掲載日:2018年02月05日 トピックス
車両協力/キムコジャパン 取材・写真・文/西野 鉄兵、『アウトライダー』編集部
キャンプツーリングは、バイクのポテンシャルを確かめるうえでもっとも分かりやすいと思っている。ロングツーリングに出るためには、ある程度の積載力はなければならない。野営道具を一式持ってキャンプツーリングが快適にできれば、どんな長旅だってできてしまうからだ。
結論から言うと、やはりビッグスクーターのキャンプ旅は快適だった。シート下に大容量のラゲッジスペースがあり、リアシートの座面も広い。それに加えAK550にはさまざまな便利装備があって、大荷物を積んでも負担を感じさせないものだった。
キャンプをしてみて役立ったアレコレを順に紹介していこう。
荷物は主にシート下とリアシートに積んだバッグに収納した。シート下のラゲッジスペースは容量が大きく、リアバッグは普段よりコンパクトなものにできた。
シート下ラゲッジスペースの最大のメリットは防水ということだ。だからここにはとくに濡らしたくない着替えや寝袋を詰め込んだ。
大雨の中を走るとシート下ラゲッジスペースに浸水してしまう車種がまれにある。AK550はどうなのか? コイン洗車場の高圧洗浄機を使って検証してみたところ、シートの裏側に少し水滴は付いていたものの、内部への浸水は皆無。ラゲッジを縁取るように配されたゴムパッキンが防いでいるのだろう。台風クラスの豪雨でも問題なさそうだ。
リアシートには容量31リットルのバッグを積載し、シート下に入りきらなかったテントやマット、椅子、テーブルなどを積んだ。通常、筆者がミッション車でキャンプツーリングに行く際は、容量60リットルを越えるバッグを積載しているので、半分はシート下に移せた格好だ。
リアシートの座面の広さも嬉しい。容量50リットルくらいまでのドラムバッグなら、積載状態でライダーに一切干渉しないだろう。
また荷物だけでなく、人も乗りやすい。タンデムを試すとライダーとタンデマーの間に10cmほどの隙間ができた。リアシートの方が着座位置が高いため、前方の景色も覗きやすい。スクーターだからギアチェンジもなく、後ろに座ったほうが快適なくらいだった。さらにバックレスト付きのトップケースなどを装着して背もたれを作れば完璧だ。
タンデムステップは折りたたみ式のコンパクトなタイプ。ステップボードの方が安心感がありそうだが、案外こちらの方が踏ん張りが利く。スタイリングがすっきりしているのも魅力だろう。
リアシートへの積載にはシンプルにストレッチコードを使った。その際ちょっとだけ工夫が必要だった。グラブバーが太く、鍵状になったコードの先端が直接掛けられない。ほかの場所にも荷掛けフックはなく、とっかかりも少ない。そこで、グラブバーに細いロープを使って荷掛けフックをこしらえた。
白い養生テープは、こすれて塗装がはげてしまうのを防ぐために貼ったもの。透明の保護シートを貼れば、目立たず傷防止にもなるだろう。
バッグを固定するには、赤いロープの輪にコード先端のフック部分を通す。グラブバーの端へ向かって力がかかるようにコードを取り回せば、ずれることもない。
このように、シート下ラゲッジスペースとリアシートを活用し、キャンプ道具を一式積載できた。
あえてこの積載でのデメリットを挙げると、シート下ラゲッジスペースが開けられなくなってしまうということ。また、リアバッグもストレッチコードで上から押さえつけているので、中身を取り出すのが面倒。ストレッチコードを使わずに積めて、すぐに中身の出し入れができるバイク用のリアバッグを選ぶと良さそうだ。
この積載法でもシートを少しだけ開くことができるので、ヘルメットホルダーは使えた。ヘルメットホルダーは反対側にも付いている。
より積載性をアップさせたければ、オプションのリアキャリアやトップケースを装着するのが手堅そうだ。メーカーオプションとして、COOCASE(クーケース)のトップケースが用意されている。比較的リーズナブルで、ワンタッチで開けられるのが魅力。近年はGIVIやSHADと並び、日本でもユーザーが増えてきている。
AK550は左側のグローブボックスの中に電源ソケットが備わっている。シガーソケットタイプではなくUSBタイプなのが嬉しい。コード1本でスマホの充電が行なえるのだ。
6インチサイズのスマホならコードをつないだ状態で収納できる。スマホはいまや、最大のツーリングアイテムと言えるかもしれない。インターネットと電話が繋がり、マップアプリがあれば、小さなトラブルはたいがい対処できる。
電源ソケット、スマートキー、グリップヒーターなど電力を使う装備が満載だとバッテリーあがりが心配……。でもAK550には、メーターに電圧表示機能があるから安心だ。アイドリング状態では12.3Vと表示されるが、走り出すといつも14.1~14.2Vと表示されていた。不安に思ったときは、この表示をチェックしてリスクヘッジをはかろう。
こうしてずいぶんと快適にキャンプツーリングをすることができた。今回訪れたのは、千葉県館山市の『お台場海浜庭園オートキャンプ場』。三方が海に囲まれた開放的なサイトで景色が素晴らしい。また料金も、バイクだと1人1張1,500円と良心的。バイクの乗り入れができてこれほどロケーションが良いサイトは関東屈指だと思う。設備も充実している。詳しくは公式サイトをご確認いただきたい。
灯火類にはすべてLEDが採用されている。各所デザインが凝っていて、AK550が持つ強い存在感の秘密は灯火類の影響が多分にあると感じる。
ヘッドライトは2灯常時点灯式で、照射範囲が広く明るさも抜群。被視認性を高めるアイラインが4輪の高級車のようで品格を感じさせる。
テールランプもLEDを採用。中央にポジション&ブレーキランプ、フロント同様線形のライトが特徴的。初めて見たときは最近のボルボのSUV車みたい! と思った。
ハザードランプ(ウインカー)もオシャレだ。小さなLED電球がたくさん使われていてゴージャス。昼間でもくっきりと明るく光るので安心感があった。
欧州ではサイドリフレクターを装着する義務があるため、欧州市場をメインターゲットとしたAK550にもフロントフォーク付近に備わっている。これには日本でも装着を義務化すべきと訴え続けるジャーナリストも多い。バイクは横を向いたとき、被視認性がグンと落ちるのだ。とくにマットブラックカラーで夜闇に溶け込みやすい車体には必須装備と言えるかもしれない。
以上で、全4回に渡った長期インプレは終了。AK550と生活を共にする中でつくづく感じたのは、その誕生が1964年にまでさかのぼるキムコという歴史を持つスクーターブランドが、現時点でできるすべてを詰め込んだのだろう、ということだ。
最新かつ豪華な装備を満載し、デザインも細部までこだわり抜いたこの車両には、メーカーの威信がかかっている。そしてそれは、すでに海外で認められた。欧州での発売から遅れること約半年、日本では2017年12月に発売された。これまでオンリーワンだったヤマハ・TMAXのライバルとなるのか? 今後の販売状況を見るのが楽しみだ。
AK550は安価なバイクではない。けれど細部を見ていくごとに、乗り心地の良さを知るごとに、コストパフォーマンスはかなり高いと思った次第。街から旅へ、ソロでもタンデムでもキャンプでも「なんでも来い」と受け入れてくれる。これほど頼りがいのある相棒は、そうそういないだろう。
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