軽い、快適、スタイリッシュ! システムヘルメットの新基準、YJ-21 ZENITHは、どうやって生み出されたのか?

掲載日/2020年7月31日
取材協力/株式会社ワイズギア
撮影、文/淺倉恵介
構成/バイクブロス・マガジンズ
ZENITHはヤマハの純正オプションパーツや、純正ライディングギアを取り扱うワイズギアのオリジナルヘルメット。そのニューモデルYJ-21は、快適性に徹底的にこだわったシステムヘルメットの意欲作。今回、同製品の商品企画担当者に開発時のエピソードを聞くことができた。注目の新製品YJ-21は、どのように生み出されたのか? その秘密にせまる。

FEATURE
システムヘルメットの常識を覆す!?
かつてない軽さと快適な被り心地を実現

フルフェイスに近い安全性と、フリップアップ機構によるジェットタイプ並みの利便性。使い勝手の良さで、人気が上昇中のシステムヘルメット。ただし、どうしても構造が複雑になり、パーツ点数が増えることによる重量増など快適性が犠牲になることがウィークポイントとされてきた。もっと軽い被り心地で、より快適なシステムヘルメットがあれば……。そんな贅沢な望みを実現したのが、ZENITHのニューモデルYJ-21だ。ここでは、商品企画を担当したワイズギアの松嵜さんと森さんに、YJ-21が高性能である理由を語ってもらった。

YJ-21の商品企画を担当したお二人。左は企画を担当された松嵜翔太さん、愛車はXSR900。右は評価と技術面のサポートを担当された森 斗志輝さん、愛車はYZF-R6とWR250R。YJ-21は、バイク乗りがバイク乗りのために作ったヘルメットなのだ。

ZENITHのシステムヘルメットには、YJ-21の先代モデルにあたるYJ-19が存在している。YJ-19も快適性の高さで好評を博してきたが、YJ-21は更にその上をいくモデルとして話題だ。その理由のひとつが軽さ、装着した時の軽快感が圧倒的に違う。これは、よほど軽量に作られているのだろうと想像したのだが、意外にも両者の実重量の違いは数十グラムしかないという。では何故、これほどまでに装着感が違うのか?

「それは重心の位置に理由があります。YJ-19は重量物が頭頂部付近に集中していました。それをYJ-21では後頭部の方に移動させています。ヘルメットは重量に大きな差がなくても、重心位置の違いで装着時に感じる重さが大きく変わってくるんです。YJ-21は重心位置を最適化しているので、頭を振った時や風を受けた時などでも、頭部が安定して違和感を感じにくいようになっています」

YJ-21は、重心位置を後頭部の辺りに設定したことで、今までにない軽い装着感を実現。また、頭全体の”面”でヘルメットを支える設計のため、長時間装着した時の疲労度も軽減している。

また、面白いのはYJ-21とYJ-19を手に持って比べると、実重量では軽いはずのYJ-21の方が、重く感じるという人が少なくないということだ。

「それも重心位置のせいなんです。手に持っただけでは重く感じることがあるYJ-21ですが、被るとすごく軽い。そのギャップに驚かれる方はとても多いですね。イメージ寄りの話になりますが、YJ-19では重量を点で支えていて、YJ-21は頭部全体の面で支える感じに設計されています。フィット感とホールド性にもこだわりました。締め付けるように強くフィットさせるのではなく、頭部全体をソフトにホールドさせるのが狙いです。システムヘルメットはツーリング好きのライダーに好まれる傾向があります。ですから、長時間走行でもライダーを疲れさせない快適性が重要だと考えました。内装の仕様を決定させるだけで、3ヶ月はかけましたね」

長時間装着しての快適性を確認するため、松嵜さんと森さんはヘルメットを被ったままオフィスワークをこなした日もあるというから恐れ入る。当然、実走行テストも入念に行われている。多くのスタッフがテストに参加。個人に合わせた形状で内装のフィッティングを行い、その後実走テストを繰り返し再度フィッティング。そうした作業を繰り返して形状を固めていったという。ヘルメットで大切なのはフィット感。だが、人間の体型は千差万別、頭の形は一人一人異なる。万人にマッチするヘルメットを実現するのは難しい。

「内装にはとにかくこだわりました。形状はもちろん、素材もコストがかかっても、より快適なものを選んでいます。苦労はしましたが、多くの人に満足していただけるヘルメットになったと自負しています。日本人のユーザーさんであれば、誰が被っても100点満点とはいいませんが、80点以上はいただける自信があります」

YJ-21を被った状態で、オフィスワークに取り組む松嵜さんと森さん。これは、ふざけているわけではなく、実際のテストの様子を再現したもの。ここまでして、装着時の快適性を仕上げていったのだ。

この”日本人ユーザー”という言葉も、YJ-21開発時のキーワードのひとつだ。一般的に日本人の頭部は幅広、欧米人は前後幅が長いとされる。海外メーカーのヘルメットを被ると違和感を感じる人は、ヘルメットの内部形状と頭の形がマッチしていないのが原因であることが多い。その点、YJ-21は徹底して日本人の体型に合わせて設計されているので安心だ。

「走行時の騒音低減もテーマのひとつでした。大きな問題となる風切り音は、ヘルメットの外側で発生します。システムヘルメットは、フリップアップ機構を設ける分左右に張り出しがあり、そこが風切り音の発生源のひとつになっていました。YJ-21はフルフェイスタイプと同じように、側面に張り出した部分がありません。そのため従来品に比べて、風切り音を大幅に低減することができました。また、余計な音が発生しないように、凹凸になりやすいエアベントなどのパーツは可能な限りフラッシュサーフェイス化しています。内装を首までカバーするような形にすることで、隙き間を塞ぎ遮音性も向上させています。風切り音が出ていても、ヘルメットの内側まで聞こえてこなければ問題になりませんから」

YJ-21は、チンガードのフリップアップ機構が帽体の内部に設けられている。一般的なフルフェイスヘルメット的なルックスを実現すると共に、空力性能も向上させているのだ。

帽体の表面は可能な限りフラッシュサーフェイス化されている。突起物を減らすことで、風切り音の発生を抑えている。

快適性に徹底的にこだわり、日本のライダーが日本で走るために特化した設計。それがYJ-21というヘルメットなのだ。ツーリングに、通勤・通学に、あらゆるシチュエーションで活きるシステムヘルメット。その使い心地を、是非体験してみたい。

PRODUCT
基本性能の高さだけじゃない! 細部へのこだわりもスゴい
YJ-21の便利で快適なディティールに迫る

YJ-21で追求したのは快適性。そのこだわりは、軽いかぶり心地やフィット感といった基本性能だけにとどまらず、使い勝手の向上にも配慮されている。たとえば、人気の機能である開閉式のサンバイザー。バイザーの面積を限界まで大きくし、バイザーのデメリットである視界の欠けを排除。もはや装備が常識のインカムの取り付けにも対応。それも、ただスピーカーホールが設けられているのではなく、スピーカーを無理なく格納できるスペースが確保されている。とにかく使い勝手の良さが最優先。隅々まで行き渡った、快適性への配慮が嬉しい。

開閉式のサンバイザーを装備。サンバイザーの面積は、従来モデル比で111%に大型化。5mm以上下まで延長したことで視界のカバー範囲が広がり、眩しい光をカットする。本体左側面の下部にサンバイザーの開閉レバーを設け、最小限の動作で開閉が可能。

シールドの左右にグリップを設けることで、停車時のシールド開閉が両手のどちらでも行える。シールドの素材はUVカット効果も持つ。ピンロック対応(別売り、近日発売)なので、寒い時期のシールド曇りにも強い。

マウスベントからの空気流入量は、なんとYJ-19の2.65倍!! 通気性の向上により、装着時の息のこもりの大幅軽減を実現している。

インカム装着時に便利なスピーカーホールを装備。また、配線を通すための溝が設けられているので、インカム設置スペースの悩みから解放。眼鏡スリットも装備しており、眼鏡ユーザーにも優しい。

チークパッドのV字型の部分には、ファブリック素材で覆われている。これは、インカム使用時、耳がスピーカーと擦れるのを防止するためのもの。吸汗性・速乾性に優れ、殺菌効果を発揮するるSUPER COOL内装だ。快適な使い心地の追求は、ここまで徹底されている。

YJ-21のカラーは4タイプがラインナップ。N.グレー(左上)、メタルブラック(右上)、パールホワイト(左下)、セミフラットブラック(右下)。サイズはS/M/L/XL。JIS2種・SG規格対応。

INFORMATION

ヤマハ発動機グループの純正アクセサリー専門会社。バイク用品、バイクカスタムパーツをはじめ、ボート・マリン用品、電動アシスト自転車用品など、ヤマハ製品に関するアイテムを豊富にラインナップしている。ZENITHは、同社のオリジナルヘルメットブランド。ヤマハ製バイクはもちろん、幅広いモデルで使用可能な高い性能と優れた品質で人気を集めている。