
『KEYSTER』のブランド名で、キャブレターの内部パーツを供給しているのが岸田精密工業だ。各車種の純正キャブレターのセッティングに必要なパーツがパッケージングされた『燃調キット』がリリースされており、日本国内はもちろんのこと、海外のユーザーからも高い評価を得ている。
そこに新たに加わったのがFCRキャブレター用の燃調キットだ。これまでの純正キャブ用の製品と同様にリーン(薄い)、リッチ(濃い)に振ることができるのはもちろんのこと、従来では不可能だった『FCRキャブレターの完全フルオーバーホール』が行なえるようになったのが特筆すべき点である。
それはミドルボディ部分に使われているパッキンの供給が可能になったからだ。つまり、以前はその部分の分解・清掃までは実施できてもパッキン類は状態に関わらず再使用しなければならないという、状況としては不完全なオーバーホールであったともいえるのである。もちろん他のガスケットなども付属しており、完全な工場出荷状態には至らないが、それに近付けられるようになったのは、大きな進歩といえるだろう。
新たに導入された工作機械によって、それらパッキンの内製が可能になったことによる成果だ。以前の記事を見てもらえれば解るように、岸田精密工業のウリの一つが、大半を自社生産していることにある。削り出しで作られるジェット類然り、打ち抜きで作られるガスケット類然りである。それらは長い年月に積み重ねられた膨大なノウハウに裏打ちされており、信頼と安心のブランドとなっている。
こちらはカワサキZRX400用のFCR燃調キット。仕切りの付いたプラスチックケースに入った状態でユーザーに届く。4連キャブレターだから、ガスケット類は4枚ずつ入っているなど、必要なパーツは数が揃った状態だ。
ミドルボディに用いられるパッキン類。これらの自社生産が行なえるようになったことで、FCR燃調キットのリリースに至った。ネジも付属している。
向かって右側が、パッキン類が組み込まれたミドルボディであり、これが左のFCRキャブレター本体に挿入されてネジ留めされる。
ジェットニードルは、サイズ違いが4種類で、各4本ずつ入っている。素材は真鍮であり、その丸棒からNC旋盤で削り出されている。
メインジェットは、こちらのキットでは6種類。それが4つのキャブレター分だから、総数では24個入っていることになる。
パイロットジェットは3種類。小さな部品ではあるが、ネジ切りや穴あけ加工などが施されている。