
実は今回この記事を担当している私自身、過去に所有バイクが盗難に遭った経験を持っている。ハンドルロックはもちろん、前後ダブルでワイヤーロックを使い、柱に留めていたのにも関わらず、しかも数時間での出来事だったことを今も悔しく覚えている。
私の場合は、きっとプロの窃盗団の仕業だったと考えている。いたずらであれば、強固なワイヤーロックを切断まではしないだろうし、後から思い返すと、盗難被害から数週間前にバイクカバーが剥がされていた、つまり窃盗団が下見に来ていたような痕跡があったのだ。
警察に被害届を出しても、自分の足で探し回っても、私の愛車は戻ってこなかった。その頃2000年代初頭は特にバイクの盗難が多く、私が制作に携わっていたバイク雑誌でも、バイクの盗難被害に遭った人々が協力し合って徹底的に探し回った結果、某国に輸出されたコンテナの中で何十台もの盗難バイクを発見したという記事を作ったことがあった。その記事にあった「これから日本に戻すことは難しいかもしれないが、ひとまず見つけられて良かった」と皆口々に言っていたことが印象的だった。
前振りが長くなってしまったが、ここで紹介する『MRファルコン』は、もしも盗難被害に遭ってしまった場合などに、車両を追跡するアイテムだ。GPS衛星通信と、現時点で最も広いエリアをカバーしているNTTドコモの4G回線を使い、詳細な位置情報を拾い上げる。システムそのものは老人や子どもの見守りグッズやロジスティックの運行管理など、すでに様々な分野で活用されており、その性能は実証済み。それをバイク用として特化させたものがMRファルコン。取り扱うのはこれまでも多くのバイクパーツを手掛けてきた老舗『MRレーシング』だ。
本体サイズは47.5×38.5×11.85mm、専用カバーに入れても長辺70mmと非常にコンパクトな設計となっているMRファルコン。どのようなスタイルのモデルであっても、車体に忍ばせることができる。
バイクライフにまつわる様々なアイテムを手掛けてきた株式会社マジカルレーシング。取締役を務める大西雄一郎氏は、以前から大きな問題と考えていたバイクの盗難に対する一手として、MRファルコンの開発に着手し、ようやく販売までたどり着いた。
マジカルレーシングとタッグを組み、MRファルコン本体の機能やクオリティ管理などを担当するアーバンテックの辻和宏氏。自身もライダーであり、MRファルコン開発の立役者の一人だ。同様のシステムを介護業界などで扱ってきた経験を活かす。
MRファルコン本体、専用ケース、そして充電・給電用のUSB-Cケーブルが基本セットとなっている。後述するが、年単位でのプランとなっており、期間が終了すると新たに購入する仕組みとなっている。内蔵バッテリーということを考えても効率的かつ安全性も高い。
使い方は至ってシンプル。基本的にはMRファルコンをバイクのシート下など、車体のどこかに仕込ませておくだけだ。普段日常的に使用する車両であれば、バッテリーからUSB電源を取り出して給電しておけばよいし、バッテリーの減りが気になる様なあまり乗らない車両であれば、MRファルコン本体を充電しておけばよい。電力消費量を抑えるディープスリープ機能も用意されている。
第一の機能として重要なのが位置検索機能だ。MRファルコンを搭載した車両の現在地は、スマートフォンやPCを使って簡単に探すことができる。また、本体に振動感知機能が備わっているので、不審者が車両に触れたり、置いてある車両に何かがぶつかった際などには、ユーザーへ通知が送られてくるため盗難予防にも繋がる。感知レベルの調整も可能だ。
その他にもやあらかじめ指定しておいたエリア内から出た場合や、逆に入ってきた際などに通知が送られてくる機能をはじめとした遠隔操作機能も数多く用意されており、簡単な操作で細かい設定を行うことができる。これら機能を使いこなすことで、ただ単にセキュリティ対策というだけでなく、バイクライフをより楽しむためのガジェットの一つだと考えることができるのもMRファルコンの大きな魅力なのだ。
通信業界最大手であるNTTドコモの4Gエリアを利用することと、高性能GPSを併用することで、MRファルコンの位置情報精度はかなり高い。金属製ボックスなどで囲ってしまわない限り、室内であっても高精度で特定が可能だ。
基本機能となる位置検索を活用し、あらかじめ設定しておいたエリアへの出入りを知らせてくれるトラッカー機能など、使い方のアイデア次第でバイクライフをより豊かなものにできる機能も併せ持っている。
振動感知、給電の開始や終了、エリアへの出入り、バッテリー状況など、様々な通知が細かく用意されており、それらを個々に設定することができる。使用しながら自分の求める使い方に合わせて色々とセッティングを楽しむことができる。
MRファルコンのようなセキュリティアイテムの場合、初めに期間を決めて契約を行い、その期間が終わる前に継続契約を更新すると言うのが通例である。しかしMRファルコンの場合は、1年(44,000円)、2年(77,000円)、3年(99,000円)と用意されたプランの中から一つを選ぶだけ。後日送られてくるMRファルコンの初期設定を行い、使用開始。契約期間が終了したら、その本体の役目は終わり。引き続き使用したいのであれば、再度購入という流れになっている。内蔵バッテリーのライフ消耗の観点から考えると、これは極めて効率的な方法であるとともに、長く乗る予定の車両では長い期間で契約し、逆にすぐに乗り換える可能性があるならば短い期間で購入するということもできる。その都度新品が手元に届けられるため、性能劣化の面でも安心できるシステムだ。
3年プランで契約をした場合は、1日約90円と低コストで抑えられ、愛車に高いセキュリティを持たせることができる。MRファルコン、転ばぬ先の杖ではないが、悲しい思いをしないための保険としてとてもメリットが感じられるアイテムである。
MRファルコンの導入は簡単。専用サイトで購入すると後日本体が手元に届けられ、メールアドレスなどを入力するだけで使用を開始することができる。
MRファルコンは内蔵バッテリーでも使用できるので、バイクを複数台持っている場合などはツーリングで使いたい時だけ乗せ換えて稼働させる、というような使い方もできる。
本体サイドに備わるUSB-Cポートと電源スイッチ。一度起動させれば、電源スイッチに触ることはないだろう。使用温度は-20~60℃、防水防塵性能もIP68と高い基準をクリアしている。