されない部分なので、カップのリップ部分を切ったり、カップ内側やピストン側のカップ溝にゴミやウエスの毛羽が残らないように注意を払うこと。カップの組み付け方向は、傘が開く方向をピストン先端に向けること。

ピストンのカップ溝にカップを収める際は、その手前の出っ張りを乗り越える必要があり、ここで無理にカップを引っ張ると破損する。出っ張りの高さをクリアするための専用工具(ピストンカップインストーラなどと呼ばれる)を用いれば安全だが、汎用性の低い工具なので用意するのも大変。そこで精神を集中して、繊細な手作業にてカップをセットする。Oリング溝にOリングをセットするのと同じ作業だが、ブレーキ操作時のフルードは高圧で、なおかつ漏れは許されない部分なので、カップのリップ部分を切ったり、カップ内側やピストン側のカップ溝にゴミやウエスの毛羽が残らないように注意を払うこと。カップの組み付け方向は、傘が開く方向をピストン先端に向けること。

 

マスターシリンダー内部のゴミをきれいに取り除き、ブレーキフルードか潤滑剤をスプレーする。スプレーした後に余分をウエスで拭き取ると、その際に毛羽が付く可能性があるので、濡れたままにする。

マスターシリンダー内部のゴミをきれいに取り除き、ブレーキフルードか潤滑剤をスプレーする。スプレーした後に余分をウエスで拭き取ると、その際に毛羽が付く可能性があるので、濡れたままにする。

 

シリンダーに対してピストンを真正面から挿入するとカップのリップ部分が引っかかりやすい。そこでシリンダー端部にリップ部が掛かる部分では、ピストンを僅かにすりこぎ運動させつつ挿入する。

シリンダーに対してピストンを真正面から挿入するとカップのリップ部分が引っかかりやすい。そこでシリンダー端部にリップ部が掛かる部分では、ピストンを僅かにすりこぎ運動させつつ挿入する。

 

スナップリングをプライヤーにセットして、シリンダーのリング溝に収める。この際、ピストンを奥まで押し込んでおくと、リング溝がしっかり確認できるので作業しやすい。

スナップリングをプライヤーにセットして、シリンダーのリング溝に収める。この際、ピストンを奥まで押し込んでおくと、リング溝がしっかり確認できるので作業しやすい。

 

スナップリングプライヤーを外したら、ピックツールや幅狭のマイナスドライバーでリングを押して、溝にしっかり収まったことを確かめる。続いてピストンがスムーズに動くことを確認しておく。

スナップリングプライヤーを外したら、ピックツールや幅狭のマイナスドライバーでリングを押して、溝にしっかり収まったことを確かめる。続いてピストンがスムーズに動くことを確認しておく。

 

マスターシリンダーがフルードで塗装が冒されている場合は、愛知県のパウダーコーティングカトー(TEL0565-48-8917)で耐ブレーキ液性良好の特殊塗料で再塗装してもらうのも良い。

マスターシリンダーがフルードで塗装が冒されている場合は、愛知県のパウダーコーティングカトー(TEL0565-48-8917)で耐ブレーキ液性良好の特殊塗料で再塗装してもらうのも良い。

 

ブレーキホースを取り付けるバンジョーボルトにも、汚れたフルードカスが詰まっているから、きれいに取り除く。自らが潰れて密閉性を保つシールワッシャは新品(右の2個)に交換する。

ブレーキホースを取り付けるバンジョーボルトにも、汚れたフルードカスが詰まっているから、きれいに取り除く。自らが潰れて密閉性を保つシールワッシャは新品(右の2個)に交換する。

 

経路内のブレーキフルードはすっかり抜けてしまったので、仕上げのエア抜きを行う。チューブタイプのワンマンブリーダーがあると、作業がはかどる。アストロプロダクツなら690円で購入できる。

経路内のブレーキフルードはすっかり抜けてしまったので、仕上げのエア抜きを行う。チューブタイプのワンマンブリーダーがあると、作業がはかどる。アストロプロダクツなら690円で購入できる。

 

ワンマンブリーダーを使う際は、ブリーダープラグとキャリパーのネジ溝からエアを吸わないよう、シリコングリスをシール剤代わりに塗ってホースを取り付け、プラグは僅かに緩めておく。ブレーキフルードを補充するさいは、銘柄や規格の異なる製品を混用しないのが鉄則だが、今回の作業ではフルードは完全に入れ替わるので、デイトナ製のDOT-4タイプのフルード(300ml)を使用。

ワンマンブリーダーを使う際は、ブリーダープラグとキャリパーのネジ溝からエアを吸わないよう、シリコングリスをシール剤代わりに塗ってホースを取り付け、プラグは僅かに緩めておく。ブレーキフルードを補充するさいは、銘柄や規格の異なる製品を混用しないのが鉄則だが、今回の作業ではフルードは完全に入れ替わるので、デイトナ製のDOT-4タイプのフルード(300ml)を使用。

 

ブレーキ経路内に溜まったエアは上に抜けようとする。そこでしばらくの間ブリーダープラグを締めたままレバーを軽く操作して、マスターシリンダーのポートからのエア抜けを促進してやる。

ブレーキ経路内に溜まったエアは上に抜けようとする。そこでしばらくの間ブリーダープラグを締めたままレバーを軽く操作して、マスターシリンダーのポートからのエア抜けを促進してやる。

 

ブレーキレバーを握ってスポンジーさが消えてきたら、あらためてブリーダープラグを緩めてキャリパー内部のエアを追い出す。作業が完了したらプラグを締めてワンマンブリーダーを外す。

ブレーキレバーを握ってスポンジーさが消えてきたら、あらためてブリーダープラグを緩めてキャリパー内部のエアを追い出す。作業が完了したらプラグを締めてワンマンブリーダーを外す。

 

パーツクリーナーでブリーダープラグ周辺のグリスとブレーキフルードを洗浄する。ブリーダープラグの穴の中にフルードが残ったままだと空気中の水分と反応して腐蝕するので、特に入念に洗浄する。

パーツクリーナーでブリーダープラグ周辺のグリスとブレーキフルードを洗浄する。ブリーダープラグの穴の中にフルードが残ったままだと空気中の水分と反応して腐蝕するので、特に入念に洗浄する。

 

リザーブタンクの点検窓を参考に、フルードを適量まで補充する。話は戻るが、エア抜き中はタンク内のフルードがホース側にどんどん流れるので“気づいたらタンクが空だった!!”とならないように注意。

リザーブタンクの点検窓を参考に、フルードを適量まで補充する。話は戻るが、エア抜き中はタンク内のフルードがホース側にどんどん流れるので“気づいたらタンクが空だった!!”とならないように注意。

 

ダイヤフラムとキャップをセットしたら、ビスを締め付ける。ネジ溝が崩れるほど傷んでいたら、新品ビスに交換しておきたい。復元前にカウルを装着したので、背の低いスタビドライバーを使用。

ダイヤフラムとキャップをセットしたら、ビスを締め付ける。ネジ溝が崩れるほど傷んでいたら、新品ビスに交換しておきたい。復元前にカウルを装着したので、背の低いスタビドライバーを使用。

 

作業が終了したら太めのゴムでひと晩ほど、レバーを握った状態にしておく。こうすることでごく僅かに残ったエアがさらに押し出され、ブレーキタッチがグッと向上する。レバー操作に対してキャリパーピストンの動きがリニアになるので、OH後はパッドの引きずりなどの不快な症状が収まる。

作業が終了したら太めのゴムでひと晩ほど、レバーを握った状態にしておく。こうすることでごく僅かに残ったエアがさらに押し出され、ブレーキタッチがグッと向上する。レバー操作に対してキャリパーピストンの動きがリニアになるので、OH後はパッドの引きずりなどの不快な症状が収まる。

 

 

 

 

 

 

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索