「押し出し棒」を使ってD.I.Yで楽しむ凹直し編

掲載日:2010年01月19日 部位別メンテナンス外装系    

メンテナンス講座

自分でやるガソリンタンクの凹直し
名付けて“デントオーレ?”

転倒や保管時のアクシデントでガソリンタンクがへこんだ場合、バイクショップでは一般的にタンク交換を行う。塗装を剥がして鈑金補修を行い再塗装するよりも、塗装済みの純正パーツを購入した方が早くて安上がりという理由もあるし、そもそもガソリンタンクを鈑金補修する考えがないというのも大きな理由。だが、新品タンクが手に入らない車種だとしたら、鈑金パテを駆使して成形し、修復するのが常套手段となるだろう。しかし、へこみの場所と程度、タンク内部の形状によっては、へこみをパテで埋める前に、タンク内側からへこみを押し出せる可能性もある。さらにうまくいけば、パテ埋めも再塗装も行わず、へこみだけを取り去ることもできるのだ。

 

ここで登場するのが、デント補修というテクニック。デントというのは「へこみ」を意味する英語で、自動車鈑金の世界ではさまざまな形状の特殊な棒で“力点・支点・作用点”のテコの原理を利用してドアパネルやフェンダーのへこみを内側から押し出す技法として知られている。塗装が剥がれない軽度のへこみなら、再塗装なしで修復できるのが特徴だ。バイクのガソリンタンクの場合、自動車のドアやフェンダーに比べてプレス箇所が多くて剛性が高い上に、修理に用いる棒の入り口が給油口に限定されるという弱点がある。また、へこみに折れ筋があったり、プレス部を跨いでへこんだ部分には応用できない。それでも、ホームセンターで入手可能な安価な材料を曲げたり叩いて自作した道具で、へこみが持ち上がった時の快感は格別。“えくぼ”程度のへこみが気になるタンクには、かなり有効なテクニックだ。

作業手順を見てみよう!

実践作業に用いたのは、1965年のヤマハYGS-1用ガソリンタンク。タンク下部に張り出したプレスラインが入り、このラインを境にシルバーとレッドに塗り分けられた仕上げは、今見てもオシャレ。内部にサビはあるが、外観はなかなかきれい。それだけに、おそらく保管中に何かを落として付いたと見られる、上面右側のへこみが玉にきず。

実践作業に用いたのは、1965年のヤマハYGS-1用ガソリンタンク。タンク下部に張り出したプレスラインが入り、このラインを境にシルバーとレッドに塗り分けられた仕上げは、今見てもオシャレ。内部にサビはあるが、外観はなかなかきれい。それだけに、おそらく保管中に何かを落として付いたと見られる、上面右側のへこみが玉にきず。

 

プロは専用ツールを利用するが、サンメカがその手法をまねる際に用いる材料は主にホームセンターの建築材料売り場で調達。適度なしなりと剛性があり、曲げ加工も可能な材料として用意したのは、テント設営時に利用するロープ用のペグ。その他にも長い全ネジやプレハブ建築用のバックル用ネジなど、正しい名称は分からないが使えそうな物をいくつか購入。いずれも単価は100円とか200円ぐらいなので、適当に買い物かごに入れてきた。こういう買い物をしているので、ガレージ内にはワケの分からない部材が増えるのだ。

プロは専用ツールを利用するが、サンメカがその手法をまねる際に用いる材料は主にホームセンターの建築材料売り場で調達。適度なしなりと剛性があり、曲げ加工も可能な材料として用意したのは、テント設営時に利用するロープ用のペグ。その他にも長い全ネジやプレハブ建築用のバックル用ネジなど、正しい名称は分からないが使えそうな物をいくつか購入。いずれも単価は100円とか200円ぐらいなので、適当に買い物かごに入れてきた。こういう買い物をしているので、ガレージ内にはワケの分からない部材が増えるのだ。

 

鉄棒による押し出し補修では、へこみの位置と共にタンク裏の形状も、作業の難易度に影響する。できるだけタンク底面に棒の支点を確保したいので、写真のように底面がフラットな方がベター。ダブルクレードルフレームの背骨を跨ぐようなトンネル形状の底面を持つタンクの場合、押し棒の支点が決まりづらく、作業性が悪くなることが多い。ただ、底面の形状は複雑でも、その複雑さが幸いして支点位置がバッチリ決まる例もあるから、チャレンジしてみよう。

鉄棒による押し出し補修では、へこみの位置と共にタンク裏の形状も、作業の難易度に影響する。できるだけタンク底面に棒の支点を確保したいので、写真のように底面がフラットな方がベター。ダブルクレードルフレームの背骨を跨ぐようなトンネル形状の底面を持つタンクの場合、押し棒の支点が決まりづらく、作業性が悪くなることが多い。ただ、底面の形状は複雑でも、その複雑さが幸いして支点位置がバッチリ決まる例もあるから、チャレンジしてみよう。

 

給油口から患部のへこみ部分までの距離を想定(給油口からタンク底面に接し、それからへこみに当たるまでの長さを考えること)し、適当なペグを選定。バイスに挟んでまずひと曲げ。

給油口から患部のへこみ部分までの距離を想定(給油口からタンク底面に接し、それからへこみに当たるまでの長さを考えること)し、適当なペグを選定。バイスに挟んでまずひと曲げ。

 

棒をどのあたりで曲げればよいかを、給油口からへこみまでの距離にあてがってマジックでマーキング。20ページの大写真のように、タンク外側からも入り具合をチェックしてみる。

棒をどのあたりで曲げればよいかを、給油口からへこみまでの距離にあてがってマジックでマーキング。20ページの大写真のように、タンク外側からも入り具合をチェックしてみる。

 

棒の材料が多少無駄になってもかまわず“へこみを確実に押し出せる棒”を製作しよう。棒の先端が確実にへこみを捉えられるようになったら、その位置をマーキングする。

棒の材料が多少無駄になってもかまわず“へこみを確実に押し出せる棒”を製作しよう。棒の先端が確実にへこみを捉えられるようになったら、その位置をマーキングする。

 

ロープアンカー用のペグは硬くてしなり、なおかつ値段も安くて絶好の材料だった。少しずつ微調整しながら曲げ角度を決めて、ピンポイント用修正棒を完成させる。

ロープアンカー用のペグは硬くてしなり、なおかつ値段も安くて絶好の材料だった。少しずつ微調整しながら曲げ角度を決めて、ピンポイント用修正棒を完成させる。

 

作業台などにタンクを確実に固定して棒を差し入れ、へこみ部分を押しながらタンク外面をハンマーで軽く叩く。タンクをしっかり固定していれば、へこみが徐々に上がってくる。

作業台などにタンクを確実に固定して棒を差し入れ、へこみ部分を押しながらタンク外面をハンマーで軽く叩く。タンクをしっかり固定していれば、へこみが徐々に上がってくる。

 

棒で押しつつハンマーで叩くことで、作業前に比べてへこみはかなり改善した。棒の“しなり”がさらに少なければ、ハンマーなしでもへこみは持ち上がったかも知れない。

棒で押しつつハンマーで叩くことで、作業前に比べてへこみはかなり改善した。棒の“しなり”がさらに少なければ、ハンマーなしでもへこみは持ち上がったかも知れない。

 

棒の支点がタンク底面に当たらず、給油口の縁に掛かったままだと、縁の形状が歪んでしまう。こうなるとキャップが閉まらなくなったり、ガソリンが漏れるなどのトラブルにつながる。

棒の支点がタンク底面に当たらず、給油口の縁に掛かったままだと、縁の形状が歪んでしまう。こうなるとキャップが閉まらなくなったり、ガソリンが漏れるなどのトラブルにつながる。

 

そうした事態に気付いたら、作業を中断して棒を曲げ直す。棒の外側を確認して、どの部分が支点となってタンク底に接しているかをチェックしてから曲げ作業を行うと確実だ。

そうした事態に気付いたら、作業を中断して棒を曲げ直す。棒の外側を確認して、どの部分が支点となってタンク底に接しているかをチェックしてから曲げ作業を行うと確実だ。

 

棒の先端がへこみ部分に当たり、曲げ部分の支点がタンク底にあれば、給油口と棒が触れることはない。余分な干渉がないから加えた力はダイレクトにへこみに伝わるようになる。

棒の先端がへこみ部分に当たり、曲げ部分の支点がタンク底にあれば、給油口と棒が触れることはない。余分な干渉がないから加えた力はダイレクトにへこみに伝わるようになる。

 

へこみに触れる棒の先端が尖っていると、押し出された部分が尖って盛り上がってくる。そうした傾向が見られたら作業を中止し、先端が面で押すようにグラインダーで形状を修正。

へこみに触れる棒の先端が尖っていると、押し出された部分が尖って盛り上がってくる。そうした傾向が見られたら作業を中止し、先端が面で押すようにグラインダーで形状を修正。

 

1時間弱の作業でへこみはここまで回復した。ハンマーで叩いた際に塗膜の1部が割れたが、曲面部のへこみも消えたので、全面パテ修正に比べてこの後の作業はずっと楽になる。

1時間弱の作業でへこみはここまで回復した。ハンマーで叩いた際に塗膜の1部が割れたが、曲面部のへこみも消えたので、全面パテ修正に比べてこの後の作業はずっと楽になる。

 

 

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