乗り味や楽しさはそのままに、ライダーの体格に合ったセットアップを。
掲載日/2019年7月24日
取材協力/IMPALA CO.,LTD (KTM KOBEHusqvarnaIMPALA)
取材、写真、文/木村圭吾
構成/バイクブロス・マガジンズ
魅力的なラインナップを持っているKTMやハスクバーナ。だが、そこは全世界をカバーするメーカーのため、車高など日本人の体格には合わない部分も多い。その合間を埋めるために、サスペンションのスペシャリストでもあるKTM神戸・ハスクバーナIMPALAでは、それに手を加えて、乗り味や楽しさはそのままに、特に多い足着きへの不安を大幅に改善するなど、それぞれのライダーに合った仕立て直しをしている。

車高を下げて足着き性は向上させても
ハンドリングや乗り味は変えない

KTMやハスクバーナの各車種において『車高調整』を積極的に展開しているショップがインパラだ。その目的の一つには、足着き性の向上がある。その部分だけを抽出して見ると車高を下げた、すなわちローダウン加工を言い換えただけのようにも思えるが、決してそうではない。

最大の特色は、ベース車両の持っている乗り味やハンドリングを車高調整後も最大限にキープしている点にある。つまり、そのモデルの魅力や面白さはそのままに、足着きの不安を大きく和らげており、乗れるバイクの選択肢が増えることでもあるのだ。

車高を下げるには幾つかの方法があるが、一番手間の掛かるものとしては、前後サスペンションの長さを短くする方法だ。けれども、単にバネをカットして組み直しているのではないし、それではサスペンションの動きが固くなって乗り味が変わってしまう。ユニットを短く加工した分、長さの短い専用(それも各ユーザーの体重に合わせた)スプリングに変更されている。

フロントフォークの長さを短くする40mmカラーと短い専用スプリング(手前)。上のノーマルスプリング(奥)より40mm短い。リヤサスペンションの場合もストローク量調整の考え方は同じだが材質、構造は大きく異なる。

内部のカラー変更で全長が4cm短く制作されたフォーク(手前)と、それを施す前のノーマル(奥)

フルメンテナンス(全て分解)ができるリヤサスペンションは全て内部パーツのサイズ変更で調整するのだが、分解の出来ないタイプは短いエンドアイに組み換える。

サスペンションの長さを短くすることで車高を下げて足着き性を向上しながらも、ハンドリングを含めたノーマルの乗り味を損なわないバイクになっているのは、ライダー体重に合ったスプリング選択でメーカー推奨の跨り時の沈みこみ量まで計算しているからだ。

言うなれば、各ユーザーに合わせたセットアップであり、それは服を体に合わせるのと似ている。パンツのサイドのアジャスターを調整してウエストを合わせたりとか、裾の長さを合わせて床に引き摺らないようにするといったことは特別なことではない。

ただしパンツの裾上げと大きく違うのは、サスペンションを短くするに当たっては構成内部のパーツの切断などを行っていない為、車両の扱いに慣れたなどでノーマルの車高に戻したくなった時に、戻せるのもメリットとして挙げられるだろう。

エンドアイの交換やサスペンション自体分解できない場合は、リンクブロックの変更で車高を調整。乗り味が変わらないよう計算されている。エンドアイに比べると大きく、パーツ代だけでも高くなっているのは容易に想像できる。

「少しだけ足着き性を向上させたい」ような場合には、シート側での対処で済むこともある。シート高自体は同じでも、形状を変えることで改善することも。また、足の曲がりがキツイ場合は座面を高くして対応したりもする。インパラではバイク用シートに定評のある野口装美のコラボで製作している。

足着き性の向上に伴い気になるのがバンク角の減少だが、各モデル、サーキットでの走行テスト済、走行会レベルでは全く問題なし。レースとなれば別だがもっとも、サーキットでは一旦コースインすればピットへ戻ってくるまでは足を着く必要はなく、それでも車高を下げるかは微妙なところだ。ツーリングで峠を楽しむ程度では何ら支障は無く、それよりも足着き性の向上によるメリットの方が遥かに大きいのは言うまでもないだろう。

車庫調整のほとんどの場合では車高を下げる方向とされることが多いが、身長の高いライダーでは、膝の曲がりを緩やかにするためにシートの『あんこ盛り』などが施される場合もあり、前後サスペンションの長さを伸ばす加工や、ノーマルのスプリングでは沈みすぎる場合も硬いスプリングに変更することで対応できるそうだ。いずれの場合でも、基本はバイクを各ライダーの体に合わせるということであり、乗ることへの躊躇が軽減されるのは、大きなメリットとなりえるだろう。

ライダー体重に合わせたスプリング変更はノーマル車高でもおすすめ。どのくらいのレートにするかは、基本的には各車種ごとにライダーの体重別のチャートがあり、それに従っている。

それでは、実際に足つき比較を見てみよう

KTM790DUKEのノーマル車高(4㎝調整した車両の前後輪の下に板を噛ませて再現している)に、身長155cmの方が跨がった状態。何とか両足の爪先が届いている。

フロントフォークのショート化、リアショックのエンドアイ交換でマイナス4cm車高調整したもの。シートもオリジナルに変更でさらにマイナス3cm、いわゆる『ベタ足』で、安心感は高い。KTM神戸では試乗車にもなっているので、実際に乗り味などを確かめられる。

ハスクバーナのSVARTPILEN701のノーマル車高(4.5㎝調整した車両の前後輪の下に板を噛ませて再現している)。身長155cmでは、片足の爪先がやっとの有様だ。

フロントフォークのショート化、リアショックユニットはそのままで、リンクブロックを変更してノーマルからマイナス4.5cmの車高に。流石にベタ足にはならないが、止まるには支障のないレベルに。

KTM神戸2階では純正アイテムであるKTMパワーウェアを豊かなバリエーションで多数展示している。ライディングギアからグッズまでが揃い、イメージカラーのオレンジが映えている。

こちらはハスクバーナの展示スペース。車両の他には、ハスクバーナのウエアやグッズなども置かれていて、ファンならずとも見ているだけでも楽しい空間になっている。

INFORMATION

住所/兵庫県伊丹市昆陽4丁目129-1
電話/072-785-0061
営業時間/10:00〜19:00
定休日/第1・3・5水曜、第2・4木曜、レース及びイベント時

兵庫県内で唯一となるKTM正規ディーラーKTM神戸、ハスクバーナIMPALAの母体でもあり、同店はオンロードモデル、オフロードモデルの境なく、全てのKTM、HQV製バイクを取り扱う。豊富な経験と知識を持ち、車両販売だけでなくメンテナンスやカスタマイズも任せられる。WPテクニカルサポートショップでもあり、サスペンションについてもスペシャリストといえる。