伝説の『ヨシムラ・ヨンフォア』から生まれたボアアップピストンの画像

伝説の『ヨシムラ・ヨンフォア』から生まれたボアアップピストン

  • 取材協力/ヨシムラジャパン  写真/柴田直行  取材・文/石橋知也  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
  • 掲載日/2017年1月25日

1970年代にヨシムラが発売したCB400FOUR用ボアアップピストンは、ヨンフォアファン憧れのチューニングパーツだった。「最後はこの仕様のエンジンで」というマニアも多かった。これは現在に生きる伝説のピストンだ。

φ54.5mmピストンで398ccは455cc、408ccは466ccに
豊かな低中速トルクが全域でスムーズかつ力強く変貌する

1976年頃、現在のヨシムラジャパンの前身である『ヨシムラパーツショップ加藤』で製作された『ヨシムラ・ヨンフォア』には、φ54mmピストンが入っていた。このCB400FOURは408ccベースで、ボアアップの結果458ccになった。ヨシムラ・ヨンフォアはφ54mmピストンの他、ロードスペシャルカム、強化バルブスプリング、ゴールドカムチェーン、ポーティング、セッティングが変更されたSTDキャブ、メッキスリップオンマフラー、モトコ製シングルシート、アルミリム、S&W製リアショックなどが装備されていた。これは本当にマニア憧れの存在だった。その後ヨンフォア用ピストンはφ54.5mmとなり、それが現行品のヨンフォア用ピストンに引き継がれている。

現行ピストンは当時と同じく鋳造で、デザインも昔風だ。最新型エンジンの、スカートがなく高さが非常に低いピストンデザインとはまるで違うが、昔の深い燃焼室に合わせるのだから、こんなデザインになるのだ。

このφ54.5mmピストンだと、408cc(ストローク50mm)ベースなら466ccに、398cc(ストローク48.8mm)ベースなら455ccになる。圧縮比は398ccベース(CB400E)なら9.6:1だ。STDが9.4:1なので、それほどハイコンプではない。ちなみに408ccベース(CB400FE)だと、圧縮比が上がり過ぎるのでベースパッキンを2枚にして、圧縮比を調整するように指示されている。ベースパッキンが1枚だと、ピストンとバルブのクリアランスも狭くなり過ぎるのだ。

ボアアップ効果は、まず低中速トルクの豊かさとなって現れる。これは昔のφ54mmでもそうだった。チューニングエンジンだと高回転型に思われがちだが、これはちょっと違う。もちろん高回転域はパワフルになるが、下が出ている分、回転の繋がりが良いので高回転型には感じず、充分に速いが扱いやすさが前面に出てくる。旧車にはこんなボアアップエンジンが丁度良い。

このボアアップピストンを入れるなら、TMR-MJN28キャブレターとST-1Mカムは必須だ。この3つが揃えば最高のバランスとなる。ただ、シリンダーの精密なボーリングなどが必要だから、最後に行なえば良いチューニング。もちろん3つ同時に装着すれば最高。「最後はφ54.5mmで」というヨンフォアファンの夢は、現行パーツで叶えられるのがうれしい。こうした旧車用パーツは今後も継続生産して欲しいし、また最新技術を使った新作も期待したい。

3本リングのクラシカルなピストンデザインが当時の最新型

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ヨシムラの文字がモールドされているのはうれしい。これは鋳造ならではだ。性能には関係ないし装着してしまえば見えない部分だが、手にした瞬間に心の回転数が上昇すること間違いなし。

伝説の『ヨシムラ・ヨンフォア』から生まれたボアアップピストンの画像
伝説の『ヨシムラ・ヨンフォア』から生まれたボアアップピストンの画像

ピストンキットにはピストン本体のほか、ピストンリング、ピストンピン、サークリップ、ガスケットセット(ヘッドガスケット1枚、ベースパッキン1枚)が入っている。

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懐かしいデザインのピストン。ピストンリングは3本タイプ。ピンハイトは高いしスカートは全周に渡るが、昔はこんなものだった。

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圧縮比は398ccベースなら9.6:1で面研の必要はない。バルブリセスが深いが、下手な面研は危険だ。408ccベースではベースパッキンを2枚重ねるよう指定されている。

ヨシムラジャパン

ヨシムラジャパン

住所/神奈川県愛甲郡愛川町中津6748

営業/9:00-17:00
定休/土曜、日曜、祝日

1954年に活動を開始したヨシムラは、日本を代表するレーシングコンストラクターであると同時に、マフラーやカムシャフトといったチューニングパーツを数多く手がけるアフターマーケットメーカー。ホンダやカワサキに力を注いだ時代を経て、1970年代後半からはスズキ車を主軸にレース活動を行うようになったものの、パーツ開発はメーカーを問わずに行われており、4ストミニからメガスポーツまで、幅広いモデルに対応する製品を販売している。

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