ホイールベアリングのポテンシャルを引き出す。高精度品質のゼロポイントシャフト
取材協力/P.E.O.  取材・文・写真/木村 圭吾  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2015年7月8日
バイクの構成部品のひとつであるアクスルシャフト。前輪であればフロントフォーク、後輪であればスイングアームとホイールを繋ぐ役割を持つ。ただし、直接は触れておらず、ホイールに組み込まれたベアリング等を介してである。製品精度を高めることでベアリングとの関係を適切にし、フリクションを減少させるというのがP.E.O.の『ZERO POINT SHAFT』だ。それは、長年に渡って培われたモノ作りのノウハウが惜しみなく投入された“バイクに乗ることをより楽しむためのパーツ”でもある。

INTERVIEW

培われたノウハウを生かして
作り上げたゼロポイントシャフト

「ホイールのベアリングが持っている能力を生かす、それが当社のアクスルシャフト『ゼロポイントシャフト』の基本となるコンセプトです」とP.E.O.代表の水田 信行さん。

 

「ベアリングとの接し方が最善となるように製作しています。ですから、バイクが動く際の抵抗が減り、取り回しの際の、特に動き始めが軽く感じられるようになります。車輪の振れも激減しますから、ハンドリングも変わります。余計な力を加えなくとも、行きたい方向に行けるようになる=素直なハンドリングになると言えますね。そのため、コーナリングの倒し込みのきっかけに逆ハンを切るような乗り方をしている人には違和感となることもありますが……」

 

「もともとのエンジン出力は変わりませんから、ゼロポイントシャフトに交換してもパワーアップすることはありません。ですが、パワーロスが少なくなるということはシャシーダイナモの測定結果にも現れています。燃費の向上も期待できそうですが、そのデータは今のところないんです。装着した方は、気持ち良くなってスロットルを開けちゃうらしくて。それでも、燃費が悪くなったという話は聞いていませんので、実質的には良くなっているのではないかと思いますね」

 

水田さんの現在の愛車はBMWのR1200GSアドベンチャーとS1000RR、ヤマハ YZF-R25などで、遠くの出張にもバイクで移動する。しかし意外にも、バイクに興味を持ったのは比較的最近なのだそうだ。

 

「5,6年くらい前に、R1200GSでアフリカ大陸を横断するという動画を見て、それが格好良くて、魅力を感じて自分も乗りたくなって免許を取りました。バイクに乗るようになって人のつながりが増えてきたとき、アマチュアでレースをしている方から『アクスルシャフトを軽くしたい』という相談がありまして、最初は純正のシャフトを削って軽量化することを考えたのですが、加工の際に傷が付くことは避けられない。でも、それじゃ嫌だとなって『じゃあ、1からベストなものを作ってみようか』となったのが始まりです。で、装着した方々から『ノーマルと全然ちゃう! ナニこれ!?』『バイクを押しただけでも違う!』と評価をいただいて商品化も勧められて、事業の一環として本格的に取り組み、その過程では関連する特許も取得しました。素材の選定から熱処理、機械加工、研磨仕上げ、表面処理にノウハウを持っていなければ、ゼロポイントシャフトの製品化は不可能だったと思いますね」

 

「価格的にそう思われているようですが、海外生産品ではありません。素材の調達から国内で行う正真正銘の『Made in Japan, Made in NARA』です」

 

「素材は、機械加工用合金鋼です。これはベアリングとの親和性という観点で選びました。実は、製品になるまでには2カ月近くかかります。熱処理によって生じる『ひずみ』を落ち着かせるためです。で、ひずんだままの状態で加工を施します。そうすれば、製品の状態になって『ひずみ』が発生することはまずありません。その一方で、現行製品以外の素材でもテストを進行中で、適したものがあればラインナップに加わるかもしれません」

 

「BMW Motorrad Japanオフィシャルチームをはじめ、鈴鹿8耐や全日本選手権などのレーシングマシンにも使ってもらっていますが、ゼロポイントシャフトはバイクを速く走らせるためだけのものではありません。ツーリングでの走りが軽快になって、休憩後に再び走り出す際にはバイクを押して歩く負担が減るなど、もっとバイクに乗るのが楽しくなる&もっとバイクを楽しくするためのパーツ、それが『ゼロポイントシャフト』だと思っています」

PICKUP PRODUCTS

約2カ月の製作期間を経て完成する
製品精度管理は1/1,000mm以内

ゼロポイントシャフトの大まかな製造工程を見てみよう。精度を常に追求しており、シャフト径の製品管理は1/1,000mm以内になるようにされている。また、フロントフォークやスイングアームと接するフランジ部分はシャフトと直角になるように加工し、ネジ部分にも品質精度を求めた切削が施される。

 

交換の際は、前後輪をセットで交換することが理想だが、どちらか一方だけとする場合は車検証などを参考にして、重量の重いほうから。車種によってはピボットシャフトもラインナップ設定している。

 

MOVIE

BRAND INFORMATION

株式会社 P.E.O.

住所/奈良県奈良市北之庄西町2-8-17
Tel/0742-62-6808

もともとは、工作機械販売・輸出入関連商社や金属加工会社で、代表の水田さんみずからも機械設計や修理を経験した。そのため、金属加工や製品製造方法など、多岐にわたる知識とノウハウが豊富で、その成果とも言えるのが『ZERO POINT SHAFT』である。適合車種の豊富さも特色であり、国産車、輸入車ともに広くカバーする。P.E.O.の名前は、創業の地が由来で『Product of East Osaka』を略したものだ。

P.E.O.取扱店より

ゼロポイントシャフトとピボットを取り扱っているバイク販売店 Favorite Factoryの店長 まおです。取り付けて一番びっくりしたのは、お店を出て歩道の段差を超えるときの衝撃の小ささでした。走り始めると、乗り心地も良くなっていて、轍やマンホールなどのギャップも気になりません。サスペンションの動きも滑らかになりました。

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