Yoshimura HEPTA FORCE TSS CYCLONE スーパースポーツモデルに異形7角形サイレンサーの魅惑のサウンドと新しいスタイルを

掲載日/2024年6月13日
取材協力/ヨシムラジャパン
写真/柴田直行 取材、文/石橋知也
構成/バイクブロス・マガジンズ

HEPTA FORCE TSSサイクロンは、ヨシムラのサイレンサーバリエーションの中でも、ちょっと小振りな異形サイレンサーだ。それがミドルスーパースポーツに見事に似合う。そして音(サウンドと言った方が正しいだろう)は、さらに魅力的。小振りな7角形サイレンサーのマジックだ。

ヨシムラには様々なサイレンサーがラインナップされている。USヨシムラを除く国内のオンロード用だと、主なものだけでも、最もシンプルな円筒形のサイクロン、容量アップのため楕円形としたOvalサイクロン、深いバンク角とハイパフォーマンスを発揮する異形サイレンサーの先駆者であるTri-Ovalサイクロン、Tri-Ovalをさらに進化させたテーパータイプのR-11サイクロン、USヨシムラの異形デザインを国内保安基準に適合させたR-77サイクロン、7角形デザインが斬新なHEPTA FORCEサイクロン、そしてHEPTA FORCEサイクロンの進化系HEPTA FORCE TSSサイクロンなどがある。本当にバリエーションは豊富だ。

250ccにもピッタリのコンパクトさがHEPTA FORCE TSSの魅力の1つ。

HEPTA FORCE TSSは、もともとアジア向けのヤマハR15用として開発が始まったもので、R-11系よりやや小振りだ。R15はスポーティでコンパクトな車体で、それに合わせて新しくデザインすると、当然小さくなる。7角形断面のHEPTA FORCEをベースにしているが、HEPTA FORCEがビッグマシン用なのに対して、HEPTA FORCE TSSは250~400cc用として最適だという。

HEPTA FORCE TSS開発責任者の吉田学さん(現株式会社ヨシムラジャパン製造部部長)。

「小振りで(サイレンサー)容量も小さいです。車両によっては600ccクラスでもイケるかもしれませんが、メインは250~400ccクラスでしょう」と、HEPTA FORCE TSS開発に携わった吉田学さんは語る。

シェル本体は7角形断面で、サイレンサーエンド(カーボン製)は5角形(微妙な1面があり6角形ともとれるが)。

デザインでは、HEPTA FORCEのサイレンサーエンドが、後ろに真っ直ぐなストレートカットなのに対して、HEPTA FORCE TSSは斜めにしたスラッシュカットとして小さいながらも存在感をアピールしている。サイレンサー本体は、HEPTA FORCE と同じく異形7角形。それに続くサイレンサーエンドは、HEPTA FORCE TSSが異形5角形でカーボン製だ。

バンク角、容量、取り付けスペース、軽量化、強度などの要件を満たすための7角形だ。

HEPTA FORCEとHEPTA FORCE TSSは、サイレンサー本体の形状、つまり7角形(=HEPTAGON)がネーミングの由来になっている。これはただスタイルが良いからというデザイン上の理由で採用しているわけではない(確かにカッコイイけれど)。多角形断面はある1面が広いと振動に弱く、最悪破損してしまう。特にヨシムラではサイレンサーシェルに厚さ0.6mmという極薄の成型材(板材から曲げ溶接)を使用しているので、振動には敏感だ。もちろん軽量化のために板厚を薄くするので、STDのように厚さ1.0~1.6mmは使わない。振動面では丸=円筒形が良いが、バンク角、容量、取り付けスペースなどの問題で、最近では採用できない車種が増えた。そこで登場したのが異形多角形だ。

HEPTA FORCE TSSの異形7角形は、絶妙だ。1面があまり大きくならず、強度も高く取れるのだ。ある1面が大きく平たいと振動面でも強度面でも不利になる。R-77は台形断面なのだが、大きな1面は平らではなく、微妙にアールを取った曲面になっているのは、そんな振動対策が理由だ。その点、7角形は振動面でも強度面でも有利で、容量(吸音材の容量)も大きく取れ、同時に音質も良く、サイレンサーとして理想的なのだ。もちろんかなりの軽量化と、エンジンパフォーマンスのアップも果たされている。

Ninja ZX-25RにSlip-On STB(チタンブルーカバー)、Ninja ZX-4R SE/RRにSlip-On SSF(サテンフィニッシュカバー)。

ストリートモデルの250ccのNinja ZX-25Rと400㏄のNinja ZX-4R SE/RRには、スリップオンのSlip-On HEPTA FORCE TSS サイクロン EXPORT SPEC 政府認証がラインナップする。サイレンサーシェルはSSF(サテンフィニッシュカバー)¥98,000(税込¥107,800)と、STB(チタンブルーカバー)¥108,000(税込¥118,800)がある。SSFはチタンのような光沢が魅力でステンレス製。STBはもちろんチタン製。重量はSTDの3.7kgに対して軽量で、SSFが2.5kg、STBが2.3kgだ(約40%の軽量化)。

サイレンサーエンドは400cc用より250cc用の方が小径になっている。

250㏄用と400㏄用のサイレンサーは基本同じで、違いといえばエンドの開口部が250㏄用の方が小さくなっていることだ。JMCA政府認証のマフラーは最高出力発生回転数の50%で計測する(最高出力が5,000rpm以上で発生する機種)のだが、その数値を見るとNinja ZX-25Rが15,500rpmで、Ninja ZX-4R SE/RRが14,500rpmと違いが見られる。

Slio-Onモデルのサイレンサーシェル裏側後部にはJMCA認定を示すパッチがある。

「やっぱり計測する回転数が高くなると音量が増すんです。排気量はZX-4Rの方が大きいんですが、ZX-25Rの方が高回転型なので音量的にはこちらの方が調整に苦労しました」(吉田さん)

両モデルは、ご存知の通りボア×ストロークこそ違うが、同型のエンジンでポートサイズも同じなので、フルエキゾーストのレーシング仕様では、エキパイの管径をNinja ZX-25R用もNinja ZX-4R SE/RR用も、同じφ32mmを採用している。

パンチングパイプ(この外側にグラスウールが入る)はステンレス製だ。

そのレース仕様が、チタン製エキパイを使用したHEPTA FORCE TSS レーシングチタンサイクロン(サイレンサーシェルもチタン)と、ステンレス製エキパイを使用したHEPTA FORCE TSS レーシングサイクロン(サイレンサーシェルはチタンとステンレス)だ。どちらも4-2-1集合でφ32mmエキパイを使用。STDよりもエキパイは短く、サイレンサーの位置もステップの下辺りとショート管になっている。

フルエキのレーシング仕様のサイレンサーは、ステンレスエキパイにステンレスサイレンサーカバーがついたSSF(サテンフィニッシュカバー。写真上。価格¥180,000、税込¥198,000)と、チタンカバー(写真上。価格¥190,000、税込¥209,000)がある。さらにチタンエキパイにチタブルーカバーがついたTTB(チタンブルーカバー。写真下。価格¥223,000、税込¥245,300)とチタンエキパイにチタンカバーがついたTT(チタンカバー。価格216,000、税込¥237,600)が揃っている。重量はZX-25R(2023年型)でSTD9.1kg、ステンレスエキパイ+SSFで5.3kg、チタンエキパイ+TT/TTBで3.9kg。

製品のシリアルナンバーはサイレンサー前部の裏側にレーザーマーキングされている。

サイレンサーエンブレムは、ストリートモデルはメタルパッチなのに対して、これはレーザーマーキングとしている。僅かでも軽量化したいレーシングモデルらしい。また、それぞれサウンドディフューザー(音量調整用)が用意され、装着するNinja ZX-25RもNinja ZX-4R SE/RRも104dBの音量規制値以下に抑えられる。

リベットバンドは軽量タイプ。

取り付け部は鋳造品(ヨシムラのマーク入り)を使う。

スタイリッシュでコンパクトな異形7角形サイレンサーのHEPTA FORCE TSS。本当にNinja ZX-25RもNinja ZX-4R SE/RRに良く似合う。このデザインとコンパクトさは、他の最新スーパースポーツモデルにもマッチしそうなので今後の展開にも期待したい。

INFORMATION

住所/神奈川県愛甲郡愛川町中津6748

営業/9:00-17:00
定休/土曜、日曜、祝日

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。