掲載日:2024年09月11日 プロが造るカスタム
取材協力/Kustom Garage INFINATE TEL 072-865-2079
取材・写真・文/ガスグラフィックス
ビッグスクーターのカスタムは4輪のカスタム文化にヒントを得て、進化、発展し続けてきた。その中でも、その文化に精通し、かつ高いセンスと技術力を持たないと表現できないジャンルが、ローライダースタイルだ。発祥は1940年代のアメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスで、チカーノと呼ばれるメキシコ系アメリカ人が始めたと言われている。基本的に、そのオーナーに関連する歴史や人物像、愛や尊敬を表現したアートワークや、芸術品のようなグラフィカルなデザインに重きを置いた外装と、ワイヤースポークのホイール。そして、ハイドロなどを活用して車体を低くしたり、アップダウンを制御するサスペンションシステムを組むことが前提。本来カリフォルニアでは、こういった車両は違法車両となるのだが、そういったアウトロー的な歴史的背景も含めて、日本でも人気となったジャンルのひとつだ。
このローライダースタイルを日本のビッグスクーター界で表現し続けているのが、大阪のINFINATE(インフィネイト)になる。店内に鎮座するシボレー・カプリスは、同店の主宰であるDJ-Kさんの愛車。カスタムビルダーという呼び名が相応しい彼の技術力とセンス。そして、ローライダーに関しての理解力が、このジェンマの完成度を高めていることは間違いない。
ベースとなったジェンマは、2008年7月に発売開始された。ビッグスクーター業界は、一時期の熱狂的なブームが沈静化し始めていたタイミング。爆発的大ヒットを飛ばしたヤマハ マジェスティCの牙城を崩すため、各社がマジェCの幻影を吹き払うように、新しい価値感を生み出そうと奮闘していた時代とも言える。フロントからリアまでの流線形デザインなど、既存車両にはない斬新なデザインで注目されたが、収納スペースの狭さなどがウィークポイントに。また、ブーム終焉の頃の登場だったことで、各社外品メーカーがカスタムパーツの開発販売に積極的に取り組まなかった事もあり、正統派、カスタム派のどちらからも敬遠され、結果的に2013に生産終了となった悲運の車両とも言える。
しかし、この純正車両のデザイン性の高さは、専門店にとっては好奇心が沸き立つ素材だった。それが、この車両のようなスタイルを生み出す要因になっている。外装の大きな変更点は、フロントフェイス。ヤマハYZF-R6のフロントを流用し、スポーティな印象が際立った。そしてペイントは、人物などの写実的なアートではなく、ゴールドとブラックをベースにしたメリハリある色合いをベースに、ピンストライプやオリジナルグラフィックを施し、重厚感ある雰囲気に仕上げた。足回りはローライダーには欠かせない前後ワイヤーホイール。見えない部分では、吸気系をインジェクションからキャブレター化。そして、INFINATEお得意の各部エングレービング(彫金)仕上げでブラッシュアップし、美しいジェンマが完成した。
社外品パーツが少ないため、カスタムを手軽に楽しみたいユーザーにはハードルが高い存在だが、アイデア次第ではオリジナリティ溢れる1台が完成するのも間違いない。不人気のため、比較的程度が良好で買い求めやすい価格帯の中古車も多数確認できる。人と違った何かを表現したいユーザーは、このジェンマで挑戦してみるのもアリなのではないだろうか。
小振りなフロントはヤマハ YZF-R6用を流用。顔面スワップは高さや前後の位置関係など、単純に装着するだけではなく繊細なバランス感が要求される。右ヘッドライトはカバーがされ、そこにエングレービングを施工。
ホイールは希少なTRU-RAY14インチを装着。幅はフロントが6J、リアは7J。フロントフォークのアウターチューブにもエングレービングが施されている。
ハンドル回りはスイッチ類をワンオフ化することで、シンプルな見た目に仕上げている。また、バー部分にもエングレービングを追加。隙の無い芸術品のような完成度だ。
フラットシートからリアシートへのデザインは、タンデムバーを取り外しナンバーを移植した以外はほぼ純正のまま。こうしたデザイン性の高さがジェンマ人気の理由。外装のグラフィックもピンストのラインの処理や他グラフィックの細かい仕上げなど、繊細な技術力が散りばめられている。
エキパイ、サイレンサーはワンオフ品。小振りなメガホン形状のサイレンサーエンドやそこに描かれたグラフィック。また、排気効率を考えて管長を稼ぐようにトグロ上に巻かれたエキパイなど、ルックスだけではなく性能もしっかりと追求している。
ローライダーと言えば、オーナーが所属するチームを表すプラークの存在が重要。外装とホイールだけではなく、プラークまで表現するそのこだわりがINFINATEの真髄だ。
フレーム加工によりホイールベースは延長されているが、フロントからリアにかけてのこの流れるようなデザインがジェンマの魅力。カスタムの素材としては、まだまだ表現の可能性を残してくれている車両なのだ。/p>
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