掲載日:2010年01月26日 部位別メンテナンス › 外装系
「押してダメなら引いてみな!?」
凹みをスライディングハンマーで引っ張り出す
自動車鈑金の世界では、もっとも一般的な凹み修復方法と言える「引っ張り出し」。自動車の鈑金修理工場に行くと、Tスタッドと呼ばれる部品を凹み周辺に溶着し、そのスタッドにスライディングハンマー&フックを引っ掛けて、スコン、スコンと凹み部分を引っ張り出す作業が行われている。鈑金のプロによれば、このスタッドの溶着がポイントだという。タンクとスタッドを電触させることでスタッドと鋼鈑を一体化し、作業を進めるというのだ。実は今回、このスタッド代わりにワッシャーを利用し、そのワッシャーはタンクに溶接することで一体化した。この方法だと、凹み修復後の表面処理に時間を取られてしまい(溶接によって発生した凸部分を削り取らなくてはいけない)、後々の作業がスムーズに行えなくなってしまうのだ。つまり電触で溶着できれば(スタッド端面を溶かして鋼鈑と一体化する)、スタッドを取り外した後の表面処理をスムーズかつ楽に行えるのだ。
しかし、我々サンメカにはそのような専用機器が無いので、今回は溶接でワッシャーを固定した。以上のことからも、このワッシャーを溶接する際には、ガッチリ固定するのではなく、簡単に取り外せる程度の溶接にとどめなくてはいけない。溶接ではなく、鈑金ハンダやロウ付けを利用してワッシャーを固定すれば「後々の表面仕上げ作業が圧倒的に楽になるのでは?」と、作業後に感じたのは事実である。このあたりは反省材料である。次回への懸案項目として忘れてはならない部分だ。とはいえ、やり方次第ではワッシャー溶接法でも、ガソリンタンクの凹み修復は可能だ。事実、今回は我々スタッフがDIYですべての作業を実践したが、それなりの結果を得ることができた。完全な凹みで、しかも折り目が付いてしまったようなガソリンタンクでも、根気良く作業を進めた結果、この大きな凹みは表面が凸凹ながら修復することができた。最終的な表面処理には苦労を強いられるだろうが、例えば前項で紹介したような押し棒の先に平面を作り、フューエルキャップ部分から差込み凸凹部分の裏側に押し当てながら表側からハンマーリングすることで、少なからず表面の凸凹は修復できるはずだ。根気良くあきらめずに作業を進めることで、最善の結果を得られるのは明らかである。
作業手順を見てみよう!
ハクリ剤には液状ゲルタイプとスプレータイプがあるが、今回は缶入りかつ「環境に優しい」というタイプを利用した。まずは容器に小分けする。 | ハケを用意し、修復する個所全体にハクリ剤を塗布する。うっすら塗るのではなく、タップリ塗布した方が効果的にペイントをハクリできる。 | 気温が20度以上ある日なら比較的早くから反応し始めるが、作業撮影日が寒い日だったので、なかなかハクリが開始されなかった。 |
あまりにも反応しないので、ヒーターで患部周辺を暖めてみた。反応が鈍いときはヒーターで暖めると化学反応が促進されるのだ。それにしても遅い‥‥。 | ようやくブクブクと塗装が浮き上がってきたので、スクレパーを利用して浮き上がった部分をしごき取る。強烈なハクリ剤ならこの作業も楽なのだが。 | 一回の作業では全体の半分程度しかハクリすることができなかった。仕方ないので再度ハクリ剤を塗布する。環境に優しいタイプは塗料にも優しいようだ。 |
同じ作業を何度も繰り返して、ようやくここまでペイントを剥がすことができた。凹んではいたものの、ペイント下の鈑金にサビは進行していなかった。 | 今回はスプリングワッシャーを利用し、患部周辺に溶接固定した。前述したようにガッチリ溶接するのではなく、あくまで仮止め程度に溶接する。 | 今回は溶接でスプリングワッシャーを固定したが、一緒に購入してきた角ナットならば平面部分があるので、ハンダやロウ付けでも固定しやすいと思う。 |
最初は凹み部分の周辺のみにワッシャーを溶接し、凹み部分を全体的に引っ張り出す方法を取った。以前にプロがそのような手順で作業を進めていた。 | ある程度引っ張り出したら、折れ目が入っていた部分や引っ張りだし切れなかった部分に直接ワッシャーを溶接。さらに作業を進める。 | ある程度引っ張り出せたら、小型ディスクグラインダーにカッティングディスクを取り付け、タンクを削らないように溶接したワッシャーを取り外す。 |
この作業は慎重かつ丁寧に行わなくてはいけない。手抜きするとタンク表面をガガッと削ってしまうことになる。後々の修復が大変にならないようにね。 | ワッシャーを取り除いたら、溶接棒の残りをディスクグラインダーの先端で慎重に取り除く。この段階では、仕上げてしまおうと思わないこと。 | ディスクグラインダーである程度の凸を削り取ったら、ディスクをシャイネックスの不織布ディスクに交換し、さらに凸部分だけを削り取る。 |
表面がある程度整ってきたら、ガストーチを用意して凸凹部分の慣らし? を行う。鈑金のプロのワザを真似してみようと思う。果たして上手くいくのか? | 一箇所ばかりを集中的に温めるのではなく、凸部分の周囲を平均的に温めながら作業を進める。赤らんでしまうほど集中的に温めないようにしたい。 | 凸凹周辺をトーチで炙り温め、明らかにスライディングハンマーで引っ張り出し過ぎた部分を鈑金ハンマーで軽く叩き元に戻す。やっぱりムズカシイ。 |
さらなるスペシャルテクニック? 凸凹周辺をトーチで炙って赤らむ手前で止め、そこにビジョビジョに濡らしたウエスを押し付ける。 | STEP19の作業によって炙って伸びた鉄板が急激に冷やされて縮み、鉄板がピンと張り平面を取り戻すのだ。その後に平面研磨のオビタルサンダーを用意。 | 鈑金補修した部分を全体的にサンディングすることで、どこが出っ張り、どこがへこんでいるか明確になる。大きな凸部分を削りすぎないように要注意。 |
大きく凹んでいたガソリンタンクがこれだけの作業でここまで回復した。この後に、当て金棒を差し込み、ハンマーリングすれば仕上がりは良くなるはずだ。 |
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