話題沸騰の高性能アクスルシャフト P.E.O. ZERO POINT SHAFT。その、パフォーマンスの秘密に迫る(動画あり)

掲載日/2021年2月9日
取材協力/P.E.O.
写真、取材、文/淺倉恵介
構成/バイクブロス・マガジンズ
カスタムパーツを装着したら、やはり効果を体感したいもの。多くのユーザーが愛車のパフォーマンス向上を実感し、喜びの声を上げている高性能アクスルシャフトとして人気のZERO POINT SHAFT。だが、その一方で「どうしてアクスルシャフトを換えただけで、これほど効果があるのか?」と、疑問を抱く人も少なくないという。もちろん、性能アップにはしっかりとした裏付けがあった。ZERO POINT SHAFTの秘密を開発者に聞く。

アクスルシャフトを交換するだけで
なぜ、足回りの性能が向上するのか?

取り回しが軽くなった、直進安定性が向上した、コーナリングでの接地感が増した等々、装着するだけで走りが変わると話題を呼んでいるP.E.O.のZERO POINT SHAFT。アクスルシャフトを換えただけで、なぜこれほど多くの効果を得ることが出来るのか? ZERO POINT SHAFTの開発者であるP.E.O.代表、水田信行さんに話を聞いてみた。

P.E.O.代表 水田信行さん。精密金属加工のプロフェッショナル。趣味としてバイクを楽しんでいたが、金属加工の知識と経験を活かせないかと考えZERO POINT SHAFTを開発。愛車はBMW R1250GS、H-D Iron1200、カワサキ Ninja ZX-25R他。

「一番の理由は精度の違いですね」

そう切り出した水田さん。水田さんは腕利の金属加工職人で、中でも得意分野は超精密加工。そこで求められる精度は、1/1000mm単位が当たり前。そうした世界で物作りに取り組んできた水田さんからみると、バイクのパーツの精度はいかにも大雑把に感じられたのだそうだ。

「1/1000mm単位で計測すると、バイクのアクスルシャフトは真円が取れていないですし円筒度も低いんです。バイクメーカーさんが定めた交差の範囲内にある部品ですから、性能に問題が出るわけではありません。ですが、アクスルシャフトの精度を上げれば、絶対に機械的に良い状態になることも事実なんです」

アクスルシャフトを精密計測したデータを3Dグラフ化したもの。左がノーマル、右がZERO POINT SHAFT。1/1000mmの世界では、ノーマルは歪に捻れているのがわかる。対して、ZERO POINT SHAFTは見事な円筒形。

バイクのホイールは、アクスルシャフトを軸にして回転する。その軸が歪んでいたら、回転が安定しないことは簡単に想像できるだろう。ホイールがブレながら回っていれば、直進性やコーナリングで悪い影響が出る。しかし、ZERO POINT SHAFTは、ほぼ完璧な円筒形状が持たされているので、軸の歪みでホイールの回転にブレが出る心配はない。また、シャフトの直径に相当こだわって作られている。

ZERO POINT SHAFTのスペシャルモデル「ZERO POINT SHAFT μ」。加工時に磨上の良い個体を選別、自己潤滑性に優れた無電解複合メッキで仕上げている。オイルレス状態でも潤滑性を維持し、非常に高い耐摩耗性を持つ。

「アクスルシャフトはベアリングを介してホイールを支持しています。実際にアクスルシャフトと接触しているのはベアリングです。ベアリングは、モノ凄く高い精度で作られている部品なのですが、組み合わせるパーツも同レベルの精度管理がされていなければ、本来持っている性能を発揮することができません。与圧というのですが、他のパーツと組み合わせた時に、適正な圧力がかかっている必要があるんです。そのためには、アクスルシャフトをベアリングに差し込んだ時に、両者のクリアランスが正確でなければならない。そのためにZERO POINT SHAFTは、徹底的な精度管理を行っているんです。ベアリングの性能を引き出すためのパーツだといえるかもしれません」

スタンダードのZERO POINT SHAFT。熱処理を施すことで高強度が得られる、機械構造用合金鋼SCM435H材を精密加工。三層の特殊メッキで表面処理。表面にはナノレベルの凹凸を持ち高い油分保持性を実現、耐久性にも優れる。

ベアリングは支持する軸をスムーズに回転するための部品。少し前に流行ったハンドスピナーというオモチャを思い出してみよう。少しの力を加えただけで、長時間回転し続けることができるのはベアリングがあってこそなのだ。だが、出来の悪いハンドスピナーは、抵抗が大きいのですぐに回転が止まってしまう。ZERO POINT SHAFTとノーマルのアクスルシャフトにも、同じことがいえる。正確な寸法と形状で作られたZERO POINT SHAFTは、ホイールが回転する時のフリクションロスを大きく低減する。取り回しが軽くなったり、走り出しの勢いが良くなったと感じるのは、それが理由なのだ。

ZERO POINT SHAFTとホイールベアリングのイメージ。シャフトとベアリングの、接触面のクリアランスを適切に保つことが、フリクションロス軽減の重要ポイント。そのために1/1000mm単位の精度管理が行われている。

ZERO POINT SHAFTの成形加工は、全てP.E.O.の自社内で行われる。旋盤で大まかな形に削り出した後、マシニングセンターで細部を加工。そして写真の研削加工で仕上げる。研削加工は精度管理の要で、作業には熟練の技術が必要。水田さんは、研削加工のエキスパートだ。

ZERO POINT SHAFTの効果は、ホイールをスムーズに回転させるだけではない。ここで、プロライダーのコメントを紹介しよう。お話をうかがったのは鈴木大五郎さん。大五郎さんは全日本選手権や鈴鹿8耐など、ビッグレースの経験が豊富なレーシングライダー。モーターサイクルジャーナリストとしても、様々なバイクメディアで活躍中。その大五郎さんの、ZERO POINT SHAFTのインプレッションはこうだ。

鈴木大五郎さんと愛車のBMW R1250GS。レーシングライダー、ジャーナリストとして、またライディングインストラクターとしても活躍中。自らも BKライディングスクールを主催。オンロードだけでなく、本場アメリカで習得したダートトラックのスクールも開催している。

「雑誌の企画でZERO POINT SHAFTをインプレッションすることになったんです。正直なところ、効果を体感できるか半信半疑でしたね。だって、鉄の棒じゃないですか? (笑) ですが、実際に走らせてみたら驚きました。ハンドリングにしっかりとした落ち着き感が出て、サスペンションが良く動いていることが感じ取れますし、タイヤからのインフォメーションというか、バイクから伝わる情報量が格段に増えました」

大五郎さんが感じたバイクからの情報量の増加は、ZERO POINT SHAFTの素材と設計によるものだと考えられる。ZERO POINT SHAFTは機械構造用合金鋼と呼ばれる金属素材(SCM435H)で作られており、熱処理によって非常に高い強度と粘りを得ている。さらにZERO POINT SHAFTは軽量化を意識していない設計をとっている。SCM435H材を使用すれば、ノーマルと同程度の強度のパーツならば、より軽量につくることができる。だが、アクスルシャフトは、万が一にも壊れてはならない安全性に関わるパーツであるため、ZERO POINT SHAFTはノーマルを大きく上回る強度と剛性が持たされている。ホイールを支持するアクスルシャフトの剛性が上がったことで、結果的に足回り全体のパフォーマンスを引き上げているのだ。

サスペンションの性能を引き出す新発想のパーツや
ハーレー用パーツなどニューアイテムを紹介

これまで、アクスルシャフトだけを作ってきたP.E.O.だが、ここにきて新しいコンセプトのパーツをリリースした。それがZERO POINT LINKだ。製品をみるとボルトにしか見えないが、実はコレがなかなか凄いパーツなのだ。

ZERO POINT LINKは、車種別専用設計のサスペンションマウントボルト。素材には合金鋼の中で最高レベルの強度を有する、ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材SNCM447材を使用。航空宇宙分野で使用される、希少で高価な素材だ。ZERO POINT SHAFT μと同じ、自己潤滑性に優れる無電解ニッケルメッキで表面処理。オイルレス状態でも潤滑性を維持し、サスペンションをスムーズに動かす。

ZERO POINT LINKは、リヤサスペンション取り付け専用に開発されたボルト。リンク式のリヤサスペンションは、ショックユニットのマウントやリンク機構の取り付けなど多くのボルトが使用されており、その全てが回転軸を兼ねている。仮に、5本のボルトが使用され、全てに同じような抵抗が発生しているとする。その抵抗が軽減されれば、サスペンションの動きが向上するのは自明の理だろう。製造工程はZERO POINT SHAFTと全く同じ、つまり小さなZERO POINT SHAFTがセットになったような、実に贅沢なボルトなのだ。

国内バイクレースの最高峰、MFJ全日本ロードレース選手権に参戦中のTONE RT SYNCEDGE4413 BMW。P.E.O.は同チームのレース活動をサポートしている。写真のライダーは星野知也選手、ST1000クラスのトップライダーだ。

P.E.O.のパーツは、全日本選手権や鈴鹿8耐といったトップカテゴリーのバイクレースでも使用されており、世界で最も権威ある公道レース、マン島TTで連勝を続ける無限の電動バイク「神電」にも採用されている。過酷なレースを戦うことで、パーツの性能と信頼性を磨き上げているのだ。P.E.O.が現在サポートしているチームのひとつがTONE RT SYNCEDGE4413 BMW。同チームの監督を務める山下 祐さんは、全日本GP-MONOクラスでチャンピオン獲得経験のあるトップライダー。その山下さんがZERO POINT LINKをテストし、確かな効果を確認しているとのことだ。

ベルトアジャスターがスネイルカム式のハーレーに対応した、リヤアクスル用ZERO POINT SHAFTが新登場。プルボルト式ベルトアジャスターとアクスルシャフトのセットで価格は5万8500円〜6万4500円(税抜)。’08年以降のツーリングモデル各車用をラインナップ。対応車種についてはP.E.O.webページか、ZERO POINT SHAFT取扱店で確認とのこと。

現在、ZERO POINT SHAFTの対応車種は2000モデルを超えている。だが、これまで特殊な形状のアクスルシャフトを持つ車種への対応が遅れていた。ハーレーのツーリングモデルもそのひとつ。重量車であるため、取り回し性向上を望むユーザーからの要望は多かったのだが、ベルトアジャスターがスネイルカム式であるため製作が難しかったのだ。そのハーレー・ツーリングモデル対応のリヤアクスル用ZERO POINT SHAFTが待望のリリース。ハーレーの重さに悩むオーナーにとっては、見逃せないニューアイテムだ。

ZERO POINT SHAFTの紹介を動画で見る

INFORMATION

住所/奈良県奈良市北之庄西町2-8-17
電話/0742-62-6808
FAX/0742-50-2350

高性能アクスルシャフト ZERO POINT SHAFTを中心に展開するバイクパーツメーカー。高い金属加工技術を活かした、精密で高精度なパーツ作りが特徴。品質と性能の高さに定評があり、マン島TTで連勝中の電動レーシングバイク「無限 神電」にもZERO POINT SHFATが採用されている。レース活動にも積極的で、代表の水田氏は自らチームを率いて鈴鹿8耐に参戦した経験を持つ。