走行性能はそのままに足着き性を改善するKTM神戸のローシャーシモデル
取材協力/KTM神戸  取材・文・写真/淺倉恵介  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2016年3月9日

走りの面白さで好評のKTM。けれど、ヨーロッパのメーカーらしく車格が大きめなため、小柄なライダーにはやや敷居が高い。身長が足りないから、体力に自信がないから、そういった理由でKTMオーナーになることを諦めていたライダーに朗報だ。走行性能を損なうことなく、シート高を下げたKTM神戸のローシャーシモデルなら、どんなライダーもKTMを楽しむことができるのだ。

INTERVIEW

多くのライダーにKTMを楽しんで欲しい
その気持ちが生みだしたローシャーシモデル

足着き性の良し悪しは、深刻な問題。足着きが悪いと、せっかく手に入れた愛車も、乗るのが億劫に感じてしまうものだ。特に、輸入車は車格も大きく、シート高が高い車種が多いため、購入を諦めているライダーも少なくないだろう。

 

そんな悩みを解消してくれるのが、KTM神戸が展開するローシャーシモデルだ。これは、一言でいえば車高を下げ、足着き性を向上させるローダウン加工の一種。だが、あえて「ローダウン」という言葉を使わず「ローシャーシ」としているのには、当然理由がある。

 

ローダウン加工にはシートのアンコ抜きや、フロントフォークの突き出し、リアサスのリンク変更などの手法が一般的だが、乗り心地やハンドリングの悪化など、効果の割に弊害も少なくない。では、KTM神戸のローシャーシモデルはなにが違うのか?

 

基本は、ショートタイプのエンドアイを使用したり、ショックユニットをモディファイしてのショートストローク化などを施し全長を短くすること。サスペンション特性に大きく影響するダンパーには手を加えないため、ストローク量以外の基本特性はそのまま。ユーザーの好みに合わせたオーダーメイドで製作されるので、自分の乗りたいモデルのローシャーシ化が可能だ。

 

また、切断や溶接という後戻り出来ない加工は行わないので、完全なノーマル車高に戻せるのもポイント。バイクを購入し、操り切る自信が持てない時はローシャーシ仕様で走り、バイクに慣れたら標準仕様に戻すことも可能だ。そんなローシャーシモデルの発案者であるKTM神戸の山鹿代表に、開発経緯を聞いた。

 

KTM神戸代表 山鹿延也さん

バイクのメンテナンスショップを経て、KTM神戸をオープン。ライディングからメカニズムまで、バイクのすべてに精通するエキスパート。ライダーとしてモトクロスに参戦していた頃サスペンションの知識を深めた。「ライダー個々で理想のサスペンションは違う、だから造り手としてはやり甲斐がある」と語る。

リアショックユニットのオーバーホールを行う山鹿さん。KTM神戸は、KTMに純正採用されているサスペンションメーカー「WP」が認証するWPテクニカルライセンスショップ。オーバーホールからモディファイまで、安心して任せられる。

「走りは面白いのに、足着き性が悪いという理由だけで選択肢から外れるのは勿体ないですよね? 足着き性を良くすれば、もっと多くの人に好きなバイクを楽しんでもらえる。スタートはそこです。

 

ですが、従来の足着き性の改善手法は、効果と弊害を考えるとお薦めできませんでした……。試行錯誤を繰り返してローシャーシモデルに辿り着いたのですが、おかげ様で乗り味を損なうことがないと好評を頂いています。『乗り味が硬くなりませんか?』と、よく聞かれますがそういうこともありません。スプリングを短く切るシャコタン仕様と混同されているようですが、全く違う方法ですから、安心して欲しいですね。

 

KTMが設定するユーザーの基準体重が75kg~85kg、日本人の標準体形からすると重めです。当店ではオリジナルのスプリングも用意していますし、ユーザーの体格に合わせたサスペンション構築し、乗り心地や走りを最適化することも可能です。足着き性のためだけに、他の要素を犠牲にはしない。それがローシャーシモデルの考え方です」

 

そう聞けば、走りを体感してみたくなるもの。まずは690デュークのローシャーシモデルを試乗。気になる足着き性だが、シート高は70mmも下がっている。今までは両足の指の付け根までしか接地しなかったが、ほとんど両足の踵まで接地しそうだ。個人的には足着き性に不満を感じてはいなかったのだが、この安心感の違いは大きい。

 

走り出すと、重心が下がりマシンを振る時の手応えが強まっているのが感じられる。だが、運動性が下がっていることはなく、690デュークならでは軽快なハンドリングは健在だ。Uターンも試してみたが、安心感はノーマルの比ではない。足着き性の重要性を再認識させられた。車高を下げたことで、バンク角が犠牲になると聞かされていたのだが、ステップが接地することも無かった。サーキットを攻めるのでもなければ、まず問題ないとのこと。また、ストロークは減っても底突きしないようにセッティングされているので安心して乗ることができた。

 

次に乗ったのは1050アドベンチャー。フルサイズのアドベンチャーツアラーで、車格はかなり大きい。レポーターの身長は163cm、体重57kgと小柄で、この手のマシンの取り回しは厳しい。だが、ローシャーシ仕様に跨がったところ、これなら愛車にしてもいいかも? と思うことができた。

 

ノーマルでは片足がやっとだが、50mm下げられたシート高のおかげで、両足のかかとがやや浮く位で、片足だとかかとは着く。何かあっても支えられるという確信が、ライダーをリラックスさせ走りの楽しさを倍加させてくれる。ハンドリングの違和感は微塵も感じられなかった。

 

今まで、選択肢に入らなかったバイクが視野に入ってくる。これは、世界が広がるのと同じこと。体格の問題でKTMを諦めていたのなら、是非KTM神戸のローシャーシモデルを試してもらいたい。憧れのマシンを、思う存分楽しむことができるだろう。

KTM神戸の店内には、KTMの人気モデルが勢揃い。ローシャーシモデルの試乗車も多数用意されているので、実際に目で見て跨がって、走りを確かめることができるのだ。

PICKUP PRODUCTS

コストは抑えながら効果は抜群
それがKTM神戸のローシャーシモデル

KTM神戸のローシャーシモデルは、リーズナブルな価格も魅力。例えば、スモールデュークシリーズと、スモールRCシリーズの場合、サスペンションとシートがセットの基本仕様で車両価格プラス13万6,000円(税込み)。690デュークの場合、基本仕様で車両価格プラス15万8,000円(税込み)。社外品のサスペンションパーツを購入することを考えれば、費用対効果は非常に高い。

 

KTM神戸では、ローシャーシモデルの試乗車を常時複数用意。スモールデュークや人気のRCシリーズ、アドベンチャーツアラーからスーパーデュークまでラインナップは豊富。是非一度、その足着き性と走りの良さを体感してみよう。KTM神戸のローシャーシモデルは、新車でのコンプリート販売だけでなく、車両持ち込みでのモディファイにも対応してくれる。既にKTMのマシンを手に入れており、足着き性に悩まされているユーザーには朗報だ。

 

690デュークのノーマルとローシャーシモデルを比較。ローシャーシモデルは、フロントフォークをショートストローク化。リアショックユニットには、オリジナルのショートタイプエンドアイを使用し、サスペンションで50mm下げ、シート形状の変更で足つき性を-20mm、完成後のシート高はノーマル比で70mmダウン。

ノーマルの690デュークに、身長166cm、体重50kgのライダーが跨がったところ。足着き性の参考にして欲しい。両足が指の付け根、足踏まずの手前までは接地している。モデルはKTM神戸スタッフの白幡さん。

690デュークのローシャーシモデルに跨がったところ。両足の踵近くまで接地している。下半身が安定したおかげで、上半身もリラックスできていることが解る。これなら、走りに余裕が持てる。

250デュークのノーマルとローシャーシモデルを比較。ローシャーシモデルのシート高は、ノーマル比で90mmダウン。サスペンションのショートストローク化で-60mm、オリジナルシートで-30mmの計90mmダウン。

ノーマルの250デュークに跨がったところ。両足とも足の裏の半ばまでが接地している。

250デュークのローシャーシモデルに跨がったところ。両足の踵がしっかり接地して、膝にも余裕がある。これなら身長160cm以下のライダーでも、足着き性に問題を感じることはないだろう。

ノーマルのRC250とローシャーシモデルのRC390を比較。RC390、250、125の各モデルは、車体は基本的に共通なので同条件の比較と考えていい。また、ローシャーシも同様に可能だ。RC390ローシャーシモデルは、フロントフォークをショートストローク化。リアショックユニットには、オリジナルのショートタイプエンドアイを使用し、シート高はノーマル比で60mmダウン。

ノーマルのRC250に跨がったところ。両足とも指の付け根までが接地している。バーハンドルと比べ前傾のライディングポジションにより、下半身が上半身に引っ張られるため、シート高の数値以上に足着き性は良くない。

RC390のローシャーシモデルに跨がったところ。両足がほとんど踵近くまで接地している。下半身に余裕が増えたために、上半身もリラックスできるようになった。

10RC390ローシャーシモデルの仕様に加え、KTM純正オプションのエルゴシートが装着されたRC125。エルゴシートは、単体ではノーマルより厚みがあるのだが、サイドを絞った形状で足着き性が向上する。両足が踵までべったりと接地し、膝にも余裕ができているのが解る。車格がコンパクトな割にシート高が高めのRCだが、低身長のライダーでも楽しめるようになった。

11これはフロントフォークの内部パーツ。さまざまなサイズの樹脂製のカラーがあるが、このカラーを組み替えることでストローク量を任意で調整出来る。

12こちらはリアショックユニットの内部パーツ。手前の金属製のパーツを組み替えることでストローク量を任意で調整出来る。

13リアショックの全長を縮めるのには、内部パーツの変更だけでなく、長さの短いパーツも使用する場合もある。これは、そのひとつで、KTM神戸がオリジナルで製作したショートタイプのエンドアイ。右端の物はノーマルよりも10mmアップが目的のエンドアイ。

14KTM神戸がオリジナルで製作している、ユーザー体重に合わせたリアサスペンションのスプリング。(参考までに日本人平均体重は68kg)

15フロントフォーク用のスプリングも、日本人の平均体重に合わせたオリジナルパーツを製作している。各モデル用の前後セット販売が有り体重40~100kg以上のライダーもカバーしている。

16オリジナルのシートは、シートのスペシャリストである野口装美とのコラボで製作。KTM各車種用がラインナップされる他、内部フォーム、表皮レザー、ステッチの色も選べフルオーダーでの製作も可能。

17ローシャーシ化するとサイドスタンドもショートタイプが必要になる。KTM神戸では、ローシャーシモデルに対応したサイドスタンドもオリジナルパーツとして用意している。

181290スーパーデュークRのローシャーシモデル。シート高は、前後サスペンションのショートストローク化で-20mm、オリジナルシートで-30mm、ノーマル比で計50mmダウンを実現。試乗車の前後サスペンションスプリングは、体重65~75kgのライダーを想定した、オリジナルスプリングが組み込まれている。

191190アドベンチャーのローシャーシモデル。シート高は、前後サスペンションのショートストローク化で-30mm、オリジナルシートで-20mm、ノーマル比で計50mmダウンを実現。

20エンデューロモデル250 EXC-Fのローシャーシモデル。こうした本格的オフロードモデルも、ローシャーシモデル化が可能だ。シート高は、前後サスペンションのショートストローク化で60mmダウン。前後サスペンションのスプリングは、体重55kg~65kgのライダーを想定した、オリジナルスプリングが組み込まれている。メーカー純正では未開発のSIXDAYSモデルに装着される4CSフォーク用ローシャーシも-40mmと-60mmのラインナップが有る。

21ファンオフロードモデルのフリーライド350のローシャーシモデル。シート高は、前後サスペンションのショートストローク化で40mmダウン。前後サスペンションのスプリングは、体重55kg~65kgのライダーを想定した、オリジナルスプリングが組み込まれている。

22KTM神戸の2階は、純正オプションのKTMパワーウェアを大量展示。ライディングギアはもちろん、スタイリッシュなアパレルや楽しいグッズなど、KTMファンにはたまらないアイテムが勢揃い。見ているだけでも楽しめる。

SHOP INFORMATION

KTM神戸

住所/兵庫県伊丹市昆陽4丁目129-1
TEL/072-785-0061
営業時間/10:00~19:00
定休日/第1・3・5水曜、第2・4木曜、
レース及びイベント時

兵庫県内で唯一となるKTM正規ディーラー。オンロードモデル、オフロードモデルの境なく、全てのKTM製バイクを取り扱うオレンジショップ。豊富な経験と知識を持ち、車両販売だけでなく、メンテナンスやカスタマイズも任せられる。WPテクニカルライセンスショップでもあり、サスペンションについてもスペシャリストといえる。