掲載日:2024年09月25日 プロが造るカスタム
取材協力/ZOOM
取材・写真・文/ガスグラフィックス
ビッグスクーターは、大柄なボディとは対照的にホイールは12~13インチと小径だった。このバランスの悪さをなんとかしようとユーザーやプロショップが躍起になり、フロント14インチを純正採用したヤマハ・グランドマジェスティやスズキ・スカイウェイブ(CJ44)用を流用する技が流行。しかし、駆動ユニットとエンジンなどが一体式となっているリアに関しては、サイズアップの限界値が低い。そこで、大径化ではなく幅広化にこだわったスタイルを模索。その結果が、4輪と同様に片側からボルトで固定するスズキ・スカイウェイブ(CJ43)用のエンジンの流用が着目されたのだった。ノーマルのままではボルトは3本固定=3穴だが、変換ハブを作ることで4穴化。これにより4輪用ホイールも装着可能という選択肢の幅が広がっただけではなく、9Jまでであればバイク用とは比較にならないほど幅広なタイヤも選べることに。これが、スカイウェイブ(CJ43)用エンジンへの交換というカスタムが流行した要因だ。そして、このCJ43用エンジンをスワップしたスタイルを“ハードコア”と呼んだことで、ライトカスタムとの差別化を図ったのだった。
今回紹介するヤマハ・マジェスティCは、2008年頃に製作された車両だ。手がけたのは広島県福山市にあるカスタムショップズーム。近年は、元々得意としていた空冷Z系などの旧車を中心に取り扱っている。ズームは流行の中盤期にスクーター業界に登場。しかも、2007年頃にはすでにこのようなハードコアな車両を綺麗にまとめ上げており、一躍有名プロショップとして名乗りを上げた実力を持つ。アルミ製品のワンオフ加工を得意としていたため、変換スペーサーやハブ、ホイールカラーやキャリパーサポートなども自由自在に対応。その結果、各パーツのサイズを限界まで追求した緻密なハードコアスタイルを何台も完成させたのだった。
このマジェスティCを久しぶりに眺めて実感したのは、前後ホイールサイズに合わせて美しくフレーム着地させたその完成度の高さだ。足回りは前後14インチで、どちらもタイヤのサイドウォールとショルダーも合わせた肉厚感が絶妙。しかも、シートはシングル用だがしっかりと乗車することを目的に製作。それに合わせてリア回りもタンデムバーカバーを併用することで、シートの存在感をいい意味で消している。長い、広い、低いといったサイズ感ありきの形ではなく、しっかりとバランスを整えたスタイル。この車両が2008年に熊本県で開催された「第1回KCCカスタムコンテスト」でグランプリを受賞。他にも同店製作車両が、当時の様々なカスタムコンテストで賞を次々と獲得していった理由が、ここにある。
フロントの14インチ装着は一般的な改造だったが、ズームはタイヤの扁平率にもこだわっていた。ダブルディスク化しつつ、自社製商品の300φビッグローターキットを装着。このフロント回りだけでも圧巻の作りこみ。
スカイウェイブ(CJ43)用エンジンに交換し、リアホイールを14インチに。ハヤシレーシングの弥生は、ビッグスクーターでは珍しいチョイスだった。スモークテールやブラックアウトしたマフラー、エンジン回りとメッキレスを徹底。
ハンドル回りも、メッキは一切使用せず徹底してブラックアウト化。セパレートハンドルとカラーメーターカバーはズームの人気商品だった。カラーメーターパネルは純正メーターパネルの上に貼るだけのお手軽アイテムで、オレンジ、レッド、イエロー、ブルーなど合計8色が用意されていた。
オリジナルのシートは座面にアルカンターラ、他にレザーを使った二部構成。FRPシートを使ったルックス優先ではなく、あくまでも乗車することを全体としたハードコアスタイル。これも当時多くのユーザーの指示されたポイントだった。
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